桒原さやか 信州・松本と家族の時間

エッセイスト桒原さやかさんが松本で感じる四季や自然とともに、家族でつくる日々をご紹介

子育ての「わからない」は、
そのままでいいのかも。

June 11. 2024(Tue.)

岐阜県出身のライター・エッセイストの桒原(くわばら)さやかさん。「イケア・ジャパン」やWEBメディア&ショップを経営する「北欧、暮らしの道具店」に勤務した後、ノルウェーに移住し約1年半を過ごしました。
現在は、長野県松本市で、スウェーデン出身のご主人と2人のお子さまとともに暮らす桒原さんに、松本での暮らしや家族と過ごす日常について綴っていただきます。

シロツメクサの指輪をつくってお遊び。

泣いている理由

ある日を境に、5歳の娘が幼稚園に行きたがらなくなりました。園が近づくにつれて顔が曇りはじめ、門に到着したとたん、シクシクではなく、全身全力のわーん! 叫ぶような泣き声が園内に響きわたり、お友達も心配そうにこちらを見ています。

「おかあさん、大丈夫ですよ、もう行ってください」
先生に言われて、娘の声を背中で受け止めながら、逃げるように去る私。はぁ、胸が痛い……。ご機嫌に通ってくれるって、どれだけありがたいことなんだろうか。

子どもたちとよく来る、女鳥羽川にて。

泣いている理由が知りたくて娘に聞いてみると、
「だって、ママと離れたくないもん」
「絵を描きたかったのに、ダメだって」
「いっしょに遊ばないって友達に言われた」

どれも本当なのかもしれないけれど、毎回答えがちがうから、これだという原因がわからないのです。
困り果てて友人に相談してみるものの、
「うちの子にもあったなぁ。
いつの間にかケロッと通い始めるから大丈夫だよ。原因がわからないまま、次の新しい問題が起こったりしてね。その繰り返し」という具合。

なんとか解決したかった私は、友人の答えにちょっとガッカリしたりして。こうして、何もしてあげられないまま、わんわん泣く娘といっしょの登園がしばらく続いたのでした。

全力で遊ぶ子どもたち。

そこから1ヶ月くらい経った頃でしょうか。泣かずに行ける日がぽつぽつ出てきて、ある日を境にピタリと泣かなくなったのです。今ではすっかりご機嫌な娘に戻っています。

あの大泣きはなんだったんでしょうか。
私が見ているかぎり、とくべつ何かが変わったようにも見えない。もちろん、娘がご機嫌ならそれでいいのだけれど、小さなモヤモヤが残ります。それに、まだ5歳と小さい娘のことが、わからないというのもさみしい。

娘の機嫌が悪いときは、無理に理由を探ろうとせずに、 一緒に外を散歩したり、料理をしたりしている。

娘の機嫌が悪いときは、無理に理由を探ろうとせずに、 一緒に外を散歩したり、料理をしたりしている。

娘の機嫌が悪いときは、無理に理由を探ろうとせずに、 一緒に外を散歩したり、料理をしたりしている。

娘の機嫌が悪いときは、無理に理由を探ろうとせずに、 一緒に外を散歩したり、料理をしたりしている。

でもよく考えてみたら、赤ちゃんのときからそうだったのかもしれない。

夜中に泣いている娘を前に、おむつなのか? お腹がすいているのか? そのほかに、何かイヤなことがあるのか? わからなくて、ただオロオロすることしかできなかったのでした。

「愛の反対は無関心」という言葉があるけれど、無関心の反対は関心だから、「見ているよ」「知りたいよ」ができていたらそれでいいし、そこで完結してもいいのかもしれない。子育てはわからないことだらけだけれど、友人の言う通り、それで大丈夫なのかもしれない。

これからもたくさん「わからない」がやってきて、その先に「わかった」となることもあるし、「わからないまま」のこともたくさんあるんだろうなぁ。
あぁ、そうか、このモヤモヤと付き合っていくことが見守るということなのか。そんなことにも、最近ようやく気づきはじめたところなのです。

上部へ戻る