むすぶひと、つなぐひと

中部地域の注目パーソンにインタビュー!

上生菓子の魅力を
広く伝えたい
和菓子職人
三納寛之さん
(3/4)

April 15. 2024(Mon.)

岐阜県在住のフリーランス和菓子職人がつくる和菓子が、インスタグラムで話題になっている。
実店舗を持たず、WEBで販売する上生菓子はあっという間に完売となってしまうことから、ファンからは“幻の和菓子”と呼ばれている。
“映える”和菓子で多くの人を魅了しているのは、和菓子職人の三納寛之(さんのうひろゆき)さん。

3回目の今回は、独立、そしてSNSで実績を残すまでに至った経緯を伺った。

ー前回までの記事はこちら
1/4
気鋭のフリーランス和菓子職人の幼少時代とは 和菓子職人 三納寛之(さんのうひろゆき)さん(1/4)
2/4
修業や海外での講師経験により着実に実力をつける 和菓子職人 三納寛之さん(2/4)

技術に裏打ちされた自信で
時代が求めるものを
先取りする

岐阜県本巣市に3店舗を持つ和菓子屋で工場長を任されていた時のこと。インスタグラムで自作した和菓子を投稿し始めたところ、徐々にフォロワーが増えていった。
中には「三納さんのお菓子を販売したい」と言ってくれる人も現れはじめ、会社員としての和菓子づくりのかたわらで、自分だけの和菓子づくりにもチャレンジしていくようになった。
「お伊勢さん菓子博2017」での受賞や、上海での和菓子セミナー開催といった実績が技術の高さの証となり、三納さんの自信は確かなものになっていく。こうして機が熟し、独立の二文字を頭の中に描き始めたのである。
しかしながら実店舗を持つには土地、建物、機械などの購入に資金が必要だ。三納さんにとって家族を養いつつ大きなチャレンジをすることは、あまりに無茶なことのように思えた。
そこで、インスタグラムのフォロワーが順調に増えていたこともあり、実店舗を持たずにWEBでの販売をメインにするフリーランス和菓子職人というスタイルを自分の進む道としたのである。

2017年に三重県で開催された「お伊勢さん菓子博」
にて優秀工芸賞を受賞した『瑞翔彩花』。
茶の湯の稽古にも通っていたことがある三納さん。

背中を押した妻の一言

独立を決めた時、周りの反応はどうだったのだろう。三納さんが唯一相談した相手は妻の真千子さんだったという。
真千子さんからは「あぁ、いいんじゃない?」の一言が返ってきた。
その頃の思い出話を真千子さんに聞いてみた。
「結婚する時に、和菓子屋さんは真面目にきちんとやっていれば食いっぱぐれはないよ、と教えてもらったことを覚えていたというのもありますが、なにより、彼の実力は私がいちばん知っていました。彼なら大丈夫だと心から思っていたので、そう話しただけなんですよ」
と、とびきりの笑顔で話してくれた真千子さん。それを聞いていた三納さんが口を挟む。
「うちの奥さん、少し変わっているんです。独立すると話した時、2週間後には給料入らないんだよ、と説明しても、ふ〜ん、というだけで、普通に晩ご飯食べていつも通りにしていました。ちょっとは心配してくれるかと思ったのですが、一切心配されたことがなかったですね」
夫の実力を信じ続けた真千子さんの一言に後押しされて大きな一歩を踏み出すことができたのかもしれない。

ほがらかな真千子さんの笑顔がパワーの源!

インスタグラムで好評を得た
美しい和菓子の写真

工場長時代から始めていたインスタグラムは、三納さんの和菓子の特徴がよくわかる美しい写真がゆえに、すぐにフォロワー数が増えていき、独立を決めた時には既に多くのファンがついていたそう。
色合いやデザインの美しさや、繊細な技術がひと目でわかるからか、それまで和菓子を嗜むことのなかった人からも問い合わせがたくさんあった。それは、三納さんが期待していたことだった。
「私が得意とするのは、いわゆるお茶席などでよく出されることの多い上生菓子です。でももっと上生菓子の世界観を、一般の人たちにも知ってもらいたい。お茶席ではタブーとされることにも挑戦して、抽象的なデザインが多かった上生菓子に、具象性の強いテーマでデザインしてみるなどのチャレンジをしていきました。そうすることが結果的には“映える”につながり、“バズる”に行き着いたのだと思います」
こうしてSNSで実績を残し、販売開始と同時に商品が完売するほどの人気を博していくようになる。

インスタグラムで広く拡散された「宵花火」
インスタグラムに掲載する商品は、
すべて三納さん自身が撮影している。

プロフィール

和菓子職人
三納寛之(さんのうひろゆき)
「和の菓 さんのう」主宰の和菓子職人。愛知県瀬戸市生まれ。和菓子屋での修行時代に数々のコンテスト受賞を経験し、2019年よりフリーランスの和菓子職人として活躍。WEBでの販売以外には、名古屋と岐阜で月に数度の直接販売をおこなっている。そのほか、メディアへの出演や、さまざまなコラボレーション企画など、幅広い活動を展開。現在は岐阜県瑞穂市の和菓子工房にて制作を続けている。インスタグラムで多数のフォロワーを持つ。
https://www.instagram.com/wagashi_sanchan/
和の菓 さんのう
三納寛之さんが経営する和菓子販売のWEBサイト。伝統の技術と現代にマッチする感性で、創作和菓子をつくり出している。販売されると同時に抽選になることがあるほど人気が高い。月に数回程度は、イベントやポップアップストアなどで直接販売することがあるので、インスタグラムやWEBは要チェック。
上部へ戻る