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117
Vol.10 ああ、昆虫食!

2020.09.15
カンナこと、こんなこと。

姪はときどき、インターネット上のサイトに文章を書いているが、昆虫食のおしゃれなレストランを紹介するので、ちょっと文章を見て欲しいと言われた。私はベジタリアン(菜食主義)も、ヴィーガン(完全菜食主義)も否定するものではないが、自分はまあ今のままで良いか......と思っている。だから取り立てて自らが発信したり、そういう関連の記事を好んで見ることもないのだが、姪の文章なら仕方ない、と読んでみた。

コオロギの出汁で作ったビール、杏仁豆腐の味がするフェモラータオオモモブトハムシの一皿、蚕のさなぎとハーブのサラダ、ローストしたイナゴのイチゴソースがけ、タガメのかき氷、蚕の糞茶......いやー、読んでいるだけで目が疲れた。文章を添削するのであれば、何しろ食べていないのだから、写真も文章もきちんと見なければならない

確かに今は昆虫食の密かなブームらしい。牛や豚などと比べると、狭い土地で繁殖させられる、水や餌が少なくてすむ、温室効果ガスがほとんど発生しないなど、優位点はたくさんあるようだ。通販サイトや研究会、イベント、そして姪が紹介したようなレストランなど、環境問題への関心の高まりと共に、少し前とは違うムーブメントを展開していると言って良いのかもしれない。昆虫食は昔から日本でも「イナゴの佃煮」とか「ハチノコ」とか、貴重なタンパク源として食しているところもあったし、肉や魚を食べない、精進料理や「もどき料理」もあった。決してベジタリアンやヴィーガンは無縁ではない。

しかし今のこのようなムーブメントは、色々な要素を含みながら展開をしている。環境問題のみならず、食糧問題、医療問題、グルメ、そして政治問題など。読者の皆さんもニュースなどでご存じかと思うが、完全菜食主義、あるいは絶対菜食主義という「ヴィーガン」は、動物由来のもの、牛乳や卵、チーズはもとより、日本食でも鰹節や煮干しで出汁をとったものは動物由来なので、たとえ野菜のお味噌汁でもダメ。靴も動物の皮を使うので布製のものを履くとか、家畜の飼育業者を襲うとか、どんどん過激になる一派も存在する。

食事の戒律がある宗教、民族によっては環境(砂漠・海がない・岩場・あるいは暑い、寒いなど)や嗜好の問題。そして、主義主張。考えてみると地球上のみなが背負っているものは千差万別なのである。新型コロナウイルスに対する対応が国によって違うのは、政治家のありようだけではないのだろう。みなが足並みを揃えて同じように……というのは理想だが、それができないのがこの世界。多様性を認めてと言いながら、どこかで統一を願う。その矛盾を抱えながら私は生きているのだと昆虫食の文章が教えてくれた。

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  • 神津カンナ

作家、フォーラム・エネルギーを考える代表。長年に渡る執筆活動の傍ら、国内外のエネルギー関連施設や現場を取材し、暮らしの中のエネルギーといった視点で講演活動などを行っている。著書に『水燃えて火〜山師と女優の電力革命〜』『冷蔵庫が壊れた日』ほか多数。

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