月刊ワタナベマキ

毎月違った食材をテーマに人気料理家・ワタナベマキさん考案のレシピをご紹介

【特別編】
料理家・ワタナベマキさんが
陶芸の里・瀬戸で器をデザイン

February 10. 2026(Tue.)

「つくり手の思いを感じられ、ぽってりしていて、シンプルな器が大好き」と語るワタナベさん。交流Styleの仕事を通じて中部地域に足を運ぶことが多いので、いつかこのエリアの陶芸産地に行ってみたいと思っていたそう。今回は、その希望が叶う取材となりました。
まだすこし暑さが残る9月に、中部地域でも有数の陶芸の産地、愛知県瀬戸市を訪ねました。

黄瀬戸釉が好きなワタナベさんが
愛知県瀬戸市にはじめて訪問!

中部地域は陶芸の産地が点在しています。愛知県瀬戸市、常滑市、岐阜県多治見市、瑞浪市、三重県伊賀市、四日市市など。中でも愛知県瀬戸市は、日本遺産にも認定されている「六古窯(※)」のひとつです。

ワタナベさんは、瀬戸の陶器で使われている釉薬(ゆうやく)のなかでも「黄瀬戸(きぜと)」と呼ばれるものが大好きなのだそう。
「黄瀬戸釉は、どんな色合いの料理とも相性が良く、色合いがやさしいですよね。和風のお料理にはもちろん、洋風の前菜やパスタ、肉料理など、ジャンルを超えて使えるので、我が家でも何枚か持っています」と、愛用者として使い勝手の良さを語ります。
せっかく瀬戸を訪ねるのなら、瀬戸独特の釉薬のことや陶芸の里である瀬戸市がどんなまちなのか、といったことも含めて学んでみたい、とワタナベさん。

瀬戸市に着き、市の中心を流れる瀬戸川周辺を歩いてみました。「瀬戸ものまつり」が開催される数日前だったこともあり、町中にまつりののぼりが掲げられ、活気に包まれていました。

川の両端に陶器屋さんや和菓子屋さんが建ち並び、小高い山も見えてきます。瀬戸記念橋からの見晴らしが良かったので記念撮影。橋の上には、地元の陶芸家の方たちの作品がいくつか飾られていました。何気なく見ていると、なんと!これからワタナベさんが訪ねる予定の陶芸家・三峰園の加藤達伸さんの作品があったのです!「偶然とはいえ、驚きました!この作品もとても素敵!期待が高まります!」と少しはしゃいだ様子のワタナベさんでした。

※六古窯(ろっこよう) 瀬戸・常滑・越前・信楽・丹波・備前の陶磁器産地を指し、中世から現代まで生産を続けている窯のある6つの地域を総称している。

まちなかで、加藤達伸さんの作品を見つけたワタナベさん。
欄干に焼き物が展示されている瀬戸記念橋。
瀬戸に古くから伝わる「ゴモ」の店でランチ。
ゴモとは、窯元で職人たちに提供
されていた五目飯のこと。

名代五目めし 四季乃舎
https://shikinoya-seto.com/

加藤達伸×ワタナベマキがつくるお皿とは!?

今回訪ねた加藤達伸さんは、瀬戸市の窯元・三峰園(さんぽうえん)の6代目。料理をすることが趣味で、ワタナベさんのレシピでつくったこともあるのだとか。
「いろいろな媒体でワタナベさんの料理と器の使い方を見ていましたので、このお話をいただいてとても嬉しく思っています。ワタナベさんは、丁寧に器を使う料理家さんであり、また器をきちんと見せる工夫をされている方という印象を持っていました。つくり手としては、とてもありがたい使い方をしてくださっていると思います」と加藤さん。

瀬戸の中でも、加藤さんが属している赤津焼で使われる7つの釉薬や、持ち味である「貫入(かんにゅう)」(※)について教えてもらいました。加藤さんの作品を見て「こんなきれいな貫入は珍しいのでは?」とワタナベさん。「そこを褒めていただけるのはとても嬉しいです。細かい貫入を均一に入れるには技術が必要なので」と加藤さんもにっこり。

