中部地域の注目パーソンにインタビュー!
人と地域を結ぶ
ツーリズムを追求したい
株式会社 KURABITO STAY
代表取締役 田澤麻里香さん
(4/4)
April 17. 2023(Mon.)
最近、旅人の好奇心をかき立てるユニークな宿泊体験が全国各地で人気を博している。こうした中、全国から熱い視線を集めているのが、長野県佐久市の株式会社KURABITO STAYが提供する“蔵人体験”プログラム。この宿泊体験の仕掛け人で、観光の新たな可能性を切り拓いているのが同社の代表取締役・田澤麻里香さんだ。
第4回目の今回は、今後の目標や展望について伺った。
ー前回までの記事はこちら
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「蔵人体験」で新しいツーリズムを 株式会社 KURABITO STAY 代表取締役 田澤麻里香さん(1/4)
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築100年の建物との運命的な出会い 株式会社 KURABITO STAY 代表取締役 田澤麻里香さん(2/4)
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アイデアをかたちにし、起業半年で黒字化 株式会社 KURABITO STAY 代表取締役 田澤麻里香さん(3/4)
地域のファンを作ることに本当の価値がある
蔵人体験施設「KURABITO STAY」では、初めての宿泊者にいつも同じ質問をしている。「これまで佐久に来たことはありますか」。
すると8割以上が「なかった」と答える。
つまり「KURABITO STAY」がなければ、宿泊者は佐久に一生関わることがなかったかもしれない。そんな人が宿泊体験を通して、地域のことを知り、佐久のファンになってくれている。中には、新酒ができた時に買い支えてくれるファンも。
「この宿泊体験は、1時間滞在してくれる人を100人呼ぶことよりも価値があると思っています。地域とお客さまの接点を作るという私がやりたいツーリズムを少しずつ実現できていると感じています」
営業を始めて丸3年が経過した。4年目を迎え、少し余裕が生まれてきた今は、新しいことを考え始めている。キーワードは「夏」だ。
ツーリズムの研究者として成長していきたい
冬に繁忙期を迎える酒造りのプログラムを提供することで、これまで観光のオフシーズンだった時期に面白いものを作ることができた。そこで次は、夏に新たなプログラムを提供したいと考えている。2022年に、酒米づくりを体験する企画を行ったところ、佐久平の田園風景の美しさに改めて気づかされた。今後はサイクリング用のコースを設定し、5~11月限定プログラムの計画を進めている。
「KURABITO STAY」の成功を機に、最近では全国各地で宿泊できる酒蔵が増えてきた。そこで田澤さんは、英語対応できる体験に特化した運営会社としての展開も考えているという。
「今後は農泊地域を周遊できるようなツーリズムも提案していきたいと思います。個人的には、宿泊施設の経営者としてだけはなく、ツーリズムの研究者として成長したい。まちづくりに必要なものを、経営者の視点を活かしながら発信していければと思っています」
関わる人たちが幸せになるビジネスを
「KURABITO STAY」を3年続けたことで、地元からの信頼もより厚くなったと語る田澤さん。
「自分が頑張ることで、周囲のみんなの自信に繋げていきたいです」
田澤さんが旅行会社に勤めていた頃、急激にデフレが進行し、大手が競い合うように格安海外旅行ツアーを売り出していた時期があった。大勢のツアー客が押しかけ、満足なサービスが提供されないことを理由にクレームが大量に寄せられ、スタッフが疲弊するという事態が相次いだ。
関わる人たちが疲弊していく姿を見て、「これではダメだ」と強く感じたという。
「ここで働く人たちも、商店街の人たちも、食材を納入する人たちも、すべての人が幸せになれるように。今後もみんながWin-Winになれるビジネスを続けていきたいです」
子育てを大切にする女性経営者として、新たなツーリズムのあり方を模索する研究者として、田澤さんはこれからもオンリーワンの道を歩み続ける。
プロフィール
- 株式会社 KURABITO STAY 代表取締役
- 田澤 麻里香(たざわ まりか)
- 長野県小諸市出身。大手旅行会社で勤務した後、ワイン輸入業者に転職。その後、専業主婦を経て、長野県小諸市の「地域おこし協力隊」に参加。旅行会社での経験を活かし、観光地域づくりに力を注ぐ。2019年にビジネスコンテストで優勝したことをきっかけに起業し、翌2020年には世界初の蔵人体験ができる施設「KURABITO STAY」をオープンした。
- KURABITO STAY
- 長野県佐久市の老舗酒蔵「橘倉酒造」とパートナーシップを結び、越後杜氏が利用した築100年の宿舎を宿泊施設としてリニューアル。本格的な酒造りの工程に参加できる点が注目され、コロナ禍の逆風下にもかかわらず、国内・海外から300名以上の宿泊者が訪れている。