
エッセイスト桒原さやかさんが松本で感じる四季や自然とともに、家族でつくる日々をご紹介
冬の手仕事時間は、
北欧から教わった
自分との付き合い方
December 18. 2025(Thu.)
岐阜県出身のライター・エッセイストの桒原(くわばら)さやかさん。「イケア・ジャパン」やWEBメディア&ショップを経営する「北欧、暮らしの道具店」に勤務した後、ノルウェーに移住し約1年半を過ごしました。
現在は、長野県松本市で、スウェーデン出身のご主人と2人のお子さまとともに暮らす桒原さんに、松本での暮らしや家族と過ごす日常について綴っていただきます。


はじまりはノルウェーの冬
北欧に住んでから身近になったことのひとつが「つくること」です。
編み物、手芸、刺繍、ちょっとした家具や、家のDIYも。とりあえず、自分でつくってみる。そんな考えが彼らの生活には根付いているように感じます。
一年の中でいちばん手づくり熱が上がるのは、家で過ごす時間が長くなる冬の季節。
寒くて暗い時期は、肩もすぼまり、気持ちまでぎゅっと縮こまります。冬が長い北欧では、手を動かしながら没頭できる時間が切実に必要で、それに救われていることを知りました。


ノルウェーの冬に編み物をはじめたことをきっかけに、つくることが小さくも続いています。その習慣に子どもたちも、いつの間にか加わりました。
上手につくりたい。きれいに仕上げたい。
そんなふうに思って、ついつい気負ってしまうのですが、子どもたちは違うんですね。
楽しかったら、オッケー!
それくらい、自由なんです。つくるのに理由なんてありません。ただただ楽しんでいる。これがいいなぁと思います。
最近では見よう見まねで針仕事もするようになりました。フェルトでキーホルダーをつくったり、小さな巾着をちくちく縫ってみたり。自分がつくったものが、ちゃんと使える。そんな面白さを発見したようです。


わたしはというと、クッションカバーやカーテン。あとは、子どもたちからリクエストをもらって、ぬいぐるみや学校で使う給食袋やナフキンなどもつくります。
はじめるタイミングは2通りあって、ひとつはシンプルにつくりたいものがあるとき。そしてもうひとつは、ちょっと気持ちが落ち込んでいるとき。
これは北欧に住んでから加わった、自分との付き合い方のひとつです。
心が曇っていても、無心になってひたすら手を動かしているうちに、スイッチが切り替わるみたいに、まわりが静かになる感覚があります。
ただただ目の前にあるものだけに没頭するあの感じ。


それはいっときのことかもしれないけれど、この時間があるかないかはけっこう違うのです。
そして、夢中になって手を動かして出来上がったものは、ちょっと不格好でも、なんだか愛着が湧いて、可愛く見えます。それが子どもたちといっしょにつくったものなら、なおさら。


ちなみに北欧の人たちは手を動かす趣味が1つ、外で体を動かす趣味が1つ。全部で2つ以上の趣味を持っています。冬の時期もこの両方を楽しみ、雪が降る日だっておかまいなしに、颯爽と外に出かけて行くのです。
わが家の場合は手芸と、あとは、とにかく歩くことかな。寒い時期こそ、せっせとこの2つに励んでいます。









