北欧から学ぶ暮らしのヒント
自分でつくる、ひとり時間
March 07. 2024(Thu.)
今回の「自分時間」は、少し趣を変えて、日々の暮らしの中での時間の楽しみ方について。
長野県松本市で、スウェーデン出身のご主人と2人のお子さまと暮らすライター・エッセイストの桒原(くわばら)さやかさんに綴っていただきました。
桒原さんは、岐阜県出身。「イケア・ジャパン」やWEBメディア&ショップを運営する「北欧、暮らしの道具店」に勤務した後、ノルウェーに移住し約1年半を過ごした経験を持っています。
そして松本で、住まいの心地よさを重要視する北欧の考え方を取り入れながら、日本のよさを生かして、ご夫婦でDIYしながら家づくりをおこなっています。
そんな桒原さんは、自宅でどのように“ひとりを楽しむ時間”をつくっているのでしょうか。
ライター・エッセイスト 桒原さやか
https://www.instagram.com/kuwabarasayaka/
https://note.com/kuwabarasan/
駆け抜けるように過ぎる日々の中
自分だけの時間をつくるには…
子どもが生まれてから、いつの間にか当たり前になったことがあります。
休みの日に公園で走り回ること。
甘いカレーライスを作ること。
寝る前に絵本を3冊読むこと。
ママー!と呼ばれたら、どこにいてもひゅんと駆けつけること。
数えはじめたら、きりがありません。
毎日の生活も考えることも、子どもが中心の毎日。一日は駆け抜けるように過ぎていき、いつの間にか、すっかり自分が置いてけぼりになっていることに気がつきます。
ひとりの時間が欲しい。何をするでもなくぼーっとしたり、考え事をしたりする、自分と向き合う時間が、今切実に必要なのかもしれない。
そうぼやいていたら、スウェーデン出身の夫がこんなことを言いました。
「だったらさ、ひとり時間専用のスペースを作ったらいいよ」
聞いてみると、北欧ではひとり時間を楽しむために必要なセットが決まっているのだとか。そのセットとは、ひとり掛けチェアと、小さなテーブルとラグ、やわらかい明かりのランプの4点。これさえ揃っていれば、十分に楽しめると言うのです。
ひとり時間と聞くと、喫茶店や散歩がまっさきに浮かびますが、なんでも家の中で解決してしまうところが、家が大好きな北欧の人たちらしいアイデアだなと思います。
ものは試しだと思い、縁側の一畳ほどの場所に「ひとり時間スペース」を作ってみることに。早速、本を読んだり、ぼーっと考え事をしたり、裁縫に没頭してみたり。
「ママがここに座っていたら、しばらくそっとしておいてね」
子どもたちにそう伝えておくと、自分たちで遊びを考えて少しの間過ごしてくれることもわかってきました。
時間に余裕のある日は、大きなカップにたっぷりのお茶を準備しておくようになり、スマートフォンは持ち込まないというルールも。この場所に座ったら、「ひとりを楽しむ時間」と意識できるのもよいよう。毎日から少し離れて、自分だけの時間ができるようになりました。ちょっとしたことで生活は変えられるし、自分で作っていくものなんだと、改めて気づかせてもらった出来事でもあります。
今では我が家のあちこちに座る場所が増えました。まだまだ子どもが小さいこともあり、ひとり時間満喫とまではいきませんが、家事や料理の合間をぬって、あちこちでふーっと腰掛けるひとときが毎日の小さな楽しみです。
ほんの10分、15分ほどのささやかな時間が、ばたばたと忙しい毎日のお守りみたいになっています。