甲斐みのりわたしのまちのたからもの

中部地域のさまざまなまちを文筆家・甲斐みのりさんが訪ねます

マルシェをきっかけに
参道にかつての賑わいを
岐⾩町(ぎふまち)エリア
(岐⾩県岐⾩市)

February 05. 2024(Mon.)

ー前回の記事はこちら
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生まれ育ったまちを守っていきたい 岐⾩町(ぎふまち)エリア(岐⾩県岐⾩市)
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岐⾩町の新しい⾵「裏参道モール」へ 岐⾩町(ぎふまち)エリア(岐⾩県岐⾩市)

「伊奈波神社」の門前に位置する「岐阜善光寺」。岐阜城主となった織田信長公が、信濃善光寺の善光寺如来を岐阜に迎えたことが始まりとされています。2014年から、善光寺如来のご本尊の縁日に合わせて、毎月15日に境内で「善光寺大門まるけ」というマルシェイベントが催されています。
この取り組みが、参道に少しずつ賑わいを呼んでいるようです。地元の有志によって設立されたまちづくり会社「岐阜まち家守(やもり)」代表の山本慎一郎さんに岐阜善光寺を案内いただきました。

まちのにぎわいの種をまく
地域に根付くマルシェ

「善光寺大門まるけ」の事務局を担当するのは、2005年に岐阜善光寺に嫁いだ松枝朋子さん。普段は、一男一女を育てながら、お寺の広報などを中心に忙しい日々を送っています。そんな中、2014年から住職である夫の秀晃さんが始めた「善光寺大門まるけ」をサポート。2018年に秀晃さんが急逝したあとも、「お寺を人が集う場所にしたい」という夫の意思を継いで、マルシェを続けています。

「もともと伊奈波神社の参道はたくさんのお店が軒を連ね、デパートのような賑わいだったと聞いていました。今この参道に残ってるのは病院や新聞社を含めて7店舗。少しでも以前のような活気が戻ったり、新たな道を切り開きたい方の出店や移住のきっかけになれば嬉しいです」

15日が週末や休日に重なるときは、「善光寺大門まるけ」の拡大版として、「ミライの参道まるけ」を開催。その日はいつも以上に出店者が増え、平日は学校に通う子どもたちも、お祭りのようなまるけの雰囲気を楽しんでいます。

多くの人で賑わう「ミライの参道まるけ」。

松枝さんは山本さんらの誘いを受けて、「岐阜まち家守」のメンバーとして、岐阜町のまちづくりにも取り組んでいます。
「『ミライの参道まるけ』は、まるけで描く風景が、未来の参道の風景であるようにという思いを込めて名付けました。さきほど立ち寄りいただいた『天ころりん』も、『ミライの参道まるけ』の出店をきっかけに、岐阜町に店舗を構えてくださって。おかげさまで地域の方にも、まるけが浸透してきました。昔の賑わいを知っている高齢のみなさんにも、温かく応援いただいています」

私自身、自分が暮らす町で毎月マルシェが開催されていたとしたら、毎回通って買い物を楽しむだろうなと、想像するだけでなんだかわくわくしてきます。自分たちで進む道を切り開く作り手と直接触れ合うことで、自分も頑張ろうと生きる力を得られたり、地元を誇らしく感じる人もいるでしょう。そうして、まるけを体験した子どもたちも、「いつかこんなことがしてみたい」と、未来を思い描くきっかけになるかもしれません。


岐阜善光寺
https://gifu-zenkoji.jp/

山本さんと、岐阜善光寺の松枝朋子さん。
「岐阜まち家守」のメンバーとして
まちづくりをおこなう仲間。

岐阜善光寺参道の変遷を
見守ってきた和菓子店

「松花堂」は、伊奈波神社の表参道で1916年から100年以上続く和菓子店。常時6~7種類の季節の上生菓子が店頭に並び、東海地方各所で催されるお茶会のお茶菓子としても親しまれています。現在、お菓子を作っているのは、2代目の松村知幸さんと娘の百恵さん。毎日二人で夜明け前からあんを炊き、一つ一つ心をこめて、お菓子に季節を映し出しています。種類は2週間ごとに、3種類ずつくらい変わっていくので、訪れるたびに異なる意匠や素材を楽しめるのも嬉しいところ。

「岐阜は、信長公が茶の湯を大事にしたことと、庶民にまでお茶の文化が広まったということがあって、お茶を嗜まれる方が多くいらっしゃいます。喫茶文化が根付いているからか、和菓子もよくおもたせにお使いいただいています」と百恵さん。

松花堂の和菓子は店内で味わうこともできるので、
散策の途中にひとやすみしても。
京都の和菓子の味・色・形の伝統を受け継ぐ、
松花堂の和菓子。岐阜はもちろん、中部全域に
ファンが多い。

百恵さんと、今回の案内人・山本さんは、中学の先輩・後輩にあたる間柄。山本さんは幼い頃から、松花堂の上生菓子をよく食べていたそうです。

二人とも、同じ時代に、同じ地域で育ってきたこともあって、昔と今のまちの移り変わりの話題でひと花咲きました。ひと昔前は通り沿いに多くの店が軒を連ね、山本さんや百恵さんの祖父母の時代は、毎日が縁日のような賑わいだったそうです。
しかしその後、次第に表参道の店の灯りが一つずつ消えて、今では数軒が残るのみ。しかしながら、今また再び、一帯に新たな光が灯されていると、百恵さんは喜びます。

「山本さんはじめ、『岐阜まち家守』のみなさんに、地域を盛り上げていただいて。今はこのあたりにお店を出したいという方が増えてきて嬉しいです」

山本さんもまた「松花堂さんはじめ、このあたりで商売している方たちは、新店舗も『岐阜まち家守』の活動も、寛大に受け止めてくださってありがたいです」と感謝の気持ちを抱いています。
こうして互いに尊重し合う気持ちが、快いまちづくりにつながるのだと、お二人を前に感じ入りました。


和菓子司 松花堂
https://www.shokadoh.com/

山本さんと、松村百恵さんは、
同じ中学校に通った同世代。

MAP

岐阜町エリア
岐阜県岐阜市 金華・京町地区
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