おとなの相談室

知っているようで知らなかった悩みに、専門家がお答えします

子どもの発育と
睡眠の関係
睡眠マスターに聞く!
眠りの極意(3時間目)

February 02. 2023(Thu.)

親が忙しければ忙しいほど、子どもも睡眠不足に悩んでいることが多い。子どもの睡眠不足は、発育に大きな影響を与えてしまうことをご存じだろうか。今回は、子どもの睡眠と発育の関係や睡眠の改善方法について一般社団法人日本快眠協会 代表理事の今枝昌子さんに話を伺った。

ー1時間目の記事はこちら
質の悪い睡眠に潜むリスクとは?睡眠マスターに聞く!眠りの極意(1時間目)
ー2時間目の記事はこちら
「快眠」のためにできることとは?睡眠マスターに聞く!眠りの極意(2時間目)

一般社団法人日本快眠協会 代表理事・スリープケアマスター
今枝 昌子
2004年からリフレクソロジストとして、2009年からリワークの講師として心療内科に勤務し、6,000人以上に及ぶ眠れない方の足裏を施術。「睡眠力を鍛えて、日本を元気に」を理念として、2012年に一般社団法人日本快眠協会を設立。企業研修や企業コンサルティング、CSAスリープケアマネージャーの養成を通して、睡眠の問題を発見し解決するための指導を行う。公益財団法人神経研究所 睡眠健康推進機構 推進員、睡眠学会学会員。
https://kaimin.or.jp/

3時間目

子どもが夜更かし気味で心配です。何か対策はありますか?

現代は眠れていない子どもが増加中!その原因は?

成長期にある子どもは、大人以上に睡眠時間が必要です。新生児期は16時間、幼児期は約12~14時間、小児期は10~12時間の睡眠時間が必要だといわれています。しかし近年、子どもの生活時間は夜型化。夜10時までに眠れていない3歳児は全体の50%もいるそうです。
さらに、小学校高学年の子どもの中には「なぜだか分からないが眠れない」「夜中に起きてしまう」「朝スッキリ起きられない」といった、大人と変わらない睡眠の悩みを持っているということがわかっています。

なぜ、最近の子どもは睡眠の時間や質が低下しているのでしょうか?
原因の一つに、両親が共働きであることが挙げられます。両親が帰宅してから食事やお風呂を済ませるとなると、どうしても睡眠時間が後ろ倒しになってしまうのです。サービス業に従事する両親だと夜8時や9時に帰宅する場合もあり、さらに遅くなってしまうでしょう。
また、寝る直前にテレビやスマホの画面を見る習慣がついてしまっていることも問題です。交感神経が優位になりノンレム睡眠に入りにくくなるため、朝までぐっすり眠ることができなくなります。

睡眠と子どもの発育には
どんな関係があるの?

「子どもは寝るのが仕事」というように、成長にとって睡眠は欠かせないものです。ノンレム睡眠の間に子どもの脳が発達し、レム睡眠の間に新陳代謝を高め、筋肉を増強し、骨を形成していきます。

子どもの睡眠不足が顕著に現れるのは学力低下です。寝不足のまま学校に行くと授業中に眠くなってしまい、勉強がままならなくなってしまうのです。
また、とある小学校で、「生徒の元気がなく静かすぎる」と感じた校長が毎日お昼休みに15分間昼寝の時間を作ったところ、子どもたちが賑やかになったという話を聞いたこともあります。

最近の子どもは塾や習い事に忙しいと思いますが、心身の成長には睡眠が何よりも大切だということを親御さんにもぜひ心に留めておいてほしいです。

子どもの幸せを願うなら、
睡眠習慣から整えるべし!

ほかにも、子どもの睡眠に関して興味深い調査結果も出ています。小学校5年生から高校3年生の子どもたちに「自分のことが好きですか?」と質問したところ、「そう思う」「どちらかと言えばそう思う」と答えた割合が、午前0時以降に寝る子どもは34.7%なのに対して午後9時以前に寝る子どもは57.7%にも及んだのです。十分な睡眠は子どもの自己肯定感の向上につながることがわかりました。

睡眠習慣が身に付いていない子どもは行動や感情に対しての抑制力が低く、学校生活においても適応能力が平均より低い傾向にあるそうです。子どもの自殺や不登校の中でも、もし生活を整えていれば未然に防げたかもしれないというケースが3割以上あるといいます。

子どもたちの睡眠を守ることは、子育てにおいて何よりも優先すべきことなのかもしれません。

睡眠について楽しく学べる
「おねむりカルタ」

子どもの睡眠を改善するためのステップとして、まずは睡眠の重要性を知ることが一番です。これは、親はもちろん子どもにも伝えたいことなのです。

その方法の一つとして、「おねむりカルタ」があります。通常のカルタのように子どもと一緒に遊んでいるうちに、睡眠について学ぶことができるのです。
「睡眠はなぜ大切なのか」「どのようにして睡眠の質を上げるか」といった内容が書かれています。例えば、「い」は「いつもの時間に起きてみよう。スッキリパッチリシャキーン」。起きる時間を決めて毎日同じリズムで起床することは質の良い睡眠をとるためのコツなのです。中には少し難しい内容もありますが、解説書がついているので安心です。家族で一緒に勉強して心の隅に留めておくだけでも、睡眠習慣を変えるきっかけになると思います。

赤ちゃんがなかなか寝てくれない時は?

赤ちゃんがなかなか寝てくれない…というときは、前回の記事で紹介した「あしうら快眠法」がおすすめです。足裏を優しく手で包んであげて、足全体をゆっくりマッサージしてください。赤ちゃんの体がほぐれて、寝つきやすくなりますよ。 子守唄を歌いながら顔を見てあげるとさらに効果的です。

子どもがきちんと早く寝てくれるようになれば、両親も自分たちの時間を楽しむことができるでしょう。ぐっすり眠って元気に登校してくれれば、成績が下がってイライラすることも減りそうです。子どもの睡眠改善は、家族円満につながるかもしれません。

画像提供/PIXTA

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