甲斐みのりわたしのまちのたからもの

中部地域のさまざまなまちを文筆家・甲斐みのりさんが訪ねます

岐⾩町の新しい⾵
「裏参道モール」へ
岐⾩町(ぎふまち)エリア
(岐⾩県岐⾩市)

January 29. 2024(Mon.)

ー前回の記事はこちら
1/4
生まれ育ったまちを守っていきたい 岐⾩町(ぎふまち)エリア(岐⾩県岐⾩市)

「岐阜町」を活性化させようと、地元の有志によって設立されたまちづくり会社「岐阜まち家守(やもり)」。代表の山本慎一郎さんに岐阜まち家守が手掛け、今新たな注目スポットとなっている「裏参道モール」をご案内いただきました。

人の流れを変えた
新たなグルメスポット

伊奈波(いなば)神社参道から南に一本入った裏参道と呼ばれる通りに「裏参道モール」はあります。
築100年とも言われる古民家をリノベーションし、岐阜町の新たな名所にしようというプロジェクトとして始動。2023年1月に、天むす専門店の「天ころりん」が完成しました。3月にはフォー専門店「pho gnu(フォーヌー)」もオープン。両店とも人気で、わざわざ探して訪れる人もいるほど、人の流れが変わるきっかけとなりました。

家族の味を姉妹で届ける
人気の「天むす」専門店

裏参道モールに、天むす専門店「天ころりん」がオープンしたのは2023年1月のこと。まだ店ができて1年ほどですが、朝11時の開店から1~2時間後には完売するほどの繁盛ぶり。それというのも、もともとは、すぐ近くの岐阜善光寺境内と伊奈波神社参道で開催される「ミライの参道まるけ」に出店していたときから、行列ができるほど人気を博していたのです。

お話しを伺ったのは、姉・小川恵衣子さんと二人で店を切り盛りする宮嶋三貴さん。
「姉も私も料理や食べ歩きが好きなのですが、天むすはエビ好きの姉がよく家族のためにつくってくれていたもので、私の子どももよく食べていました。そんな姉と名古屋で天むすを食べたとき、そのおいしさに感動したことがあって。いつか自分たちのお店を持つなら天むすの店と、先に姉が決めていたんです」。

お姉さんと2人で店を切り盛りする
店主の宮嶋三貴さん。

「ミライの参道まるけ」で評判になった後、同級生の紹介で裏参道モールを知り、独立を決意します。もともとは大工さんが暮らしていたという古民家を改装し、土鍋でお米を炊いてるところをお客さまに見てもらえるようにと、通りに面して厨房をつくりました。

朝6時から仕込みを始めて、11時に店を開けると、そこから客足はひっきりなし。お昼過ぎには売り切れてしまうのが日常風景となりました。

「彼女とお姉さんを見ていてすごいなと思うのが、売れるなら売れるだけつくればいいという考え方もある中、お客さまにちゃんとおいしいものを提供するための、自分たちの限界をしっかり見定めているところ。そうして実際、みんなが満足して、愛されている」と、出店時から「岐阜まち家守」の代表として見守り続ける山本さん。
「天ころりんが、裏参道モールに出店してくれたことでこの建物が生き返り、新たな人の流れができてまちが賑わい、お隣の『pho gnu』も入居を決めてくれました」ともおっしゃっていました。

天ころりん Instagram
https://www.instagram.com/tencororin82/?hl=ja

粒が立った甘いごはんと、ぷりぷりの海老天を
合わせた「土鍋炊き天結び・白」。
国産雑穀米を使った「紅」もある。
お米を炊くのは、信楽・雲井窯のご飯専用土鍋。
米のうまみが引き出され、ふっくらと炊き上がる。

老舗のういろう店が
フォー専門店をプロデュース

1966年創業のういろ専門店「長良ういろ」が手がける、ベトナムを代表する麺料理・フォーの専門店「pho gnu」。店名の“gnu”は、「岐阜(g)長良(n)ういろ(u)」の頭文字です。

お話を伺ったのは、長良ういろの女将でもある店長の浦瀬明香さん。以前はキャビンアテンダントとして、世界中を飛び回っていたことがあるそうです。
「ういろの主原料である、岐阜県産のハツシモを使った米粉を、あらたな角度で光を当てられないかと考えていたんです。前職で海外に滞在し、いろんな食文化に触れてきたこともあり、アジアの食文化として根付く、米粉を使ったフォーが思い浮かびました」。

そうして、小麦粉・添加物・化学調味料不使用、グルテンフリーのフォーを製造し、キッチンカーや間借りでイベントに出店するように。「岐阜の食材を使った麺や具材とともに、最後の一滴まで安心して飲み干せるうまみたっぷりのスープも喜んでいただいて、お客さまから常設店舗があれば通いたいという声をいただくようになりました」。

そんな中、出会ったのが「裏参道モール」。「天ころりん」が出店後すぐに話題になっていたこともあり、安心して店を構えることができたそう。古民家にもともとあった梁や土間を上手に生かしながら改修をおこない、気持ちがほっと落ち着くような洗練された空間が2023年3月に完成。カウンター席とテーブル席があり、一人でもさくっと食事をしやすいのも、普段使いするのに嬉しいポイントです。

「お店をきっかけに岐阜の魅力も
知っていただければ」と浦瀬さん。

メニューはシンプルに「長良川フォー」「海鮮フォー」「飛騨牛フォー」の3種類。そこにときどき、季節ものが加わることもあります。奥美濃古地鶏、長良川の鮎魚醤、飛騨牛、それから野菜も、地元の食材をふんだんに使って、安心安全に仕上げたスープは絶品。さらにはなんと和菓子屋らしく、和三盆糖を隠し味に使用しているというのもちょっとした驚き。全てのメニューに、日替わりのサイドディッシュと、ういろのデザートが付きます。

「フォーのデザートとしてういろを召し上がっていただいて、ういろのおいしさを再発見したという方も多くいます。店舗を持ったことで、新たな交流ができて、よかったなと日々実感しています」。

天ころりんとは店の奥でつながっていて、購入した天むすを持ち込んでフォーと一緒に味わうこともできます。2つの店を行き来できるようにすることも、それぞれの顧客が広がり相乗効果に。個々の店舗のファンが、「裏参道モール」や、岐阜町そのもののファンになるという、理想の形が生まれています。


phognu Instagram
https://www.instagram.com/_pho_gnu_/

看板メニューの「長良川フォー」。しっとり
香りがいい「清流美どり」の胸肉をトッピング。
店では、「長良ういろ」のういろとともに、
無農薬の朝採れ野菜も販売。

MAP

岐阜町エリア
岐阜県岐阜市 金華・京町地区
上部へ戻る