ただのリラクゼーション施設ではない
森の中のサウナ
株式会社LEO
(三重県菰野町/愛知県名古屋市)
April 01. 2025(Tue.)
未来へ繋がる新しい取り組みをおこなっている企業や団体を訪ねるこのコーナー。
今回は、愛知県名古屋市に本社を置く「株式会社LEO(レオ)」。ゼロの状態から事業を起こすアントレプレナー(起業家)の育成やスタートアップ支援、事業創造のための施設運営などをおこなっています。三重県菰野(こもの)町にある同社運営のサウナ施設「AOU no MORI」で、代表の粟生万琴(あおう まこと)さんにお話を伺いました。
AOU no MORI ~ CO-CREATION SPACE ~
https://leopards.co.jp/service/aounomori


スタートアップ支援企業が
運営する野外サウナ
木々に囲まれ、野鳥のさえずりが聞こえる自然豊かな場所に、小さなドーム型の小屋と煙突が伸びるテントが。実はここ、野外サウナが楽しめる施設なのです。
運営しているのは、株式会社LEO。名古屋市に本社を置き、企業などの新規事業創出や起業家教育のサポートをおこなっています。
「自分の出身地である三重県で、新しいイノベーションのヒントになるような場所をつくろうと考えました」と粟生さん。
コンセプトは“CO-CREATION”。皆でこの場所を共創していくことを念頭に置き、名古屋工業大学や三重大学の学生たちと手作りで設営しました。
訪れた人は、仲間や同僚、ビジネスパートナーとサウナで胸襟を開きながらコミュニケーションができます。信頼関係を深め、サウナで身も心も、そして頭もスッキリした状態でミーティング。または、打ち合わせの前後のレクリエーションとしてサウナを満喫。
いつものオフィスとは違う、居心地良いワークスペースで意見交換をしたり、焚き火を囲んで語らったりすることで、新たなアイデアづくりへと繋げられるのです。
サウナは、パラシュートの縫製・製造からスタートした海外のアウトドアメーカー「EX-PRO」社のもので、4~5人はゆったりと入れる大きさ。水風呂や涼めるデッキも完備しています。


自然環境だけじゃない
施設のみどころ
「AOU no MORI」は完全貸切で利用できる施設です。
敷地内にある、尖った屋根のドーム型をした小屋も目を引きます。わずが数時間で施工できてしまう「インスタントハウス」で、名古屋工業大学と株式会社LIFULLが共同開発したものです。Wi-Fi環境はもちろん、プロジェクターやモニターなども整えられており、ミーティングルームとして利用できるほか、包まれるようなドーム型の空間はくつろぎの場にも。
また、サウナで使用するハーブは、名古屋大学出身で宇宙で農業を目指すスタートアップ企業・株式会社TOWINGの高機能バイオ炭で育てています。
「スタートアップ企業の取り組みや新しい技術を体感できる場所でもあります。ここをきっかけにそれら技術や商品が広まっていけば良いし、提供している側は実際に運用することで改善点やお客さまの反応がフィードバックされる社会実証の場として活用できます」(粟生さん)


内部は天井が高く、広く感じる。


オープンエアの水風呂が心地良い。
“好き”から始まった
サウナづくり
そもそも、なぜ「サウナ」なのか。それは、粟生さんご自身の「やってみたい」という思いから始まりました。
「東京で働いていたときに、サウナブームが来ました。その頃、夜仕事終わりにお酒を飲んで、また朝からバリバリ仕事をするという生活はもう年齢的に合わなくなってきていて、終業後はサウナに行ってリフレッシュして、次の日の朝スッキリして仕事に取り掛かるといったワークスタイルに。それですっかりサウナ好きになって名古屋に戻ってきたら、女性が入れるサウナが少ない。じゃあ自分でつくってしまおうと。同時に、出身地である三重県で何か役に立つことができればという思いもあり、三重県からの支援も受けられるということでいろいろなご縁やタイミングが重なり実現しました」(粟生さん)
接客の経験もない素人集団でのスタートしたが周囲の力添えもあり、2021年4月にオープンしました。
「コロナ禍でのスタートとなりましたが、自然の中で、しかも完全貸し切りのプライベート施設ということもあり週末はほぼ予約が埋まる状態のままオープンから現在まで運営してきました」(粟生さん)


サウナハットは粟生さんの手づくり。
いずれもレンタル可能。


新たなもの・ことを
生み出すための「ばづくり」
LEOの事業は、大きく「ひとづくり」「もの・ことづくり」「ばづくり」「まちづくり」に分けられます。
「当社の主たる仕事は新規事業コンサルティングです。つまり、事業をつくる『もの・ことづくり』と事業をつくる人を育てる『ひとづくり』です。それらに繋げるための『ばづくり』のひとつにAOU no MORIがあるのです」(粟生さん)。
2019年から、名古屋市西区・那古野で、廃校となった小学校を活用したスタートアップやベンチャーの育成拠点「なごのキャンパス」のプロデュースを手がける同社。この「なごのキャンパス」に続く「ばづくり」として、「AOU no MORI」が生まれました。まちなかにあるインキュベーション施設と、自然のなかにある「共創」がテーマのリラクゼーションスポット。対象的な「ば」ですが、いずれも新しい事業や価値を生み出すためという目的は同じです。




