番外編
株式会社R-pro
代表取締役 岡本ナオトさん(1/2)
防災を意識しない
「ボウサイ」をめざす

9月は防災月間。岡本ナオトさんは、防災をより日常的に、親しみやすく、気軽に皆がおこなえるような世にするため「ボウサイ」事業に尽力されています。
「ボウサイ」とカタカナで表記するのは、まさに気軽さを演出するため。「防災はだれにでも必要なもの。だからこそ、ライフスタイルの中に溶け込み、機能するものでなくてはと思います」と2019年の取材当時に語っていました。

岡本さんの手掛ける事業は、「社会の抱える課題を解決したい」との思いに起因しています。2009年にスタートした「大ナゴヤ大学」の立ち上げに関わったことで、クリエイティブが人々の行動に大きく影響することを実感。デザインの力で、課題解決に取り組むR-proをスタートさせました。
いくつかある事業領域の中で、「ボウサイ」事業は「yamory（やもり）」というネーミングで、防災に関するテクノロジーの情報を発信する「SAIBO TECH（サイボ テック）」、パラコードを利用したアクセサリー「LOOPS（ループス）」、日本赤十字社と共同開発した、遊びながら災害時の行動を学べる防災教材「いえまですごろく」といったサービスや製品を生み出しました。

2019年の取材当時から現在まで、それら「ボウサイ」の取り組みは継続されており、認知度や利用者の数も広がってきました。

「いえまですごろく」は、41都道府県で約3,000個が学校などに行き渡りました。そこで岡本さんは、感謝の気持ちを込めて、無料でダウンロード版の開発と提供に踏み切ろうとしています。
「クラウドファウンディングで支援者を募っていますが、金額を目標に据えているのではなく、関わってもらう人数が重要だと思っています」
目指すのは、1,000人の人々が“子どもの防災教育の当事者”になってもらうこと。高いハードルですが、多くの人が自分ごととして防災教育のことを考えるきっかけになればという思いが込められています。この無料ダウンロードが実現することで、当然、防災の意識を広める流れにもつながります。

「いえまですごろく」無料ダウンロード クラウドファンディングサイト


また、「いえまですごろく」の製作で協働してきた日本赤十字社の愛知県支部から声がかかり、「LOOPS」の名古屋グランパスとのコラボバージョンも作成。その後、清水エスパルスのバージョンも作られるなど、Jリーグのチームとのコラボレーションも果たしています。

岡本さんが感じる、昨今の防災への意識についてお聞きしました。
「先日、防災とは別の仕事で宮城県を訪れたのですが、良くも悪くも震災が“過去のもの”となりつつあると感じました。まちは整備され、復興のさらにその先へ向かっている証拠でもありますが、一方で、被災地であっても、十数年の年月を経て防災の意識が低下していく恐れがあり、この両立は難しいものだなと思います」
だからこそ、岡本さんの提唱する、意識しなくても常に「ボウサイ」が身近にある社会が必要なのでしょう。

次回の記事では、「ボウサイ」にとどまらない岡本さんの最近の活動についてお聞きします。