おとなの相談室

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食材がおいしくなる燻製の“魔法”
~初心者でも簡単にできる燻製~
(1時間目)

October 12. 2023(Thu.)

アウトドアブームで密かに注目を集めている燻製。「つくってみたいけど、難しそう」と思っている方も多いのでは?今回は、燻製料理を出すバーを営み、燻製商品の製造や販売もおこなっているリバースインポート代表の清水さんにインタビュー。1時間目では、燻製の魅力や基礎知識について教えてもらった。

合同会社リバースインポート 代表
清水 要
ウイスキーの原料であるピートの輸入販売をする会社「リバースインポート」を2009年に創業。ピートを活用して食材を燻製にしてみたことをきっかけに、燻製料理のおいしさを知る。2016年に静岡県清水区に燻製料理とウイスキーが楽しめるバー「SMOKE HEAD」をオープン。オンラインショップの「ピートスモークジャパン」で温度管理のできる本格的な業務用スモーカー(燻製器)の販売もおこなう。さらに、2023年6月より燻製済み調味料や食材の販売をスタートした。
https://peatsmoke.shop/

1時間目

燻製ってどんなもの?
燻製の基礎知識

独特な風味を加えて
食材をランクアップ

塩漬けした食材を煙で燻すことで特有の風味を付ける燻製。食材を長持ちさせるための保存法の一種として古くから用いられてきました。
昨今のアウトドアブームをきっかけに、スモーカーを購入して自身で燻製を作る方も増えてきたと感じています。

燻製の魅力は、なんといっても独特の風味にあります。スモークの香りが加わることで食材に高級感が生まれるのです。
そして、燻製の過程で水分を飛ばすことで食材の持つ旨味が凝縮され、おいしさもアップ。

普段食べている食材が燻製にすることで大きく変化します。これまで食べたことのない味わいや食感に出合え、感動することもあると思いますよ。

燻製はどのように
つくるの?

燻製の基本的な方法は、5つの工程に分けられます。

①塩漬け…塩や塩水を食材の表面に塗ります。保存性を向上させるのはもちろんのこと、食材のおいしさを引き出し、食感も柔らかくなります。

②塩抜き…食材を水につけ、数時間置きます。食材の表面は塩分濃度が高く、内部は低いのですが、水につけることで均一にします。また、食材の生臭さを取り除くこともできます。

③乾燥…食材をひと晩ほど置き、水分を取り除きます。

④燻煙…スモークチップやスモークウッドなどの燻煙剤を用いて食材を煙で燻し、独特の風味を付けます。

⑤熟成…一晩寝かせて燻製の風味を定着させます。酸味などの角が取れて、まろやかな味わいに。


①~⑤で生肉からハムなどをつくることもできますが、④⑤のみで燻製の風味を付けるだけの簡易的な楽しみ方もあります。

味の決め手は温度!?
3つの燻製方法

燻製の出来を左右するのは温度管理。食材に適した温度で燻すことで、うまみを最大限に引き出すことができます。

燻製に適した温度帯は大きく分けて3つあります。

・冷燻(れいくん)(30度以下)…1枚目の写真のようにスモーカーに保冷剤を入れ温度を低く抑え、数日~数週間かけてじっくり燻製していきます。食材に火を通すことなく風味が付くため、刺身などの生ものを燻製するのに最適です。

・温燻(おんくん)(55度~60度)…1~4時間かけて、熱を通していきます。どんな食材でもおいしくなるオールマイティな燻製方法で、ハムやベーコンなども温燻で調理されます。

・熱燻(ねっくん)(80度以上)…10~15分の短時間で煙を通す方法です。キャンプや自宅でする簡易的な燻製は熱燻が大半を占めます。燃えやすくなるため、サバなどの脂が多く含まれる食材は避けたほうがよいでしょう。

冷燻と温燻は、温度調節のできるサーモスタット付きの本格的なスモーカーが必要になりますが、熱燻なら簡易的な道具で簡単にできます。手軽に味と香りを楽しみたいという初心者の方は、まずは熱燻から始めることをおすすめします。

燻煙材もさまざま
初心者には何がおすすめ?

スモークチップやスモークウッドといった燻煙材も、燻製方法や付けたい風味に合わせて選びます。

木の塊のスモークウッドは、煙の量が安定するので、冷燻や温燻など低温で長時間燻製する場合に用いられます。
少量の食材のときには、薄くて煙が短時間で出やすいスモークチップがよいでしょう。一般的なのは桜チップですが、りんごチップを用いるとほんのり甘みが付きます。

最初は風味が付きやすい桜チップで始めることをおすすめしますが、複数のスモークチップを調合して楽しむこともできますよ。

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