誰もが新しいことに
チャレンジできる社会に
LEOの役割は、「新しいビジネスに誰もが挑戦できる社会をつくるために寄り添う」ことだと粟生さん。誰もがチャレンジできて、失敗を笑わず否定せず、そのチャレンジに対して皆が寛容で助け合える、それがLEOが目指す社会です。
その背景には、代表である粟生さんの経歴が色濃くあります。
三重県に生まれ、中学校でプログラミングの授業を受けたことをきっかけにコンピュータを学びたいと15歳でアメリカに留学。大学を出てエンジニアとして就職しますが、ビジネスやマネジメントの経験がしたいと転職。そこで、営業職として実績を積み、数々の新規事業の立ち上げを経験しました。
また出産を経て、当時はまだ事例がなかったリモートワークを提案し、新しいワークスタイルのロールモデルにもなりました。
その後、今度はCOOとしてAIベンチャーの起業に参画。2020年に、地元である中部地域へ戻ってきました。
そこで、多くのスタートアップの経験を持つ粟生さんに、インキュベーション施設である「なごのキャンパス」のプロデューサーのオファーが舞い込むのです。
「なごのキャンパスという『ば』ができ、新しくビジネスを始めたいという人が集まり『こと』が生まれ、さらに成長するための『ひと』づくりをおこなうという流れができました」(粟生さん)


起業家の精神や実践を
小学生が積極的に学ぶ
「ひとづくり」という部分で、粟生さんは教育分野にも携わっています。
現在、名古屋大学の客員准教授、武蔵野大学の教授として教鞭を執り、学生たちにアントレプレナーシップ教育をおこなっています。
また、夏休み限定で、名古屋市主催の小学生向けの起業家卵塾、中学生向けのビジネスプログラミングワークショップ、高校生向けのイノベーションユースキャンプといった起業家教育のサポートを企画しています。
「中部地域は保守的とも言われますが、Z世代やα世代の価値観はもう全然違います。将来の進路に、起業家という選択肢があるということが浸透すれば、きっと新しい時代に合ったビジネスを生み出すリーダーが世界に飛び出して行ってくれるはず。中部地域の未来は明るいですよ」(粟生さん)




サウナ施設を
「まちづくり」に活用
LEOの事業でまだご紹介していないのが「まちづくり」。それを体現したのが、名古屋駅から徒歩圏内、「なごのキャンパス」のすぐ近くに2022年8月にオープンした「NAGONO WORKBAR & SAUNA」です。ここも「AOU no MORI」と同じサウナ施設ですが、円頓寺本町商店街の活性化に繋げたいという目的で立ち上がりました。
「バーがあるワーキングスペースとサウナが併設されています。非日常の中で、何かが生まれるきっかけになるような体験をしてほしいという点はAOU no MORIと同じ。アクセスが良いので、大手企業のワークショップや研修に使われることもあります。そういった人の流れをつくることと、ここではあえて食事は出しておらず、商店街のお店からケータリングを注文してもらうというかたちで街に貢献しています」(粟生さん)
NAGONO WORKBAR & SAUNA
https://leopards.co.jp/service/workbarsauna






WEBミーティング用の小部屋もある。
可能性も夢も
広がるばかり
「やったことがないことをやるのは、大変だけど楽しい」と粟生さん。
「会社員時代には岐阜で音楽フェスを企画して実現させたり、今も、ある製造業の企業とイチゴづくりに挑戦したり。私のイスラエルの友人は、パイロットであり医師であり起業家でもあります。これからの時代はそんなふうに多様に柔軟に生きていくこともできる。医師になって目の前の患者さんを幸せにするのは素晴らしいことです。一方で、その技術を持ちながら起業して、医学を発展させて社会に貢献するという選択肢もある。どちらかを選ぶのではなく、両方やったっていい。そんな話を学生のみなさんにはしています」(粟生さん)
今後のLEOについては「まず、新しい事業をつくり出せるメンバーを社内で育てたい」とのこと。さらに、より地域に根ざした活動に意識が向いているようです。
「今後は原点回帰で、この日本、しかも中部地域で、三重県で、名古屋市で、といった具合に、それぞれの地域にイノベーションを創出できる企業になっていきたいと思っています」(粟生さん)
最後に、個人的な夢をお聞きすると…
「三重の土壌を活かし、なおかつ最新のテクノロジーを使った農業をやりたい!と考えています。何を栽培するかは検討しているところですが、例えば ぶどう畑とワイナリーをつくることで地元の就業支援にもつなげるといったアイデアもあります。いろいろな大学の技術を組み合わせて、高温多湿でも育つ苗を開発して、毎年収穫して醸造もできる最先端ワイナリー。夢が膨らみます」(粟生さん)




- 株式会社LEO
- 2020年事業開始。「つくることを通じ前進する」をミッションに、起業の新規事業コンサルティングや、サービス立ち上げに伴うソフトウェア開発、起業家人材の育成サポート、学生向けのアントレプレナーシップ教育、自社による新しいサービスの創出をおこなっている。
- 愛知県名古屋市西区那古野2-14-1 なごのキャンパス