優しい心地の長屋で楽しむ
自家焙煎コーヒーと甘いもの
aL coffee&bake
(長野県松本市)
January 18. 2024(Thu.)
地元民からも観光客からも
愛されはじめた小さな新店へ
好きな街に、またひとつ愛おしいカフェが増えて嬉しい。松本駅から15分ほど散歩を楽しみ到着する、ひっそりとした佇まいの三軒長屋。その真ん中のとても小さな一軒で、若いご夫婦が自家焙煎のコーヒーとスイーツでもてなすカフェを開いたのは2023年11月1日のこと。
美しい深緑色のタイルと歪んだ瓦屋根が印象的な外観からすでに好みで、胸を高鳴らせながら古びた木の扉をゆっくりと押すと、すぐさまコーヒーの豊かな香りに包まれた。12席だけの狭小空間で一際目を引くのは、外とは異なる青緑色のタイルが目地なく貼られたカウンター。その奥から店主夫妻が出てきて、柔和な笑顔で迎えてくれた。
1年前まで松本市役所に勤務していた旦那さん。コーヒー好きが高じて、常連だった同市内の「koloro(コローロ)coffee」で焙煎や抽出を学び、さまざまな飲食店で働いてきた奥さんとともに夢をかたちにした。元上司が見つけてくれたというこの物件は、かつて米穀店だったらしく、なんと大正時代築。「昨日も2階を掃除していたら、大正の1銭硬貨が出てきて驚いたんですよ」と笑うふたり。ずっと空き家でボロボロだった空間を、地元の建築士と自分たちで改装したそうで、土と藁を混ぜた漆喰の壁や古材で手作りした家具などが温かな空気を醸し出していた。
看板スイーツのティラミスと、おすすめのペアリングのコーヒー「グアテマラ ニューオリエンテ」を注文して、柔らかい光が注ぐ窓際席へ。運ばれてきたティラミスは思わずにやけるボリュームで、自家焙煎のエスプレッソのビター感がたまらない一品。奥さんがイタリアンのシェフである父親から受け継いだレシピだと言い、深煎りコーヒーとも相性ばっちり。ハーブを与えられた鶏の卵「信州ノニタマゴ」の旨味が生きたプリンも、メイヤーレモンの酸味が効いたレモンケーキも、欲張って正解のおいしさだった。
店名の「aL」は、イタリア語で“樹”を意味する「albero」から。この地域に根差し、皆の拠りどころとなるような、長く愛される場所をつくりたいと名づけたそう。「例えばここの前の通学路を歩く小学生が成長したとき、例えば上京した大学生が戻ってきたとき、訪ねてくれたら嬉しいですね」と穏やかに話してくれた。味や居心地の魅力はもちろん、店主夫妻の優しい人柄にも心から癒やされて、また会いに行きたいなぁと思い出す。軽食の提供や通販など、ふたりの夢の続きが叶うのも楽しみにしている。
店舗情報
- aL coffee&bake
(アル コーヒーアンドベイク) - 約12坪の一室で、自家焙煎のスペシャルティコーヒーと
好相性なスイーツを堪能できる。器は同市在住の陶芸家、
石曽根沙苗さんによるもの。朝8時からの営業も嬉しい。