むすぶひと、つなぐひと

中部地域の注目パーソンにインタビュー!

確固たる信念と理想像を追い
自分の道を切り拓く
和菓子職人
三納寛之さん
(4/4)

April 15. 2024(Mon.)

岐阜県在住のフリーランス和菓子職人がつくる和菓子が、インスタグラムで話題になっている。
実店舗を持たず、WEBで販売する上生菓子はあっという間に完売となってしまうことから、ファンからは“幻の和菓子”と呼ばれている。
“映える”和菓子で多くの人を魅了しているのは、和菓子職人の三納寛之(さんのうひろゆき)さん。

最終回の今回は、和菓子での表現やセルフブランディングの秘訣について伺った。

ー前回までの記事はこちら
1/4
気鋭のフリーランス和菓子職人の幼少時代とは 和菓子職人 三納寛之(さんのうひろゆき)さん(1/4)
2/4
修業や海外での講師経験により着実に実力をつける 和菓子職人 三納寛之さん(2/4)
3/4
上生菓子の魅力を広く伝えたい 和菓子職人 三納寛之さん(3/4)

自分にしかできない表現を
求めて

三納さんの和菓子のいちばんの特徴はデザインだと言っていいだろう。
抽象的なテーマから具象的なテーマへ。シンプルな造形から複雑で手の込んだものへ。和菓子に親しみを持ってこなかった人でもわかりやすく美しさを感じてもらえるように、と、ビジュアル面でストレートに届くものをつくり続けている。
「和菓子を見た瞬間に、お客さまが笑顔になってくれる、そんなシーンを想像しています。海外セミナーなどの経験から、和菓子は日本文化を代表するものであるとの意識が芽生えて、それなら今の日本の風景をわかりやすく伝えるのも和菓子職人の仕事であると思いました」
こうしたデザインのアイデアはどのようにして生まれるのだろうか。
「女性のアクセサリーや人気のあるチョコレートを見に行ったりします。アクセサリーやチョコレートってサイズがある程度限られていて、その大きさの中で目一杯のデザインをしていますよね。だからとても参考になるのです。かわいい!と言われるデザインになっているものには、必ず理由がありますから」
そのほか、フランス料理の食材の組み合わせを勉強するなど、見聞を広げ感性を磨いていった。
三納さんでなければできない表現のために、日々研究を怠らないことが、セルフブランディングの成功につながっているようだ。

三納さんの和菓子は、
オリジナリティの高いデザインばかり。

趣味の世界も
やはりデザイニング

三納さんは仕事から離れた時、何をしているのか聞いてみた。
「どこからどこまでが仕事なのか、だんだんわからなくなってきました」と言いつつも、工房の一角にあった趣味のものをいくつか見せてくださった。
ひとつは、アクアリウム。水槽にどんな配置で水草を育て、木や石を置き、どんな色合いにするか。それを考えてつくっていく過程が楽しいそう。これこそまさにデザインである。
和菓子の新作に向き合う時にはラフスケッチなどを描かずに、すぐに和菓子をつくりはじめるという三納さん。アクアリウムも同様で、頭に思い描いた水景を水草を育てながら作り上げていくのだとか。
これ以外にも、万年筆のコレクションなどを持っている。ご本人は意識していないのかもしれないが、身の回りにあるすべてが、デザインの対象なのだろう。

水草を育ててデザインしていくのが
面白いアクアリウム。
万年筆コレクション。いずれもデザインや
色合いが好きで購入したもの。

確かな未来像を持ち
着実にステップアップ

「和菓子は、複数の職人が同じものをつくったとしても、職人ごとに違いがはっきり出ます。どんな和菓子がつくりたいか、どんな着地点を見ているかによって、また技術の差によって仕上がりが違ってくるのは当然です。そして究極はセンスなんです。インスタグラムで人気が出た時も、フォロワー数が増えたから自信がついたというわけではなく、最初から自分のデザインには自信がありました」
こうしたコメントを聞くと、自分の目標に向かって、ひとつひとつの通過点を着実に自分のものにしてきた人だということがよくわかる。
子どもの頃に父親の和菓子屋を手伝っていたことも、修行先で苦労しながらなし得たことも、コンテストに出品したことも、すべては理想像にたどり着くための構成要素。芯の通った意識を保ち続けることが、三納さんの言う“センス”となって、“バズりの常連”と呼ばれる和菓子職人につながっていくのだろう。
販路拡大も視野に入れているという三納さん。これからどんな展開が待っているのか、大いに期待したい。

和菓子をつくるための大切な道具は、
オーダーしたもの。中には廃業された
和菓子屋から譲り受けたものもある。

プロフィール

和菓子職人
三納寛之(さんのうひろゆき)
「和の菓 さんのう」主宰の和菓子職人。愛知県瀬戸市生まれ。和菓子屋での修行時代に数々のコンテスト受賞を経験し、2019年よりフリーランスの和菓子職人として活躍。WEBでの販売以外には、名古屋と岐阜で月に数度の直接販売をおこなっている。そのほか、メディアへの出演や、さまざまなコラボレーション企画など、幅広い活動を展開。現在は岐阜県瑞穂市の和菓子工房にて制作を続けている。インスタグラムで多数のフォロワーを持つ。
https://www.instagram.com/wagashi_sanchan/
和の菓 さんのう
三納寛之さんが経営する和菓子販売のWEBサイト。伝統の技術と現代にマッチする感性で、創作和菓子をつくり出している。販売されると同時に抽選になることがあるほど人気が高い。月に数回程度は、イベントやポップアップストアなどで直接販売することがあるので、インスタグラムやWEBは要チェック。
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