中部和菓子図鑑

高島屋の和菓子バイヤーが中部地域注目の和菓子をご紹介

伊奈波神社の参道で
粛々と暖簾を守る
和菓子司 松花堂(しょうかどう)
・岐阜県岐阜市

November 27. 2024(Wed.)

お菓子から気軽に触れる
お茶の世界

松花堂の創業は、1919年。初代は、お茶道具を取り扱う商売に携わっており、茶人との親交を深め、茶席にも足しげく通っていたそうです。そうして自身も茶の湯の魅力にとりつかれていきます。
時は大正の終わり。日本の財界人がこぞって茶の湯に夢中になったころで、名古屋や岐阜には、三井家の祖である益田鈍翁(どんのう)が滞在し、初代もその恩恵を受けていました。偶然にも岐阜市内の和菓子屋が縁戚だったということもあり、初代は茶席のお菓子をつくりたいと熱望して、そのお店に修業に入ります。
そうして菓子づくりの腕を磨いた後、伊奈波神社の参道という場所に、松花堂を開店させました。こうした初代の茶の湯への思いを引継ぎ、現在は2代目と3代目が、茶席の上生菓子をつくり続けているのです。

店内には、お菓子と抹茶を楽しめるスペースがあり、椅子席と茶室の両方を完備。夏にはかき氷が大人気なのだとか。
茶室の床の間には、季節ごとの掛け軸と茶花が飾られており、お茶の心得がなくても、気軽に茶の湯の空間にふれることができます。

3代目を継ぐ松村百恵さん。
常時6〜7種類の上生菓子が並ぶ。およそ
2週間ごとに季節の菓子が新しく登場する。
季節ごとにしつらえられた
茶室は、ぜひ拝見したい。
のれんにも染められているロゴマークは、
“松”の花を上から描いた意匠。

【店舗おすすめ】
「錦秋(きんしゅう)」

なんと美しい“きんとん”でしょう!
極細の馬の毛でつくられた濾(こ)し器で、丁寧に濾された紅葉色のきんとん生地が、ふんわりとやさしくあんを包み込んでいます。
黄色と赤のグラデーションが、深まる秋の様子を見事に表現。中のあんは、白小豆の粒あん、またはこしあん(その時々によって変わります)。

ひと口かみしめれば、芋を練ってつくられたきんとん生地と、中のあんとが同じような食感となって溶け合い、美味しさをつくり上げていることに驚くことでしょう。

思わず見惚れてしまう、
繊細なきんとんの表情。
人気のある上生菓子は、昼過ぎに完売することも。
お気に入りがあれば電話予約がおすすめ。

店舗情報

和菓子司 松花堂 (しょうかどう)
岐阜市内でも有数の社格である伊奈波神社の参道沿いに店舗を構える。昔ながらの伝統的な商家らしい木造建築で、お茶席用や来客用のお菓子を求める人が次々と来店する様子は、創業当時から変わらない風景である。

MAP

〒500-8084岐阜県岐阜市松屋町1-5
電話番号:058-262-5741
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