クリス・グレンの教えて!グッドジェネレーション(アーカイブ)

【番外編】
“しるす文化”を追求する
モノづくり企業
シヤチハタ株式会社
(愛知県名古屋市)
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March 11. 2024(Mon.)

「交流Style」の前身「交流」で、過去にご紹介した企業の今を探ります。
2021年3月にご登場いただいた、シヤチハタ株式会社をご紹介。
印章(ハンコ)を主軸に、便利で楽しい商品を世界に送り出している企業です。
今回は、その歴史と事業内容について振り返ります。

過去の紹介記事はこちら
【「交流」no.119 P10〜12】

創業当時の営業所。

1970年の大阪万博でも活躍
スタンプ台いらずの
スタンプを開発

「シヤチハタ」といえば、朱肉がなくても何度でも捺印ができる「ネーム印」でお馴染みです。多くの人が当たり前のように使っているこの便利なハンコには、創業約100年というシヤチハタ株式会社が誇るモノづくりの技術が集積されています。
1925年に舟橋金造氏・高次氏の兄弟がスタートさせた舟橋商会がシヤチハタ株式会社の源流です。当時としては画期的な、インキの補充が必要ない「万年スタンプ台」を開発・販売していました。
その後、1965年にはインキが内蔵されたスタンプ台がいらない「Xスタンパー」を発売。続いて1968年にネーム印「Xスタンパー ネーム」が発売され、両者はロングヒット商品に。1970年の大阪万博では、Xスタンパーがパビリオンの記念スタンプに採用されました。
確かな技術力で、“しるす文化”を牽引する日本を代表する企業です。

発売当時の「万年スタンプ台」。
オフィスで親しまれている
「Xスタンパー」の初期モデル。

さまざまなニーズに
応えてきた
インキとゴムの技術力

クリス・グレンさんが取材に訪れたのは2021年。シヤチハタのさまざまな商品の研究・技術開発から生産までをおこなう稲沢工場におじゃましました。
クリスさんは以前、「Xスタンパー」のプロモーションで声の出演をしたことがあるそう。またシヤチハタの筆記具「アートライン」の大ファンで30年以上愛用しているなど、実はシヤチハタとは縁があって取材はとても盛り上がったのでした。

シヤチハタが優れているのは、なんといってもインキとゴムの技術。紙だけではなく、金属やプラスチックなど、押す対象が多様化するにつれ、ニーズに対応できるインキを開発してきました。また、毎回押すごとに適量のインキが出て捺印できる印面のゴムの開発もおこなわれてきました。

工場では、印面を加工するレーザー機器やネーム印の組立工程を見学しました。
「水以外押せないものはないという技術力に驚きです」とクリスさんも感嘆していました。

印面のゴムは、塩をまぜて形成し、
あとから塩を抜くことでスポンジ状に
してインキを染み込ませる。
ネーム印の構造がわかる断面図。

アイデア商品や
デジタル対応で
時代を乗り越える

“押す”アイデアから、印章以外にも多くの商品が生み出されてきました。その中のひとつで、2020年からのコロナ禍で注目されたのが「おててポン」。手に押して、印影が消えるまで手を洗うことで上手な手洗いができるという子ども向けの商品です。
一方、コロナによる行動制限は、オフィス需要の低迷を招き、文具業界全体に影響を与えました。制限緩和後は回復傾向にあるそうですが、在宅勤務・リモートワークが一気に浸透したことやペーパーレス化、企業・学校のデジタル化が進むなど懸念材料はあるようです。
しかし、オフィスのデジタル化を見据えて同社が取り組んできた電子決裁サービス「Shachihata Cloud」が大きく伸びを見せたそう。1995年からデジタル商品を提供してきた積み重ねが実を結んでいます。

Shachihata Cloud
https://dstmp.shachihata.co.jp/

コロナ禍で需要が上がった「おててポン」。
手に押すという行為も楽しい。
シヤチハタ株式会社
1925年創業の舟橋商会が起源。インキが乾かない「万年スタンプ台」を開発・販売。1941年にシヤチハタ工業株式会社設立。スタンプ自体にインキを浸透させたXスタンパーやネーム印といったスタンプ製品や筆記具などで世界にもシェアを広げている。現社名は1999年より。(写真は稲沢工場)

愛知県名古屋市西区天塚町4丁目69(本社)
052-523-6935
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