土壌問題を解決する
「宙炭(そらたん)」とは?
株式会社TOWING
(愛知県刈谷市/名古屋市)
(2/4)
May 24. 2023(Wed.)
未来へ繋がる新しい取り組みをおこなっている企業や団体をラジオDJのクリス・グレンさんが訪ねるコーナー。今回クリスさんが訪ねたのは、宇宙と地球での持続可能な農業を目指すスタートアップ企業「株式会社TOWING(トーイング)」の研究農園(愛知県刈谷市)。2回目となる今回は、同社の主軸商品「宙炭(そらたん)」について、CEOの西田宏平さんにお話を伺いました。
ー前回の記事はこちら
宇宙でおいしい野菜を育てたい!株式会社TOWING(愛知県刈谷市/名古屋市)(1/4)
「高機能ソイル技術」から
生まれたオリジナル商品
「宙炭(そらたん)」
TOWINGの事業でキーとなる「高機能ソイル技術」とは、植物などから生成されるバイオ炭に微生物を付加・培養させる技術です。多孔体(※)であるバイオ炭の無数に空いた小さな穴に土壌微生物を住まわせることで、人工的に土壌をつくるのです。
例えば、月に人が住むとなると、食糧をどのように供給するかという大きな問題が生じます。作物を栽培するために地球から土を運ぶとなると、労力も費用も莫大にかかってしまうため、現地での“土壌づくり”が必要です。そこで力を発揮するのが「高機能ソイル技術」です。
「多孔体に微生物を付加・定着させる技術は、名古屋大学と国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)が開発したものです。それを応用して、良い菌を入れてより高い機能を付与し、量産を可能にして実用化しました」(西田さん)
そうして生まれたのがTOWINGの主力商品である高機能バイオ炭「宙炭(そらたん)」です。
※多孔体:内部に細かな空洞や穴を持つ物体
「宙炭(そらたん)」が
土壌問題を解決する
「宙炭」の元となるバイオ炭は、地球温暖化防止対策に有効であると注目されています。
原料となるもみ殻や家畜の糞は、本来であれば廃棄・焼却処分されるもので、未使用バイオマスと呼ばれています。未使用バイオマスをアップサイクルして製品化することで、焼却によるCO2の排出が減り、脱炭素に貢献します。さらに、バイオ炭は原料の植物が成育の過程で吸収していたCO2を閉じ込めるといった面で、農園での炭素固定にも寄与します。
「宙炭」は、このバイオ炭の中に土壌由来の微生物を住まわせ、有機肥料と合わせたもの。
「日本の農業はこれまでも、そして今も、化学肥料に頼ってきました。化学肥料を作る過程で化石燃料が使われており、結果的に農業は多くのCO2を排出しています。また、有機肥料を使える土壌に転換するには時間がかかるうえ、その間は作物の生産ができなくなってしまいます」(西田さん)
通常、作物が育つ土壌を作ろうとすると3〜5年を要しますが、TOWINGの「宙炭」を使うと約1ヶ月で良質な土壌になるとのこと。
休耕田の活用がしやすくなったり、連作ができるようになったり、“時間の短縮”は農業にとって大きなメリットとなりえるのです。
「『宇宙農業』を目指し開発してきた技術が、地球の脱炭素化への貢献や食料生産をサステナブルに変えていく可能性を秘めていたんですね」(クリスさん)
誰もが実用できるように
試験導入を重ねる
現在、実際に全国の農家で「宙炭」を利用した作物栽培システム「宙農(そらのう)システム」の試験導入がおこなわれています。
「主に、農業法人のみなさんにご協力いただいています。そこでできた野菜の販売も少しずつですが始まっています」(西田さん)
現場からは、どのような声が上がってきているのでしょうか。
「大きく2つあります。一つは、『宙炭』を使うことで収穫量が増え、作物の品質も向上するといった効果が表れているという点です。だいたい20%から、多いところだと約70%も収穫量が増えたところがあります。一方で、『宙炭』を散布する装置が必要だったり、農家さんが効果的に使えるようになるには勉強していただかなくてはならなかったりと、ハードルを感じられるところもあります。我々がノウハウをどのように伝えればよいのかも含めて、試験導入の中で知見を積み上げているところです」(西田さん)
次回は、弟の西田亮也CTOにもご登場いただきお話を伺います。
- 株式会社TOWING
- 2020年2月設立。「持続可能な超循環型農業を地球・宇宙双方で実現する」をミッションに高機能バイオ炭「宙炭(そらたん)」の製造・販売や「宙炭」を使った環境に優しく生産性の高い農業システムの普及、また宇宙での食糧生産の実現を目指している。
愛知県名古屋市南区前浜通7-1-2(オフィス)
050-5849-1414 - https://towing.co.jp/