東海地方最大級の鍾乳洞へ
神秘の地底世界を探検
竜ヶ岩洞
February 06. 2024(Tue.)
大自然が織りなす景色を目の当たりにすると、こんな世界がまだあったのかという驚きと感動を覚える。
今回訪れたのは、静岡県浜松市にある鍾乳洞「竜ヶ岩洞(りゅうがしどう)」。
気が遠くなるほどの年月を経てつくられた鍾乳石や、人の手ではつくることができない洞窟の空間、自然の魅力とユーモアが詰まった洞窟はみどころがたくさん。まるで探検家気分で堪能できる。
竜ヶ岩洞は、秩父中古生層と呼ばれる2億5000万年前の石灰岩地帯に形成された、総延長1,046mという東海地方最大級の鍾乳洞だ。
1978年に学術調査がおこなわれ、1981年から洞窟開発に着手。奥深く続く洞窟が確認され、1983年に一般公開が開始された。
洞内で見学できるルートは約400m。一年を通して18℃という快適な温度を保っている。
洞口に入り、歩を進めるとすぐに外光が届かない空間に。さまざまな表情の岩がルート上に迫り出しており、冒険心が揺さぶられる。
鍾乳洞は、長い年月をかけ、石灰岩の地層が弱酸性の雨水によって溶かされることで形成される。
雨水は、腐葉土を通って酸性度を増しながら、岩の小さな割れ目や断層に沿って染み込んでいく。そうして石灰岩が少しずつ溶かされ、次第に割れ目が大きくなり、洞窟ができる。
細い道を進んだかと思うと急に広い場所に出たり、歩みを進めるだけでもワクワク。
地主の戸田貞雄氏が竜ヶ岩洞の開発に乗り出したのは1981年。
洞内の粘土を鍬(くわ)で掻き集めて一輪車で外に運び出す、手掘り作業だったという。途中、高さ約10cmしかなく行き止まりとされた「うらみの窓」を3日間かけて突破。奥には広い空間があり、先へと続いていた。この記念すべき難所はのちに「喜びの窓」と呼ばれるようになった。
一口に鍾乳石と言っても、その形には違いがある。
滴り落ちる水によってできる鍾乳石を「ドリップストーン」と言い、鍾乳洞といえばまず想起される鍾乳石だ。
しかし、同じドリップストーンでも、天井から垂れ下がった「つらら石」、つらら石から落ちた水滴に含まれる石灰分が地面でタケノコ状に固まった「石筍(せきじゅん)」、つらら石と石筍がそれぞれ成長してつながった「石柱」など大別される。
また、流れる水によってシート状に堆積し成長する「流れ石(フローストーン)」や「畦石(リムストーン)」などもある。
でき方や形状によって、全部で15種類ほどに分類されるそう。
そのことを知って岩肌を眺めると、それぞれの鍾乳石に個性を感じられて楽しい。
竜ヶ岩洞は、鍾乳洞の中に広がる空間も興味深い。
所々に水が流れ、泉がある。「天女の鏡」と札があるスポットは、まさに鏡のような水面に天井の鍾乳石が映し出され神秘的。
ちなみに、洞内の水は天然のアルカリイオン水でミネラルを豊富に含み、健康によいとされているそう。
遠くから水の音が聞こえた。
歩みを進めると、天井が高い空間に、滝が流れ落ちている。
日本最大級の地底の滝「黄金の大滝」で、落差は約30m。年中水が枯れることはない。
水量も音もダイナミック。だが見つめていると、まるでスローモーションのように水がゆっくり落ちていくようにも見えとても幻想的だった。
見事なつらら石が、視界いっぱいに広がる「鳳凰の間」。
「多くの鍾乳石に囲まれたこの空間を、何とか無傷で残したい」という思いから、迂回路を掘削。その工事は1日に約20cmずつ掘り進み、100日かけてトンネルが完成したという。
洞窟といえばコウモリだ。
竜ヶ岩洞の入り口付近にはコウモリたちが飼われており、何匹もぶら下がっている様子が見られた。ここには3種類のコウモリが住んでいる。洞窟探検前にぜひ観覧を。
ちなみに、日本の洞窟には約30種類のコウモリが生息しているそうだ。
洞窟探検が終わり、直結した洞窟資料館へと辿り着く。
ここでは竜ヶ岩洞の歴史や貴重な鍾乳石の展示などが見られる。人類と洞窟の関わりなどを説明するジオラマもあり、立体感のある展示だった。
洞窟を通ってきた後だからこそ、知的好奇心が刺激され、学びの深い時間が過ごせた。
竜ヶ岩洞の外には「ようきた洞」という小さな洞があり、夏場は湧出する冷水と冷風を利用した無料足水場に。冬は暗闇を活用して1日中見られるイルミネーションが開催されている。
敷地内には食堂があり、素朴な郷土料理や地元食材を使った料理を楽しめるほか、バスガイドさんの間で人気の高いというアイスクリームが販売されていた。洞窟探検後の小腹満たしにぴったりだった。
はるか昔から自然の力で築き上げられた竜ヶ岩洞。訪れる人達に貴重な姿を見せてくれる観光スポットだ。そしてこれからも年月を重ね、少しずつ姿を変えて、移りゆく美しさを見せてくれるだろう。
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静岡県浜松市浜名区引佐町田畑193