気ままにカフェめぐり

年間300件以上のお店をめぐる編集者・かにぃさんが中部地域のカフェをご紹介

伝統と版画を未来につなぐ
古都高山の歴史ある喫茶店
飛騨版画喫茶・ばれん(岐阜県高山市)

February 25. 2025(Tue.)

古き良き歴史ある空間で
美しい版画と甘味を楽しむ

国内有数の観光地として知られる飛騨高山。「ミシュラン・グリーンガイド・ ジャポン」で三つ星に選ばれた風情ある町並みは日本人だけではなく海外の人々をも魅了し 、日々多くの観光客が訪れている。そんな高山観光の中心地、上三之町(かみさんのまち)にある「飛騨版画喫茶・ばれん」。築180年の建物は古い町並みの中でも最も古く、往時の面影を今に残している。

豊かな大自然に囲まれた飛騨高山は、古くから木版画が栄えた町としても有名で、今でも子どもたちは学校で版画を習い、その腕を磨いているという。その版画がこの店の特徴で、店名の由来にもなっている。引き戸を引いた瞬間、吹き抜けに飾られた大きな版画や壁一面に飾られた多彩な作品が目に飛び込んできて、さながら美術館のよう。どこか懐かしい版画の数々は、古き良き空間に温かな彩りを添える。「地元作家の作品を集めました」と話す店主。精緻に描かれた作品の一つひとつに味わいがあり、じっくりと鑑賞しながらその世界観に心を遊ばせるのも楽しい。

版画を愛でつつ待っていると、人気スイーツの楪子(ちゃつ)甘味が運ばれてきた。楪子とは、精進料理で使用される銘々皿であり、「高山では祭りの際にふるまわれる料理に使用されます」と店主。飛騨高山の伝統工芸品である春慶塗の器に、北海道十勝の大納言小豆を使って炊き上げた自家製餡と白玉、わらび餅がまるで宝石箱のように彩りよく盛られている。餡はほどよく上品な甘さで、素朴な味わいの白玉やわらび餅ともよく合う。
おいしい餡に魅了され 、店主が「小倉トーストに慣れ親しんだ名古屋の人でも驚く」と太鼓判を押す小倉トーストも注文。腕利きで有名な地元のパン職人がつくる食パンに、たっぷりと盛られた小倉餡。かじると餡の優しい甘さとパンのほどよい塩味、香ばしい香りがふわっと広がり、幸福な気分に。
「今流行りの映えるメニューではないですが、手づくりならではのおいしさと価値ある版画、歴史ある空間を楽しんでもらえたら」という店主の言葉にうなずきながら、ゆったりと過ごす豊かな時間。飛騨高山を訪れたら、ぜひ立ち寄ってみたい一軒。

店内の吹き抜けにある大きな版画は、オープン当時に地元の中学校の卒業生(左上)と先生(右上)から寄贈された作品。他にも地元作家の作品を多数展示・販売する。
2階の窓から古い町並みを行き交う人を眺めつつ静かな時間を満喫。
楪子に餡、白玉、わらび餅、甘栗を盛った楪子甘味はこのお店の看板メニュー。海外からの観光客にも根強い人気を誇る。
厚めのトーストでつくる小倉トーストは食べ応えがあり、香り高いコーヒーとの相性も抜群。
店内では版画作品のポストカードも販売している。飛騨高山のお土産にぴったりだ。

店舗情報

飛騨版画喫茶・ばれん
高山市の古い町並、重要伝統的建造物群保存地区にある純喫茶。店内では「飛騨版画」を展示、販売している。

MAP

〒506-0846岐阜県高山市上三之町107
電話番号:0577-33-9201
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