つながっている、ひろがってゆく。交流

交流トップページへ戻るボタン

記事検索アイコン
記事検索
CLOSE
このページをシェアする
  • ライン

No.
113
Vol.06 和紙が教えてくれたこと

2019.09.02
カンナこと、こんなこと。

2024年(令和6年)を目処に紙幣も一新される。一万円札には渋沢栄一、5千円札には津田梅子、千円札には北里柴三郎の肖像が描かれるという。日本の紙幣は世界に類を見ないほど、丈夫だし偽造しにくい紙幣だと言うが、その根底には紙の質がある。

明治12年に日本政府は、ドイツやアメリカに製造を依頼していた紙幣を国産で作るため、紙幣の原料として「三椏(みつまた)」を採用した。この和紙を作る元となる一つ、「三椏」の強靱さこそが日本の紙幣の真骨頂なのだ。

昔ながらの和紙の原料は、「楮(こうぞ)」「三椏」「雁皮(がんぴ)」と言われている。昔は単に「紙」と呼んでいたようだが、海外から、さまざまな木材の繊維から抽出した、いわゆるパルプを原料とした、単価の安い、使い勝手の良い、大量生産に適した紙が入ってきて、それら「洋紙」と区別するために「和紙」という名が定着したようだ。

しかし、この三椏、実は日本での生産が激減し、9割がネパールや中国からの輸入だと言う。楮もほとんどがタイ産、雁皮もフィリピン産だという。そういえば同じようなことを聞いたことがある。英語で「japan」と言われる「漆器」。その漆も、国内生産は2%程度だというのだ。つまり日本の紙である和紙の原料も、「japan」と呼ばれる「漆器」の原料も、そのほとんどを海外に依存しているのが、日本の偽らざる現実なのだ。

考え込む。日本としての誇りである「日本」のもの。しかし、その土台はもう「日本のものではない」のである。

私たちは「日本的なもの」を誇りに思い、胸を張るけれど、実際に使うわけではなく、それらを支えるために何かをするわけでもない。そしてそうしているうちに、誇りに思い、胸を張っていた「モノ」の土台は空洞になってしまった。

悲しい現実を知り、恥じ入りもしたが、同時に、少しばかり日本の底力を感じもした。

日本は極東にあり、資源に恵まれていない。それは弱点でもあったが、だからこそ、他者の影響を受けず、ものづくりに邁進できたし、「メイドインジャパン」に代表されるように、さまざまなものを加工して驚くような高品質なものを創り上げることに成功した。

電気も同じかもしれない、石油もガスもウランも満足に採取できず、僅かにあった国産の石炭はもう枯渇してしまった。でも海外から輸入し、高品質な発電所を作りこの暮らしを創り上げた。日本の紙幣が誇れるように、日本の発電所も世界に誇れるものにできるのである。

このページをシェアする
  • ライン
関連タグ
  • 神津カンナ

作家、フォーラム・エネルギーを考える代表。長年に渡る執筆活動の傍ら、国内外のエネルギー関連施設や現場を取材し、暮らしの中のエネルギーといった視点で講演活動などを行っている。著書に『水燃えて火〜山師と女優の電力革命〜』『冷蔵庫が壊れた日』ほか多数。

pagetop