宇宙でおいしい野菜を
育てたい!
株式会社TOWING
(愛知県刈谷市/名古屋市)
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May 24. 2023(Wed.)
未来へ繋がる新しい取り組みをおこなっている企業や団体をラジオDJのクリス・グレンさんが訪ねるコーナー。今回は、宇宙での食糧生産を目指すスタートアップ企業「株式会社TOWING(トーイング)」をご紹介します。愛知県刈谷市にある同社の研究農園で、CEOの西田宏平さんに起業のきっかけについて伺いました。
目指すは、宇宙と地球の
食糧問題解決!
株式会社TOWINGは、2020年2月に設立された名古屋大学発のスタートアップ企業です。ミッションは「持続可能な超循環型農業を地球・宇宙双方で実現する」こと。宇宙での農業とは、まさに未来社会を描く夢のある事業です。
キーとなるのは「土壌」。植物の炭などのバイオ炭(多孔体(※))に微生物を定着させる「高機能ソイル技術」を活用し、人工土壌をつくることで、月や火星など他の惑星での農作物の栽培を可能にしようという取り組みです。
またこの研究は、地球上での農業をサステナブルに発展させる可能性も秘めており、地球の食糧問題にも大きく貢献しうるのです。
TOWINGが実証をおこなっているのが、刈谷市にある研究農園です。ここでまず、CEOの西田宏平さんに同社の設立のきっかけや思いを伺いました。
※多孔体:内部に細かな空洞や穴を持つ物体
兄弟で夢中になった
あの漫画作品が原点
「宇宙に興味を持ったのは、私が中学生の頃に連載が始まった『宇宙兄弟』という漫画でした」(西田さん)
もともとはプロ野球選手を目指す野球少年だった西田CEO。しかし限界を感じて、ほかの道を模索していたときにこの作品と出会い、夢中になったといいます。同時に、弟の亮也さんも『宇宙兄弟』の虜に。兄弟揃って、将来は宇宙に携わる仕事がしたいと思うようになったそうです。
亮也さんは現在、名古屋大学大学院環境学研究科博士課程に在学しながら、TOWINGのCTO(最高技術責任者)を務めており、当時の兄弟の思いは現実のものとなったのです。
「『宇宙兄弟』とめぐり合って、まさに“リアル宇宙兄弟”がはじまったのかもしれませんね」(クリスさん)
地元の高校を卒業すると、名古屋大学理学部地球惑星科学科に入学。宇宙や地球の成り立ちになどについて学び研究する、憧れの世界に足を踏み入れました。
「宇宙」とつながった
子どもの頃の「農」経験
一方で「農業」という面については、祖父母が農家だったことが大きく影響していると言います。
「子どもの頃は、畑からトマトをもいで、サラダにして食べるといった生活をしていて、その味が当たり前だと思っていました。大学生になり親元を離れ自炊するようになり、スーパーで買った野菜は、同じトマトでも味が全然違っていました。この差は何だろう?と興味が湧きました」(西田さん)
ノスタルジーではなく、“なぜ?”を解き明かしたいという研究者の目線。そこから「土」が作物に大きな影響を与えていることを知りました。
同時に当時、在学中の名古屋大学で、宇宙で農業をおこなう技術に取り組んでいる研究室があることを知り門をたたきました。
頼もしい仲間を得て
起業へ
こうして、「宇宙」と「農業」という西田CEOの中にあった2つの興味がひとつになりました。
新鮮な野菜を宇宙で育て、食べられるようにしたい。
研究者としてこの技術を追求する道もありましたが、実際に社会に実装していくには、ビジネスとして立ち上げなければならないという思いに至ります。
「大学卒業後、農業分野の研究開発も行っている大手メーカーに就職した後、そこで新規事業として立ち上げました。社内外のコンペに参加する中で、優秀な方々に巡り会うことができました」(西田さん)
そうして2020年2月に株式会社TOWINGを設立。CTOの弟・亮也さんをはじめ5名のコアメンバーとともにスタートしたのです。
次回は、TOWINGの事業の軸となっている商品「宙炭(そらたん)」とその生成に必要な「高機能ソイル技術」についてお聞きします。
- 株式会社TOWING
- 2020年2月設立。「持続可能な超循環型農業を地球・宇宙双方で実現する」をミッションに高機能バイオ炭「宙炭(そらたん)」の製造・販売や「宙炭」を使った環境に優しく生産性の高い農業システムの普及、また宇宙での食糧生産の実現を目指している。
愛知県名古屋市南区前浜通7-1-2(オフィス)
050-5849-1414 - https://towing.co.jp/