おとなの相談室

知っているようで知らなかった悩みに、専門家がお答えします

ご家庭で簡単に包丁研ぎ
~料理上手は包丁から~

September 26. 2024(Thu.)

毎日料理をする人にとっては、“相棒”のような存在の包丁。切れ味一つで、食材の見た目や美味しさが使い心地一つで料理の楽しさが変わります。「こだわりたいけれど、種類が多く選ぶポイントが分からない」という方もいるのでは?「岐阜関刃物会館」の専務理事・桜田公明さんに、初心者に向けた包丁の選び方をレクチャーしてもらいます。3時間目は、愛用の包丁を長く大切に使うためのメンテナンスについて指南してもらいました。

ー1時間目の記事はこちら
包丁の基礎知識を知ろう!~料理上手は包丁から~
ー2時間目の記事はこちら
自分に合った包丁を探そう~料理上手は包丁から~

協同組合岐阜関刃物会館 専務理事
桜田公明
関市役所商工課で刃物事業者に関わってきた経験を生かし、2021年3月に移転オープンした刃物の展示施設「岐阜関刃物会館」の専務理事として、関の刃物の歴史や魅力などを伝えている。岐阜県刃物産業連合会 事務局長、日本輸出刃物工業組合 専務理事ほかも兼務している。

3時間目

包丁を長く使うための
メンテナンス方法

切れ味の良い包丁が
料理を美味しくする

切れ味の落ちた包丁を使ったことで、食材が上手く切れずストレスになった…という経験はありませんか?
力任せに切ることで食材に亀裂が入ってしまい、料理の見た目が悪くなったこともあると思います。それだけではなく、食材を潰してしまうことで、鮮度や味わいの低下にもつながるといわれています。おいしい料理を味わうために、包丁の切れ味は非常に重要です。

毎日使い続けていると切れ味が悪くなったことに気づきにくいかもしれませんが、トマトの皮がスパッと切れなくなったら、刃先が丸くなっている証拠。刃を研ぐことをおすすめします。

初心者が包丁を研ぐために
揃える道具は2つ

包丁の切れ味を保つためには、定期的に刃を研ぐ必要があります。道具をそろえれば、ご家庭でも研ぐことができます。


必要な道具を紹介します。

・砥石(奥)…刃物の切れ味を戻す道具で、一般的には人工の石でできています。

粗さにより種類が分かれますが、サビを落としたり、欠けた刃を修繕したり、刃の形を修正したりできる荒砥石がおすすめです。初心者の方は、写真のような大きめ(Lサイズ)の砥石を選びましょう。包丁と接する面が大きいほうが、一度に研げて角度がずれないため使いやすいと思います。


・包丁研ぎホルダー(手前)…包丁の背につけて研ぐことで、砥石と包丁の角度を一定に保って研ぐことができるようになります。初心者の方は持っておくと便利です。

道具はホームセンターなどで手に入ります。

ご家庭でも実践できる
包丁の研ぎ方をレクチャー

三徳包丁をはじめとする両刃の包丁を研ぐ方法を紹介します。ご家庭でも簡単にできますよ。

STEP1.
砥石を水に浸し、よく湿らせます。

STEP2.
右手に包丁を持ち、右側の面(表)の刃先が手前に向くように置きます。左手の指で刃物の先端を押さえ、砥石との角度を45~60度に保ちます。

STEP3.
刃の部分だけが砥石にふれるようなイメージで、刃を砥石に当てたまま約15度の角度で包丁の背を持ち上げます。最初は、角度を維持するために包丁研ぎホルダーなどを使うと簡単ですよ。

STEP4.
包丁の角度をキープしたまま、砥石の上を前後にスライドさせます。奥に押し出すときに力を入れ、手前に引く時は力を抜くのがポイント、先端のほうから根元まで、各所を合計20回ほど研いでいきます。

STEP5.
包丁がうまく研げたかどうかは、刃に包丁の削りかす「カエリ」がついているかで判断します。刃先に触れないよう注意しながら、包丁の腹を指でなぞってみてざらっとしたひっかかりがあれば、「カエリ」です。

STEP6.
刃を裏返して表と同様に20回ほど研ぎます。今度は奥から手前に引くように。奥に戻る際には力を入れずに軽く動かします。


STEP7.
「カエリ」をキッチンペーパーや新聞紙などで取り除けば完了です。

包丁を長持ちさせるコツと
劣化による寿命

包丁を長持ちさせるコツは、定期的に研ぐことです。きちんとお手入れをしていれば、5年~10年が買い替えの目安です。

三徳包丁で生のかぼちゃや魚の太い骨を切るなど、薄い刃の包丁で硬いものを切ってしまうと、刃こぼれの原因になるので注意が必要です。

ハンドルが木製の場合、刃の寿命よりハンドルの寿命が短いことがあり、ハンドルが摩耗してしまうことが買い替えのきっかけになることもあります。食器洗い洗浄機の熱で劣化が早まってしまうので、なるべく手洗いしましょう。

不要になった刃物は、全国のホームセンターや刃物小売店約500店舗に設置されている回収ボックスへ。回収された刃物は毎年11月8日(刃物の日)に岐阜県関市で行われる刃物供養祭で感謝の意を込めて供養し、その後鋼材メーカーでリサイクルをしています。
料理の相棒になってくれる包丁。自分に合ったものを見つけて、愛用しましょう。

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