自分時間(アーカイブ)

“屋根のある公園”
ぎふメディアコスモスの
心地よさに身をゆだねて

August 29. 2023(Tue.)

坂倉準三氏が設計した岐阜市民会館や、安藤忠雄氏設計の長良川国際会議場など、岐阜県岐阜市には、実は見どころがある名建築が多い。

今回は、日本を代表する建築家の一人、伊東豊雄(いとうとよお)氏が手がけた、同市にある複合文化施設「みんなの森 ぎふメディアコスモス」へと建築探訪。2階の図書館を中心に、デザインや意匠をじっくりと味わう旅へ。

岐阜の山並みを思わせる
波打った屋根が特徴的な外観。

曲線美と「グローブ」が
心地よい空間をつくる

岐阜駅から北へと約2km。岐阜城がそびえる金華山のふもとに位置する「みんなの森 ぎふメディアコスモス」は、市立中央図書館をはじめ、市民活動交流センター、多文化交流プラザ、展示ギャラリーなどからなる複合文化施設だ。2015年7月18日に開館し、2023年夏に8周年を迎えた。

建築家の伊東豊雄氏が設計したことでも話題となり、その空間の居心地のよさから「滞在型図書館」とも呼ばれている。利用者は年間120万人を超えるという。

傘のようにぶら下がっている「グローブ」は、
風の流れをつくり館内環境を整える役目も。

エントランスを抜け、エスカレーターでさっそく2階の図書館へ。上を見上げると、天井から吊り下がった白くて大きな「グローブ」が。半透明で逆さまの漏斗形状のかさが、昼は自然光をおだやかに拡散させ、夜には照明シェードとなる。エスカレーターを昇るみんなが上を見上げ、ワクワクしながら図書館に向かっていく。

岐阜の山々の稜線を思わせる形状の
木製格子屋根。

2階の図書館のエリア。
壁が少なく、フロア全体に一体感を生み出している。波打つようなデザインの天井、点在する大きなグローブが印象的だ。

木組みによる大天井を「大きな家」、グローブを「小さな家」と見立てた設計で、室内に居ながら木のぬくもりが感じられる大空間。風が通り抜け、かつ各グローブ内に暖気をためておけるなど、エネルギー効率の点でもすぐれているそう。

天井は、東濃ひのきが持つ柔軟性を活かすことで、
特別な加工を施すことなく湾曲している。

天井は、東濃ひのきが持つ柔軟性を活かすことで、
特別な加工を施すことなく湾曲している。

天井は、東濃ひのきが持つ柔軟性を活かすことで、
特別な加工を施すことなく湾曲している。

天井にぶら下がるグローブは、全部で11個。それぞれ模様が異なる。模様をたよりに目的のグローブを探すこともできる。
グローブのてっぺんにある換気窓を開くと、形状に沿って風が流れて外に吸い出され、施設内の空気循環にも貢献。自然光もたっぷり入る。

図書館全体での所蔵可能数は約90万冊という規模。

書架はグローブを中心に渦巻き状に配置されており、それに沿って歩くと自然と書架側面に記されている書棚の内容が目に入り、目当ての本がどこにあるかわかりやすい。書架は、大人が館内を見渡せる程度の高さなのもポイントだ。

座席数は全部で910席。

グローブの下、窓際、テラスと、椅子の数が多いのも特徴だ。
形状もさまざまなので、椅子選びも楽しめる。

「ゆったりグローブ」にある人工籐の椅子。

直径14mという一番大きなグローブ「ゆったりグローブ」。
その下に配された大きな椅子は、人工籐でつくられた滑らかなデザイン。ゆったりと読書することができる。

西側にある屋根付きテラス。

図書館内に3箇所あるテラスも居心地が良い。
3つのうち東側のテラスは、「金華山テラス」と呼ばれており、天気の良い日には金華山と岐阜城が見渡せる。波打つカーブが美しい椅子は、2脚以上を組み合わせて、ベンチのように使うことも可能。

東側の「金華山テラス」。
金華山と岐阜城を望むことができる。

多様な来館者のためにさまざまなスペースを用意。

多様な来館者のためにさまざまなスペースを用意。

多様な来館者のためにさまざまなスペースを用意。

多様な来館者のためにさまざまなスペースを用意。

建築美を堪能しながらも、図書館としての機能やサービス面も目に留まった。
親子連れがくつろぎながら本を楽しめる「親子のグローブ」、10代専用の「YA(ヤングアダルト)エリア」、ゆったりと開放的な視聴覚ブース「みる・きくシート」、一般の人も出入りできる開架書庫の1階と閉架書庫の中2階からなる書庫「本の蔵」など。

1階には、ギャラリー、スタジオ、ホールなどが。

1階のつり天井も特徴的だ。羽板を平行に並べたルーバー状で、裏側には吸音材が載せられており、防音効果があるそう。

天井裏の配管などが見える構造。
正面入り口の広場。

建物だけでなく、その周りの美しい景観も居心地の良さの要因だろう。正面入り口前は、平日昼にはキッチンカーで賑わう。土日にはマルシェを開催していることもあるそうだ。

建物の西側に並木道とベンチが。
巨大で壮大ながらも、
自然と調和した外観。

悠然とした外観。居るほどに心地良い内観。使い方も多様で、利用者の目線に立ったつくりや取り組みを随所に見ることができた。もちろん、細かな意匠から遠目で見たフォルムまで、建築を眺める醍醐味も存分に堪能することができた。

素敵な建築物を旅先の景色として寄ったり引いたりして眺め、味わってみるのもいい。

MAP

みんなの森 ぎふメディアコスモス
〒500-8076
岐阜県岐阜市司町40-5
電話番号:058-265-4101
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