
エッセイスト桒原さやかさんが松本で感じる四季や自然とともに、家族でつくる日々をご紹介
一週間の家族旅行
思い通りにいかないこと
ばかりだけれど
October 14. 2025(Tue.)
岐阜県出身のライター・エッセイストの桒原(くわばら)さやかさん。「イケア・ジャパン」やWEBメディア&ショップを経営する「北欧、暮らしの道具店」に勤務した後、ノルウェーに移住し約1年半を過ごしました。
現在は、長野県松本市で、スウェーデン出身のご主人と2人のお子さまとともに暮らす桒原さんに、松本での暮らしや家族と過ごす日常について綴っていただきます。

旅先でもマイペースな子どもたち
この夏、おおよそ一週間の家族旅行に行ってきました。松本を出発して、新潟にはじまり、石川から福井へと南下していき、最終目的地はわたしの両親が住む岐阜の実家へ。
娘は海で遊びたくて、息子は恐竜博物館に行きたい。わたしは海の幸が食べたいし、夫はというと、彦根城が見たい。そして、おじいちゃんとおばあちゃんにもゆっくり会いたい。
このみんなの願いをかなえるプランが、ぐるっと海沿いをまわる旅だったというわけです。旅のことひとつ決めるにも、4人それぞれの顔が浮かびます。
子どもたちは、どこに行ってもマイペース。せっかくの旅だから、特別なことがしたいと思うのは、どうやら親だけなのかもしれません。

旅先でもいちばんの楽しみは、やっぱり公園や遊び場。趣のある喫茶店や、こまごま可愛い雑貨屋さんに後ろ髪をひかれつつも、各地の公園で子どもたちと走り回ってきました。
ちょっと休もうと思ったら、急にトイレ!となり、必死に探しまわったことも一度や二度じゃありません。歩くの疲れた〜となって、5分の場所が、20分くらいかかることもしばしば。もぉー!と、何度声を出しそうになったことでしょうか…。


友人から「旅先では夫と交代で、一人時間をもらうようにしている」と聞いて、試したこともあります。
でも、ここだけにしかない景色を目の前にすると、あぁ、夫にも子どもたちにもこの景色を見せたかったなぁと思うのです。また、おいしいご飯を食べたときにも、やっぱりみんなで食べたかったなと思ってしまう。もっとスマートに、うまく旅を楽しめたらと思うものの、なかなか思うようにはいきませんね。
わたしが小学生のころ、両親と姉の4人で北海道に行ったことがあります。はじめての遠出で、はじめての北海道。意気込んでいる気持ちとは裏腹に、いざ到着してみると、台風直撃。ほとんどの時間をホテルで過ごすことになりました。
姉とふたりで、ふてくされてホテルで宿題をしたこと。
強風にあおられたカモメが、必死に前に進もうとするのを、レンタカーの窓から眺めたこと。
母の好きな洋楽のテープが永遠と流れて、うんざりしたこと。
いつも実家に集まったときに話すのは、この旅のことばかり。その景色が今でも目に浮かぶほど、細かなことまで覚えています。それもこれも、いつもの日常ではなく、旅先だったからなんじゃないかと思うのです。


子どもたちが大人になったときに、覚えているのはどんな家族旅行なんでしょうか。
きっと特別なことじゃなくて、旅先で起きたささやかで小さな、日常のような出来事のような気がしています。