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抹茶と茶道の歴史を知ろう
〜テーブル茶道で和文化に親しむ〜
(1時間目)

November 15. 2023(Wed.)

和文化の代表格ともいえる茶道。「決まりがたくさんあって難しそう」と、敷居が高いイメージがあるものだが、その真髄は「おもてなしの心」だ。また、複雑な作法を覚えなくても、抹茶は自宅で気軽に点てられるもの。テーブル茶道インストラクターの長田(おさだ)香織さんに、抹茶を楽しむコツを訊ねた。1時間目は、茶道の基礎知識を中心に解説していく。

日本テーブル茶道協会認定インストラクター
長田 香織
静岡県周智郡森町(しゅうちぐんもりまち)にて1948年に創業した『おさだ苑本店』の三代目店主を務める。日本茶や煎茶、和菓子にも通じていて、練りきりアート認定講師、日本茶インストラクターでもある。おさだ苑には抹茶専用の自社茶園があり、自社ブランド「森の抹茶 野乃」は、新鮮な香りと深い味わいで多くの茶人に愛されている。
https://www.ayuomotenashi.com/

1時間目
茶道の歴史と入門。
初心者でも始められる?

茶道ってそもそも何だろう?

茶道は、茶室という舞台で、茶道具や花、掛け軸などの美術品と共に、亭主と客人が一体となって作り上げる総合芸術とも呼べる「茶の湯」を学ぶものです。
最も正式かつ最高のおもてなしは茶事と呼ばれ、懐石料理を伴い数時間かけて進行します。お茶も、トロリと練った濃厚な抹茶を回し飲みする濃茶と、サラリと飲みやすく点てた薄茶の2種類が供されます。
一般的に「抹茶を飲む」と言う時は薄茶を指すものですが、茶の湯では、濃茶が重要な意味を持ちます。懐石料理は濃茶をより美味しくいただくためのもの、薄茶はそのしめくくりとしていただくものです。
薄茶だけでおこなう気軽な茶会は大寄せの茶会と呼ばれ、日常的にも広く親しまれています。
茶事や茶会は、季節や時間帯、内容によって様々な形式がありますが、一服のお茶を美味しく召し上がってもらいたいという亭主のおもてなしの心を客人に伝え、交流を楽しむのが目的です。

茶道にはどんな歴史があるの?

茶は、カメリア・シネンシスというツバキ科の常緑樹の葉です。中国南部の山岳地帯が原産だと言われています。
お茶を飲む、いわゆる喫茶の習慣は、平安時代よりも前に中国から日本に伝わっていたという記録があり、長い歴史をかけて日本独自の文化に発展しました。
特に抹茶をたしなむきっかけを作ったキーパーソンが、鎌倉時代の禅僧・栄西(えいさい)です。栄西は抹茶の効用や飲み方を記した『喫茶養生記』を著し、寺院の作法に茶礼が普及していきます。鎌倉時代末期には、公家や武士を中心に茶の品種を飲み分ける闘茶という遊芸が流行し、一般庶民にもお茶が広まるようになりました。
現在の茶道の原点ともいえるのが、室町時代後期に生まれた「茶の湯」です。茶の湯は、村田珠光(じゅこう)によって禅の精神を取り入れた「侘び茶」へ、さらに千利休によって完成され、一般の町衆へと広がりました。
茶の湯の作法を体系的に学ぶ「茶道」が形成されたのは江戸時代のことです。

気軽に始めるテーブル茶道

茶道にはさまざまな流派があります。
千利休のひ孫による「表千家」・「裏千家」・「武者小路千家」の三千家が代表的です。
流派によって細かい作法は異なりますが、おもてなしの心を伝え、一期一会のひとときを楽しむという茶の湯の精神は同じです。

近年、気軽に始められる茶道として人気を呼んでいるのがテーブル茶道です。
「専用の茶道具を揃えなくても、抹茶と、抹茶を点てる茶筅さえあれば、自宅にあるものを使って茶道のおもてなしの精神を学ぶことができます。椅子に座ったままおこなうので、小さな子どもや外国の方、正座が辛くなってきた方でも安心です。茶道と並行してテーブル茶道を学ばれている方もいらっしゃいます」(長田さん)


参考文献:「はじめての茶の湯」主婦の友社、「茶の湯の歴史」角川選書

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