加藤さんの器の特徴をさっそくつかんだワタナベさんは、イメージする器のスケッチに取り掛かります。
「オーバル皿を陶器でつくっていただきたいです。リム(※)がそんなに立ち上がっていなくて、平皿に近い感じで」(ワタナベさん)
「陶器でリムオーバルは珍しいですね。具体的なイメージを教えてください」(加藤さん)
「マリネを盛ってもマリネ液が流れない程度の、立ち上がりが浅いリムがいいなぁ。そうすると料理のジャンルに関係なく、前菜からメイン、デザートまで使えると思います」(ワタナベさん)
「なるほど、それならこんな感じはどうですか…」(加藤さん)
初めて会ったとは思えないスピード感で、器のスケッチが出来上がっていきました。

※貫入:素地と釉薬の収縮率の違いから、焼成後に生まれるヒビのような模様のこと。
※リム:お皿の円周の外縁のこと。

三峰園窯の加藤達伸さん(右)と。
イメージする器をラフスケッチしていく。
釉薬の色や貫入の入り方など、見本の作品を
見ながら細かく打ち合わせしていく。
料理スケッチも同時に描きながら、
イメージを膨らませていく。

出来上がったオーバル皿は
黄瀬戸釉・白釉・飴釉の3種

加藤さんとの打ち合わせから約2か月後、ワタナベさんの元に3種類のオーバル皿が届きました。黄瀬戸釉(きぜとゆう)・白釉(はくゆう)・飴釉(あめゆう)の3種(※)で、いずれも無地。黄瀬戸釉と白釉には、加藤さんが得意とする美しい貫入が入っています(飴釉は、釉薬の特徴から貫入は入れられない)。

ワタナベさんの第一声は「わぁ!きれい!そしてかっこいい仕上がり!」。さらに「加藤さんも気にしてくださった、リムの立ち上がりがとても良いですね!つかみやすいし、これなら汁気のあるものを盛っても大丈夫。黄瀬戸は、和洋中なんでも合いそうで野菜は特に映えるでしょうね。白釉は貫入がとてもよく見えるのであえて白い料理がいいかも!飴釉は唐揚げが似合うかな、ガラスや他の陶器と重ね使いしても面白そう!」と次々にアイデアが湧いてきたようです。

さて、ワタナベさんが加藤さんの器をどう生かし、どんな料理をするのか。ここからは、加藤さんから受け取ったバトンをワタナベさんが「美味しいカタチ」へと仕上げ、交流Styleの読者の方々のためにオリジナルメニューを考案していきます。

「器は使ってくれる人がいて、やっと僕らの仕事が成り立つんです」(加藤さん)

2人の交流からはじまった器づくりは、いよいよ最終章へとつながっていきます。

※黄瀬戸釉:灰釉をベースにした黄色の釉薬で、微量の鉄分によって淡黄色に発色する。瀬戸焼の伝統的な釉薬のひとつ。
※白釉:瀬戸焼の特徴的な釉薬。その光沢と白濁した白色が特徴。
※飴釉:褐色になる釉薬。

完成したオーバル皿。
左から、黄瀬戸・白釉・飴釉。
まず型を作成し、その型に板状の粘土をかぶせて
素地を完成させ、乾燥と焼成をしていく。
写真は型の作成段階のもの。
素地が出来上がった段階。ワタナベさんこだわりの
リムの角度を見事にカタチにしている。
工房にあった蓋付のコーヒーカップを見て
ひらめいたワタナベさん。「このツヤ感、
いいですね! こんな塩壺があったらいいな!」
塩壺があったら!の一言を聞いて、
さっそく試作にかかる加藤さん。
オーバル皿に加えて塩壺も完成。
「ツヤツヤした肌感といい、
イメージ通りです!」とワタナベさん。

MAP

三峰園窯
〒489-0023愛知県瀬戸市窯元町123
電話番号:0561-82-3256
上部へ戻る