桒原さやか 信州・松本と家族の時間

エッセイスト桒原さやかさんが松本で感じる四季や自然とともに、家族でつくる日々をご紹介

小学校生活のはじまり。
子どもも、親も、新入生。

June 10. 2025(Tue.)

岐阜県出身のライター・エッセイストの桒原(くわばら)さやかさん。「イケア・ジャパン」やWEBメディア&ショップを経営する「北欧、暮らしの道具店」に勤務した後、ノルウェーに移住し約1年半を過ごしました。
現在は、長野県松本市で、スウェーデン出身のご主人と2人のお子さまとともに暮らす桒原さんに、松本での暮らしや家族と過ごす日常について綴っていただきます。

春からの大きな変化

いつかこの日が来るなぁと思っていたのですが、ついにこの春、娘が小学生になりました。

通っている学校は家から子どもの足で、1時間近くかかるところにあります。
朝は目覚まし時計が鳴ると同時に飛び起きて、ごはんを食べて、身支度をして、なんとか子どもを送り出す。そんなドタバタな朝を過ごしています。

新しく出会うお友だちも、小学校の給食も、椅子に座って勉強することも。
娘にとっては全部が全部、初めてだらけの毎日。
いつもより早くベッドに向かう娘の姿に、日々たくさんのことを吸収しているんだなぁと感じています。

まだまだランドセルが重いようで、
家に帰るころにはいつもクタクタに。

小学校に入る前、これだけは大事にしたいと思っていたことがあります。
ちょっと大げさに聞こえるかもしれませんが、それは親も一からのスタートだと忘れないこと。
幼稚園でのちょっぴり苦い経験から学んだことです。

園は子どもの場所。今までのわたしは、そんな風にどこかで思っていたんだと思います。
同じ園に子どもが通う保護者のみなさんとは、その場で会ったら挨拶はするものの、忙しさにかこつけて、自分から話しかけようとすることはほとんどなかったかもしれません。振り返ってみると、思い出すのは、いつも一歩後ろに引いて立っている自分の姿でした。

気がついたころには、いつの間にかまわりにポツポツと小さな輪ができているように見えました。

そういえば、新しい環境に馴染むのに、時間がかかるタイプだったなぁ。
久しぶりに自分の弱いところを思い出し、ちょっと落ち込んだりもして。
でも、無理やり輪に入ろうとするのもなんか違うような気がして、このままでいいよね……と思いながら過ごしていました。

子ども部屋にそろそろ机が必要かな?と探し中です

この状況に小さな変化が訪れたのは、娘が年中さんになるころでしょうか。
園の保護者会がきっかけでした。5〜6人ほどの小さなグループになって、子どもの状況や、自分のことなど、親同士で雑談することになったのです。

「いつも息子は楽しそうに通っているのですが、園での出来事をあまり家で話してくれないんです。みなさんはどうですか?」

「うちは姉妹なんですけど、どちらかを褒めると、どちらかがスネちゃって。ふたり同時に褒めてあげるってむずかしいなぁと思って」

「うちの子は、ごはんを食べるのにものすごく時間がかかるんです。椅子に座るまでも時間がかかるし、あそび食べしちゃったりして」

うんうんと深くうなずいたり、わかりますー!と思わずぽろっと声がでたり。一度話しはじめたら、止まりません。夢中になっていたら、あっという間に雑談もおわりの時間に。

ランドセルは娘がひとめぼれして、
おじいちゃんに買ってもらったもの。

「何時間でも話せちゃいそうですね」と、お隣に座っていたママ。まわりを見てみると、みんなスッキリしたいい顔をしています。そういえば、ちょっと近寄りがたく感じていたあのママも、今日はすごく楽しそうだったな。

あぁ、そうか……、話したかったのは、わたしだけじゃなかったのかもしれない。

そんなことに気がついたら、くよくよしていた自分がなんだか可笑しくなってきました。お互いに年齢も環境もちがうけれど、「同じ年の子を持つ親」という意味では同級生みたいな、そんな感覚に近いのかもしれません。

帰宅後は宿題をしてから、
おやつを食べるのがお決まりです。

あの日以来、園での生活が少しずつ変わってきたように思います。そこから、年中さん、年長さんとあっという間に過ぎていき、最後はお別れするのがさみしくてさみしくて。
こんな気持ちで卒園できたことは、娘にとっても私にとっても、大収穫だったなと思っています。

宿題はいつもダイニングかキッチンで。

春からはじまった、娘の小学校生活。
後ろから背中を見守りつつも、気持ちはちょっとだけ前に。

あたらしい出会いに、親のわたしもいっしょに楽しむ気持ちでいようと思います。

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