気ままにカフェめぐり

年間300件以上のお店をめぐる編集者・かにぃさんが中部地域のカフェをご紹介

料理も器も空間も
陶芸家の思いが詰まった古民家カフェ
陶仙房 須栗平(長野県茅野市)

January 28. 2025(Tue.)

自家製の野菜と自作の器で提供する
素朴で豊かで、贅沢なランチ

蓼科(たてしな)の森と八ヶ岳に囲まれた自然豊かな長野県茅野市の集落。古い民家が建ち並ぶ中に、小さな看板が見えてくる。看板に誘われるように木道を進むと、趣のある古民家にたどり着く。ここが、陶芸家の店主が営むカフェ「陶仙房」だ。
元は東京で会社員として働いていたが、一転して陶芸家の道を選んだという店主。故郷の長野に戻り、山の中で作陶をはじめた。しばらくして、来訪者がチャレンジできる「陶芸体験」も開始したが、思ったよりも盛況となり、「もう少しゆっくりと暮らしたい」と考えるようになったという。
そして店主は「陶芸やカフェをしながら、日々を大切にした生活を送ろう」と、あらためて拠点づくりを始めた。

解体寸前だった築90年の古民家を譲り受け、2年かけて建物の基盤部分からすべて改装。
「山や緑を望みながらゆっくりと過ごせるよう、窓の位置も考えました」
イスやテーブル、棚なども、近隣の解体予定の家にあったものをもらってリメイク。柱も梁も、家具もすべて味わいがあり、手を施したものならではの温もりがあって居心地がいい。

ここで楽しめるのは、自家製の野菜をたっぷりと使ったランチだ。今回は、里山の四季のおにぎりプレートを注文。この日、メインのおにぎりは自家製の味噌をのせた赤米と、りんごを細切りにして混ぜた白米の2種類。りんごと米の意外な組み合わせに驚くが、優しい甘みとほんのりと塩をきかせたご飯との相性は意外なほどぴったりだ。おかずは根菜のグリルや、地元の大豆を使ってつくられるゆし豆腐、自家製の野沢菜漬けなどがワンプレートに。いずれもやさしい味付けで、素材は滋味深いものばかりだ。
料理を彩る器は、店主と地域の作家たちの自信作。「自分たちで畑を耕し、野菜を育て、その野菜を調理して、自分が焼いた器にのせてお客さまに楽しんでもらう。手間暇をかけた丁寧な暮らしの楽しさ、すばらしさをお客さまへ伝えたい」という店主の言葉にも納得できる。
食後には、これも店主の畑で育ったというほおずきを使ったタルトケーキとコーヒーをセレクト。想像以上に濃厚で甘酸っぱいほおずきは、香ばしくほろ苦い自家焙煎のコーヒーとよく合う。

窓の外に広がるのどかな景色を眺めながら、あるいは本を片手に、心を込めてつくられた一品とともに過ごす贅沢。ものを消費するのではなく、つくり出すことの豊かさを感じさせてくれる、そんなカフェだ。

この地域で活動する若い作家たちの作品が並ぶ。
築90年の古民家を店主自身が改装。ゆったりと
くつろげる空間に。2階には1人専用の席も。
冬季は氷点下15度になることも。そんな寒い日は
薪ストーブが店内全体を暖かく包み込む。
夏は窓を開けているだけでも涼しいという。
里山の四季のおにぎりプレートは、自家製の
野菜や伝統的な保存食、地元産の米や
フルーツを使ったメニューが一皿に。季節に
よって内容が変わり、いつ訪問しても飽きない。
地元のフルーツを使った手づくりケーキも絶品。
コーヒーも自家焙煎。

店舗情報

陶仙房 須栗平(とうせんぼう すぐりだいら)
八ヶ岳山麓に佇む静かな雰囲気のカフェ。ギャラリーや骨董品販売、古本の販売など幅広く運営する。季節や時期により休みの日が変わるのでWEBサイトを要確認。お子さま(小学生まで)入店不可。

Instagram
https://www.instagram.com/tosenbo_suguridaira/

MAP

〒391-0211 長野県茅野市湖東3208
電話番号:0266-75-5522
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