まるで地形の一部
アートも建築美も愉しめる
岡崎市美術博物館
October 19. 2023(Thu.)
“美しい美術館”はそこにある作品だけでなく、建物全体でアートの魅力を教えてくれる。
今回は、愛知県岡崎市にある「岡崎市美術博物館」へ。建築家の栗生明(くりゅうあきら)氏が設計を手がけた建物は、周囲の地形の高低差を活かした建築や全面ガラス張りのアトリウムが特徴的だ。
ガラス張りの
エントランスを抜けて
斜面に沿って広がる内部へ
名鉄名古屋本線・東岡崎駅からバスに乗って、岡崎市のほぼ中央に位置する「岡崎中央総合公園」へ向かう。体育館や野球場などを有する敷地は約190ヘクタールで、バンテリンドーム ナゴヤ39個分という巨大な公園だ。この中に「岡崎市美術博物館」がある。
開館は1996年。通称「マインドスケープ(心を語る)・ミュージアム」と呼ばれており、世界で初めて「心」をテーマに開館した美術博物館だ。
設計者である栗生明氏は、代表作である「植村直己冒険館」をはじめ、「国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館」、「平等院鳳翔館」などを手掛けてきた。建物を地中に埋めた作品など風景や環境に配慮した建築が多い。
「岡崎市美術博物館」もエントランスは2階にあたり、階下に展示室や収蔵室が自然地形の中に埋め込むように配置されている。
エントランスのアトリウムの高さは約12メートル。高い天井からガラス越しに日差しが降り注ぎ、美しく反射している。
エントランスから階下へ。1階部分には空間ボリュームの大きい展示室や収蔵庫のスペースが広がる。
「マインドスケープミュージアム」の名の通り「心」を伝える美術品・博物資料が幅広く収蔵されている。
正面入り口の反対側、南出口から外へ。
ガラス張りの空間から一変。白いコンクリート壁や階段が目に飛び込んできた。
スロープと階段が複雑に組み合わさった壁面。外の景観を楽しみながら、上り下りできる。
斜面に沿って、ランドスケープと一体化した建築は、その巨大なスケール感と周囲の静寂が相まって荘厳な印象だった。“心地よい違和感”とでもいうような不思議な感覚を覚えた。
エントランスと同じ2階にあるのがレストラン「YOUR TABLE」。南側斜面の頂上にあるため、抜群の眺めを楽しみながら食事ができる。
エントランス同様、レストランにも積極的に使われている大きなガラスの壁。透過性の高いガラスを多用することにより、自然環境との一体化を目指したという。
「岡崎市美術博物館」をあとにし、眼下に見えた「恩賜池」へ。
公園内の散策もあわせてゆったりとした時間を過ごすことができる場所だ。
ガラスに囲まれた“箱”が光や陰を取り込み生み出す空間の妙、そして地形に溶け込む建築は、自然と調和しながらも、その存在感がひしひしと伝わってくる。
この建物を様々な角度から眺めるだけでも、有意義な時間を過ごすことができるはずだ。
MAP
〒444-0002
岡崎市高隆寺町字峠1(岡崎中央総合公園内)