桒原さやか 信州・松本と家族の時間

エッセイスト桒原さやかさんが松本で感じる四季や自然とともに、家族でつくる日々をご紹介

慌ただしい毎日の中で 気づくこと

April 22. 2025(Tue.)

岐阜県出身のライター・エッセイストの桒原(くわばら)さやかさん。「イケア・ジャパン」やWEBメディア&ショップを経営する「北欧、暮らしの道具店」に勤務した後、ノルウェーに移住し約1年半を過ごしました。
現在は、長野県松本市で、スウェーデン出身のご主人と2人のお子さまとともに暮らす桒原さんに、松本での暮らしや家族と過ごす日常について綴っていただきます。

目の前のことに集中するって
むずかしい

散歩をするときは、散歩に集中するようにしている。

そんなのあたりまえでしょうと言われてしまいそうですが、これがなかなか難しいのです。

ちょっと前に年が明けたばかりだと思っていたのに、気がついたらもう4月。
この調子だと、今年もあっという間に終わっていそうです。何か大事なことを忘れているような気がするものの、一日はヒュンと駆け抜けていき、また次の日がはじまります。

木々の間から松本のまちが見える。
天気がいい日は北アルプスも。

本を読んでいたら、「一行三昧(いちぎょうざんまい)」という言葉が目に留まりました。これはもともと禅の言葉で、ひとつのことに専念して励むことを表している言葉なのだそうです。つまり、一度にいろんなことをしようとするのではなく、目の前にあることにひとつひとつ向き合って過ごすこと。そして、それを続けるということ。

自分はというと……
歯磨きをしながら、ついついスマートフォンをのぞいていたり。
食事をしながら、仕事のことがあたまで巡っていたり。
夫と会話しながら、夕飯のことを考えていたり。

ちょっと考えてみるだけで、思い当たることばかり。もしかしたら、同時にいろんなことをしようとしているから、何かを取りこぼしているような気持ちになるのかもしれない。そう思ってからは、何をするにも「一行三昧、一行三昧」と心のなかで唱えながら、過ごしています。

自宅からすぐの山林はお決まりの散歩コース。

先日、散歩をしていたときのこと。まだ地面には落ち葉も多く、歩いているとザクザクと葉っぱの音が聞こえてきます。その音が楽しいようで、子どもたちは足をバタバタと大きく揺らしながら森の中をどんどん進んでいきます。

気になるものを見つけては立ち止まる娘。

すると、突然思いついたように、「かわいいもの探すんだ〜」といろんな形の葉っぱを集めはじめた娘。その横で息子は、枝探しに夢中の様子。長ければ長いほど、かっこいいんだそう。拾ったものを、次々とポケットに入れながら歩いています。

葉っぱが車になったり、枝が帽子になったり。
子どもの想像力に毎回感心する。

葉っぱが車になったり、枝が帽子になったり。
子どもの想像力に毎回感心する。

葉っぱが車になったり、枝が帽子になったり。
子どもの想像力に毎回感心する。

葉っぱが車になったり、枝が帽子になったり。
子どもの想像力に毎回感心する。

ちょっと油断すると、心配ごとが頭によぎってしまうわたしは、大きくスゥーッと深呼吸。

遠くに目をやると、山の輪郭がきれいで思わず立ち止まりました。スマートフォンを家に忘れてきてしまい、「あぁ、カメラ持ってこればよかったなぁ」とぼそっと言うと、「こうやってパチンって、撮ればいいんだよ」と息子。そう言って、目をギュッとつむっています。

「ママもやってみて!」と言われて、さっそく目を閉じてパチッと声に出してみます。すると、確かに撮れたような感覚がありました。

「ね!撮れたでしょう?」と目を輝かせる息子。私がうなずくのを確認したら、またすぐに枝拾いをはじめたのでした。

枝や葉っぱ、石を夢中に集める子どもたち。

ふと子どもたちを見ると、両手に枝を抱えて、ポケットはたくさんの落ち葉でいっぱいに。それでもまだ、宝物さがしに夢中のようで、下ばかり向いて歩いています。

どうやら、見習うべきお手本はすぐ近くにいたようです。

上部へ戻る