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124川喜田半泥子に魅了される空間
2022.08.01




「東の魯山人、西の半泥子」「昭和の光悦」などと称され、三重県津市の自邸に窯を開いて近代陶芸界に名を残した、陶芸家・文化人・実業家の川喜田半泥子。江戸時代から木綿太物を扱っていた伊勢商人屈指の豪商・川喜田家の16代目として生まれ、日本橋近くで営んでいた木綿問屋で伊勢木綿を商ったほか、百五銀行頭取はじめ数々の企業の要職を務めた。忙しい日々の中でも、書画、茶の湯、写真、俳句など多彩な趣味を持ち、1963年(昭和38年)に永眠するまで、独自の価値観を大切に貫いた。そんな半泥子の作品や川喜田家の歴代当主が蒐集してきたコレクションを中心に展示を行う石水博物館。美しさとウィットに溢れた半泥子の作品や半泥子が自ら設計した茶席を原寸大に復元した空間などを学芸員・龍泉寺由佳さんの案内で鑑賞したあと、川喜田家に残る伊勢木綿の貴重な見本帳も特別に見せていただいた。館内を巡ったあとはすっかり半泥子に魅了され、半泥子が描いた愛らしい虎のポストカードを求めて帰り、寅年の今年、部屋の中に飾っている。