高島屋の和菓子バイヤーが中部地域注目の和菓子をご紹介
先代からののれんを守る
街道沿いの店
餅・和菓子処 いなみ
・岐阜県笠松町
April 17. 2024(Wed.)
父の遺志を受け継ぎ
今日も夫婦で店を切り盛り
名古屋鉄道本線「笠松」駅からのびる鮎寿司街道と呼ばれた国道沿いは、かつて長良川の鮎を熟寿司(なれずし)に仕立てて運んだ道。旧街道沿いの街らしく、建ち並ぶ家々の軒は低く、間口が狭くて奥行きがあります。
餅・和菓子処いなみも、そんな街並みの中の一軒。
現在のご主人・稲見義彦さんは2代目。夫婦2人で店を切り盛りしています。
義彦さんの父親は、岐阜県本巣市出身で大阪の飲食店に働きに出て、岐阜に戻ってからは中津川市の和菓子店で修行。その後、笠松駅の近くで自分の店を開くことに。
現在の場所に店を移転したのは1980年のことでした。以来、街道沿いにある和菓子店として、数多くの銘菓をつくり、地元の人々に愛されてきました。
義彦さんは、一度は一般企業に就職しますが、いつかは和菓子店を継がなければという思いから、同県羽島市にある和菓子店へ修行に入ります。
その2年後、父親が倒れたため急遽実家へ戻ることに。
職人気質の父親の跡を継いで和菓子店を営むのにはいろいろな苦労があったそうですが、いなみのお菓子の美味しさに定評があったことから、無事にのれんをつなぐことができました。
【店舗おすすめ】「桜餅」
いなみから歩いてすぐのところには木曽川が流れており、春になると桜の花見や陽光あふれる川沿いを散歩する人でにぎわうのだそう。
そんな季節の人気商品は、やはり「桜餅」。
関西風の道明寺を使った正統派で、しっとりしたこしあんを包んでいます。いなみの桜餅の特徴といえば、道明寺の色がごく薄い桜色ということ。
「私はこのくらいの色が上品で好きなんです」と義彦さん。日本の桜の代表格であるソメイヨシノの花の色は、確かに薄く、白に近いピンク色。
上品な甘さのこしあんの深い紫色とのバランスがよく、お茶請けにはもちろん、手土産にしたらきっと喜ばれるに違いありません。
店舗情報
- 餅・和菓子処 いなみ
- 笠松駅から歩くこと約15分、旧街道沿いに進むと店舗が見えてくる。木曽川河畔にも近く、数軒隣には、国の登録有形文化財に指定されている杉山邸が。まち歩きとともに立ち寄りたい、地元の和菓子屋だ。季節のお菓子が所狭しと並んでいる風景は、どこか懐かしくホッとした気分になる。