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124
多面体でつかむ感覚

2022.06.01
カンナこと、こんなこと。

かつて使い捨てカメラが隆盛を誇った時がある。その時、あるフィルム会社の方に、こんなことを言われたことを覚えている。「使い捨てカメラとは言わないで下さいよ。せいぜいレンズ付きフィルムかな?だってこの商品は回収率がほぼ100%なんですよ。みんな撮り切ると、こぞってカメラ屋さんに現像のため持ってくる。絶対に捨てたりしないわけです。だから使い捨てじゃない。立派なリサイクル商品なんです」なるほどと思った。当たり前だけれど、見る角度によってそのものの姿はずいぶん違う。

同じようなことを先日、乳業協会の理事会で感じた。牛乳の紙パックの回収は日本ではなかなか進まないという。確かに牛乳パックは手開きできちんと開き、洗って干さないと臭いや細菌の温床となり、再生にはなかなか向かない。このやり方は単なる分別以上に手間がかかり回収場所も限定されるので、どうしても回収が頭打ちなのだという。ところが、この牛乳の紙パック。日本では前述のように回収は進まないのだが、欧州の中には回収率が80~90%のところもあるという。それは大きく考え方が日本と違うからだそうだ。日本は個別回収が進み、アルミ、スチール、ペット、紙パック、牛乳パックなど、回収は細分化されてきた。回収方法も使用者にその責任が委ねられる。そのために再生物の質も向上しているそうだ。けれども欧州はとにかく回収すること、つまりリサイクルが目的なので、缶もパックも全て一緒くたに回収し、それを回収したセンターで細かく分け、業者に渡す。だから回収が容易らしい。もちろん欧州もそれぞれ国情が違い法律も異なるので、足並みが揃っているわけではない。ただ比較的、欧州の場合、回収率が高いのは、質を第一義にしていないからだそうだ。しかも、その回収率が高い欧州の国の代表がスペインとデンマークだというので、早速、スペインのマドリッドに住む弟に問い合わせてみた。

するとこんな答えがメールで返ってきた。「確かにリサイクルゴミ箱は火水木曜日に、リサイクルのものならばなんでも出せるから、楽なので皆んなちゃんと守ってる。スペイン人は面倒なことはしないからね」

なるほど。一人一人の意識を高くするためにも、再生物の質を向上させるためにも「日本式」が良いのだろう。しかし実際には、実利的には「欧州式」なのかもしれない。

日本的なやり方がいけないわけではない。欧州のやり方がいけないわけではない。ただ、数字だけを見て一喜一憂しても、どうも全貌は見えてこない。「レンズ付きカメラ」を見た時と同じようにと、ちょっと異なる観点から見てみることは必要だ。

そう考えてみると、私たちは山のように検証が必要なことに囲まれている。再エネ賦課金のことも、最終処分のことも、原子力のありようも、地球温暖化問題も、そしてウクライナの問題も、矯めつ眇めつよーく見ないと、異なる側面があるかもしれない。

やれやれ疲れるけれど、自分の見方だけでなく、ちょっと人や他国の意見や見方や考え方を覗いてみる「多面体でつかむ」感覚は、私たちが失ったものの1つかもしれない。そんな時間を取り戻さなくちゃ。

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  • 神津カンナ

作家、フォーラム・エネルギーを考える代表。長年に渡る執筆活動の傍ら、国内外のエネルギー関連施設や現場を取材し、暮らしの中のエネルギーといった視点で講演活動などを行っている。著書に『水燃えて火〜山師と女優の電力革命〜』『冷蔵庫が壊れた日』ほか多数。

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