
年間300件以上のお店をめぐる編集者・かにぃさんが中部地域のカフェをご紹介
おせんべいの可能性を追求し、
160年先も続く店をめざす
田の中屋(岐阜県大垣市)
May 30. 2025(Fri.)
地元の野菜、米にこだわるランチと
アイデア豊かなおせんべいスイーツ
歴史ある城下町、大垣市には老舗の和菓子屋が今も健在だ。1859年創業の「田中せんべい総本家」もその一軒。6代目店主は、より美味しいせんべいの可能性を追求し続ける、いわば熱心な“せんべい研究家”。
「20年以上前から、せんべいの原材料を自社でつくりたいと思っていました。せんべいのことを深く理解するためには、そこまでやるしかないと。カフェのオープンもその一環で、せんべいの魅力を多くの人に知ってもらえるし、地域の人と信頼関係を築き、いつか農業に携わることができるのではないか、と思いました」
プライベートで訪れた上石津(かみいしづ)の、のどかな田園風景に惚れ込み、2023年にカフェ「田の中屋」をオープン。コンセプトは「創業から160年以上続くおせんべい屋が、次の160年も続くために営む店」だ。
築50年の民家をリノベーションした店内は、土間や小上がりの欄間、縁側に当時の風情が感じられる。米を炊くのも、昔懐かしいかまどだ。
メニューに使う野菜や米は、「休耕田を再び畑にした地で、スタッフの家族がつくってくれたものを使っています。上石津で獲れたジビエも使いますよ。できるだけ、地元のものを使うようにしたいと思っています」と田中さんはいう。
ランチで人気のおにぎりと豚汁プレートは、旬の野菜をたっぷりと使った豚汁に、空気を含んだようにふんわりと優しく握ったおにぎりのシンプルなメニューだが、そこに田中さんのこだわりをプラス。豚汁の味噌は、味噌せんべいで使用している自家製味噌を使い、おにぎりにはフランス・ゲランドの塩と築地の名店・丸山海苔店から取り寄せる香り高い海苔を使う。米の旨味がしっかりと感じられるおにぎりと野菜の甘味がじんわりとにじみ出た豚汁の相性は抜群で、満足感の高い一皿だ。
地元の鹿肉を使ったカレーも評判で、スパイスの香りが食欲をそそる。
ランチをいただいた後は、スイーツをぜひ楽しみたいもの。おすすめメニューの「白まつほ」をオーダー。
田中屋せんべい総本家の銘菓「みそ入大垣せんべい」にキャラメルペーストを塗り、オーブンで焼いた「まつほ」。このお菓子がベースとなったメニューで、半生状態に焼いた白いみそせんべいに、自家製キャラメルと丹波産大納言小豆のあんを添え、アクセントにゲランド塩をかけたカフェ限定メニューが「白まつほ」だ。
ほのかに味噌の香りが漂うしっとりとしたせんべいに、甘く香ばしいキャラメルと食感が残る大納言小豆が絡み合う。まるで洋菓子のような和スイーツだ。
みそせんべいを細かく砕いて混ぜ込んだジェラートをせんべいの器に盛り込んだみそせんべいジェラートも、その意外な組み合わせと美味しさに感動。「和のクッキー&クリームでしょう?」と笑顔で話す田中さんの言葉にもうなずける。
「160年後も今の環境を守りたい」と田中さんは、モノを大切にすることや自然に親しむことをテーマにした多彩なワークショップも開催。忙しい日々を忘れ、たまには心を開放して参加してみると、新たな気付きに出会えるだろう。

販売も。スタンダードな味噌せんべいから革新的な
スイーツまで多数を取り揃える。

時間を忘れてゆったり過ごすのも一興。


シンプルながらも一つ一つの素材が
追求された贅沢な一品だ。

ドリンクには自家製のしそシロップでつくる
赤しそソーダがおすすめだ。
店舗情報

- 田の中屋
- 大自然に囲まれた里山にある、古民家をリノベーションしたカフェ。大垣市の老舗和菓子屋「田中屋せんべい総本家」が営む。古き良きを大切にしながらも革新的なメニューも展開する。
Instagram
https://www.instagram.com/tanonakaya/