クリス・グレンの教えて!グッドジェネレーション(アーカイブ)

海を越えて伝わる
「遠州綿紬」の魅力
有限会社ぬくもり工房
(静岡県浜松市)

January 23. 2024(Tue.)

未来へ繋がる取り組みをおこなっている企業や団体をラジオDJのクリス・グレンさんが訪ねるコーナー。今回は、静岡県浜松市で受け継がれてきた「遠州綿紬(えんしゅうめんつむぎ)」を次代へ残そうと取り組む「ぬくもり工房」を訪ねました。
「遠州綿紬」の製造工程について、また、ぬくもり工房が生み出す商品について、代表の大高旭さんに伺いました。

ー前回までの記事はこちら
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織物のまちの象徴 「遠州綿紬」を後世に 有限会社ぬくもり工房(静岡県浜松市)
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「遠州綿紬」の歴史と特徴 有限会社ぬくもり工房(静岡県浜松市)

生地にしていく最後の工程が「機織り」。

遠州の織物産業が
抱える課題

「遠州綿紬」ができるまでには、さまざまな工程を経ます。
糸を巻き上げて束にする「かせ上げ」
糸を漂白し染め上げる「染色」
糸が切れないようにする「糊付け」
糸巻きへ巻き取る「管(くだ)巻き」
縞の模様になるように糸を並べる「整経」
整えた縞柄が崩れないよう一本ずつ櫛状の穴に通す「経通し(へとおし)」
そして、織機で織っていく「機織り」
それぞれの工程が分業されており、各セクションの職人が手がけます。

今回、浜松市で機屋を営む袴田織布の工場を見学させていただきました。ぬくもり工房の生地はもちろん、さまざまなメーカーから機織りの依頼が舞い込み、十数台の織機が日々、ガチャコンガチャコンという音を鳴らしています。
ご夫婦で機械の前に立つ袴田和男さんは84歳。50年以上この仕事を続けています。年々、職人さんの数は少なくなっている中、袴田さんのような機屋さんは貴重です。
「職人さんの火を絶やさないようにするのも、私たちの仕事だと思っています。パートナーである製造会社と力を合わせて、織機を確保したり、将来若い職人さんが働ける場所をつくろうと取り組んでいます」(大高さん)

左から「管巻き」「整経」「経通し」の様子。
袴田織布にて、作業を行う袴田和男さん。
織機が心地よいリズムを刻みながら布を織る。
ショップ店頭には、さまざまな商品が並ぶ。

スタッフからの提案やコラボで
商品づくり

「ぬくもり工房では、どのように商品を開発しているのですか?」(クリスさん)
「商品開発は、特別なセクションがあるわけではなく、スタッフ皆がアイデアを出し合い生み出しています」(大高さん)
人気ナンバーワンはハンカチです。豊富な色と柄、使うほどに柔らかな風合いとなる遠州織物ならではの良さが感じられる商品です。名入れができる点も好評です。

「商品開発は難しい。いつも悩んでいますね。計画的につくったものより、ふとしたタイミングでほかの企業とコラボレーションした商品がロングセラーとなるケースも多いです」(大高さん)
例えば、浜松の扇子専門店と共作した扇子や、大高さんが愛用していたスリッパの加工会社とともにつくったスリッパは、ぬくもり工房の主力商品となっています。

さらに、星野リゾート「界 遠州」ではホテルの全館全部屋で「遠州綿紬」が使用されています。各部屋ごとに雰囲気を変え空間を楽しめるようになっており、宿泊客向けのノベルティやお土産としても人気です。

星野リゾート「界 遠州」とのコラボレーション紹介
https://nukumorikoubou.com/collaboration

主力商品の「はんかち」。
右の「富士」は人気の柄。
フィット感が抜群だというスリッパ。
もちろん、着物のオーダーも可能。

海外まで届き始めた
「遠州綿紬」

ぬくもり工房の創業時は、広く知られていなかった「遠州綿紬」。まずはいろいろな人に商品を手に取ってもらおうと、人の集まるサービスエリアやホテルなどに、土産物や贈答品として商品を展開していきました。
それから実店舗を持ち、販路を増やし、今では口コミで海外から生地の買い付けにバイヤーが訪れるようにもなりました。
「フランス、イギリス、オーストラリアなど、海外から法人のお客さまが洋服や小物をつくる材料にと買いに来られます。日本らしい柄が特徴的なので、多くを語らずとも、見て手に取ってもらうだけで魅力を感じていただけています。そこから、遠州という地域が温暖な気候で綿栽培に適し、織機の発明の歴史があるといった歴史的な話をすると関心を持っていただけます」(大高さん)
「日本の伝統は奥深く魅力的。たくさんの国にぬくもり工房の遠州綿紬が届くと良いですね」(クリスさん)


次回は、ぬくもり工房が見据える未来やそのためにおこなっている取り組みについて伺います。

「海外の方には、伊勢神宮との関係についても
非常に関心をもってもらえます」と大高さん。
有限会社ぬくもり工房
2006年4月創業。浜松市で江戸時代から伝わる遠州織物を「遠州綿紬(えんしゅうめんつむぎ)」としてプロデュース。商品の開発・販売を通じ、地元の織物産業を残し、広げるべく事業をおこなっている。浜松市にある直営店のほか、ホテルやサービスエリアなどでも販売。また地域の小学校の家庭科の授業に生地を提供するなど、遠州織物の普及にも務めている。

静岡県浜松市浜名区染地台3-12-25
053-545-6491
https://nukumorikoubou.com/
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