養蜂から食品・医薬品まで
未来の「健康」をつくる
アピ株式会社(岐阜県岐阜市)
April 01. 2025(Tue.)
未来へ繋がる新しい取り組みをおこなっている企業や団体を訪ねるこのコーナー。
2018年と2020年の2回ご登場いただいた、岐阜県岐阜市に本社を置くアピ株式会社。蜂産品を含む健康補助食品や医薬品の製造をおこなっている企業で、2018年当時は養蜂部ミツバチ課(現在は、蜂産品特販部ミツバチ課)の仕事を見学するため、各務原市にある川島養蜂場に伺いました。
同社の事業や取材時以降に起こった新たな出来事などをご紹介します。


蜂とともに100年!
世の「健康」に寄与する企業
1907年に創業、100年以上の歴史を誇るアピ株式会社。始まりは、養蜂器具の製造・販売でした。その後、花の開花時期に合わせてミツバチを移動して採蜜をする近代養蜂を立ち上げ、国内の需要に応じて海外からハチミツやローヤルゼリーを輸入し販売することで大きく成長しました。また、養蜂事業では、ミツバチを仕入れて園芸農家へ供給するポリネーション事業を開始します。
農家が作物を栽培する際に欠かせないのが、ミツバチによる授粉作業「ポリネーション」です。私たちが野菜や果物を食べられるのは、ミツバチが働いてくれているから。


「らくらく交配シリーズ」。
きっと身近にあるはず。
アピ製造の健康補助食品
ハチミツやローヤルゼリー、プロポリスといった「蜂産品」をはじめ、健康飲料やお茶、ビタミン、カルシウムといった健康補助食品の製造がアピの主要事業です。1994年に本格参入し、そのほとんどは他社からのオーダーに応えてつくられるOEM商品です。
また1996年には、医薬品事業を開始。2005年には医薬品製造工場も稼働をはじめ、原料の調達から試験までをトータルでおこなえるようになりました。


さまざまな健康補助食品を手掛ける。
ミツバチの代役、
「ビーフライ」とは?
2020年に再取材をおこなった際に話題に出たのが、「ビーフライ」について。世界的にミツバチの減少が問題になっているといわれるなか、ミツバチの代役としてハエで授粉可能との情報を掴み、ミツバチとの併用という利用方法を確立しました。ハエのイメージを払拭するため「ビーフライ」と命名し、農家に提供しています。
きっかけは、日本農業新聞に「ヒロズキンバエ」の紹介記事を見つけたところから。「すぐにメーカーに問い合わせ、アピでの取り扱いが決まりました。新聞やテレビなどでも取り上げられ、利用する農家も増えてきています」と、蜂産品特販部の今井弘一さんに教えていただきました。
同社のミツバチとの関わりは100年以上ですが、「ビーフライ」の取り扱いは、まだ開始して8年目(2025年4月時点)。寒さに強く、雨天・曇天や冬の低温から夏の高温環境でも活動し、刺される心配もないので扱いやすいのが特長です。




ヒロズキンバエの安定生産は
医療界への貢献にもつながる
ヒロズキンバエは、もともと医療分野で「マゴットセラピー(※)」という治療法に医療で利用されているハエであり、非常にクリーンな環境で生産されています。そのため、不快なにおいや病気の媒介といった心配はないそう。
農業用として普及すれば「マゴットセラピー」用のヒロズキンバエの安定供給にもつながります。
近年は、衛生的なハエであるというイメージも定着し、広く浸透してきているヒロズキンバエ。とはいえ、まだまだミツバチに比べると農業での利用数はわずか。今後はさらなる利用促進、地位向上に尽力していくそうです。
※マゴットセラピー:医療用の無菌性ウジ虫(マゴット)によって壊死・腐敗した組織を除去する治療法。


経験と技術を注ぎ込み
未来の「健康」をつくる
「コロナ禍を経て、ますます『健康』に貢献できる企業へ、という自社の役割を認識しました」と今井さん。
近年では、独自の加水分解技術を利用した「PBF(プラントベースフード)」の開発・製造でも実績を重ねており、グラノーラなどにも使われるオーツ麦の粉末原料「EX-OAT」と、その原料を使ったオーツミルク「OAT糖化液」の生産をおこなっています。
アピの添加物・化合物を一切使用せず、加水分解(※)する独自の技術は、SDGsの観点からも注目されています。
※水溶液中の溶質が水分子と反応して起こす分解反応のこと
食・健康の分野で、時代のニーズとまさにマッチするサービスを届けているアピ株式会社。100年企業であると同時に、「『未来の健康を創造する企業』を目指し社会貢献していきたい」という今井さんの言葉通り、これからの100年にもきっと力を尽くされるはずです。




- アピ株式会社
- 1907年、明治時代に創業。養蜂器具の製造・販売から始まり、現在も各種養蜂器具を取り扱うほか、受粉用ミツバチの卸業、健康補助食品の受託製造、オリジナル商品の製造、医薬品の開発や製造をおこなっている。本社は岐阜県岐阜市。
- 岐阜県岐阜市加納桜田町1-1
- 058-271-3838