長良川鉄道+自転車の気まま旅
February 06. 2023(Mon.)
岐阜を流れる清流・長良川沿いの美濃加茂から郡上までを結ぶ、長良川鉄道・越美南線(えつみなんせん)の旅へ。
今回の目的は、電車に乗るだけでなく、“自転車に乗る”こと。
自転車に乗ると、行動範囲がぐっと広がり、気になった場所で自由に乗り降りできる。自転車でどこかに向かえば、その道中の景色も心は逃さない。欲張りな乗り物だ。
自転車に乗った時に感じる自由な気持ち、どこまででもいける“あの気持ち”は何だろう。
ある秋の週末、天気の良い日に「自転車に乗りたいな」とふと思い立った。いつもは家の近くを走っているけれど、せっかくなら遠出したい。自転車を載せて移動できる交通機関を調べていくうちに、岐阜県の長良川沿いを走る長良川鉄道を知った。岐阜県美濃加茂市の美濃太田駅から岐阜県郡上市の北濃駅に至る72.1キロメートルの路線を持つ。岐阜県内の第三セクターの鉄道の中ではもっとも長いという。
今回は、目的地を郡上八幡にして、現地でレンタサイクリングをすることに決定。まずは始発駅の美濃太田駅から乗車し、北上した。
美濃を過ぎると、「左手をご覧ください」と車内アナウンスが流れる。
長良川鉄道の「ゆら~り眺めて清流列車」では、絶景ポイントをスピードを落としてゆっくり走ってくれる。乗客みんなで窓に張り付いて、エメラルドグリーンの川を眺めた。
そこから何度だろうか。右手に左手、鉄橋を渡るたびに上からの川の眺めを楽しんだ。
そうこうしていたらあっという間に目的地の郡上八幡駅に到着。木造平屋の駅舎は開業当時のもの。そのレトロな面影に、一気にタイムスリップしたかのような心地になった。
駅に着いて観光案内所の窓口で自転車を借りた。荷物をカゴに入れて、いざまちの中心部へ。
自転車で散策をしていると、まちのそこかしこから水の流れる音が聞こえる。サラサラと流れる水路もあれば、ザーッと勢いよく流れる水路もある。愉快な水音に誘われて、郡上八幡城の城下町として栄えた、古い街並みが残るエリアへと向かった。
知らないまち、知らない景色、もっと知りたくなって自転車を走らせる。歴史情緒漂う通りでお昼を食べたり、さらに遠くへと足を伸ばしていろいろな場所から長良川を眺めたり、自由気ままに郡上八幡を堪能した。
都心部は秋模様。だが山奥の郡上八幡はもう初冬の空気。ツンとした冬の空気は嫌いじゃない。自転車旅にはむしろ最適だった。動くほどに体が徐々に温まってきた。
まだ15時というのに、冬空らしく、もう日が傾いてきている。帰り道だけれど、まだ帰りたくない。「途中どこで降りようか」。ぼんやり眺めながら、次の降車駅を考える。行きに見た川の色も、生い茂る木々も、全て黄金色に染まっていた。
電車が停まり、駅舎のかわいらしい趣が気になり降り立った関駅。朝、美濃太田駅で「1日フリーきっぷ」を買った際にもらったクーポン券で、駅で販売している長良川鉄道オリジナルの煎餅を購入した。
関市内を散策していてひらめいた。「関といえば」の「関牛乳」が飲みたい。検索して、関牛乳の直売所へと歩いた。牛乳を飲むつもりが、隣で売っていたアイスクリームが気になって買ってしまった。素朴でやさしい甘さが、旅で疲れた体に沁みた。
そうして日が暮れる前に関駅から美濃加茂駅へ。あっという間の1日だった。
自転車を漕ぐのは疲れるが、達成感もある。
必ずしも旅に苦労が必要な訳ではないが、苦労しただけ見られる景色がたくさんある。
自転車は旅の味わいをより豊かにしてくれるような気がした。