むすぶひと、つなぐひと

中部地域の注目パーソンにインタビュー!

たくさんの人に支えられ
永く愛されるブランドに
G3sewing
工場長・斉藤勝さん
(4/4)

October 16. 2023(Mon.)

80代に突入してからミシンを始め、持ち前の職人魂を発揮して作り上げたがま口バッグが、大人気商品に――。そんな奇跡のストーリーが話題を集めている。物語の舞台は三重県四日市市の「G3sewing(じーさんソーイング)」。人気商品を手掛けるのは元電気工事士の斉藤勝さんだ。「新しいことを始めるのに遅すぎることはない」。自宅の一角で生み出される斉藤さんの作品が、全国のたくさんのファンを勇気づけている。
第4回となる今回は、斉藤さんの元気の源や、G3sewingの今後について伺った。

ー前回までの記事はこちら
1/4
ミシンとの出会いで湧き出た生きる活力 G3sewing 工場長・斉藤勝さん(1/4)
2/4
持ち前の職人魂で裁縫の腕がメキメキ上達 G3sewing 工場長・斉藤勝さん(2/4)
3/4
家族がひとつになり楽しみながら支え合う G3sewing 工場長・斉藤勝さん(3/4)

勝さんの活力源は
全国から届く「ラブレター」

G3sewingの商品を買ってくれた人からは、たくさんの手紙が届く。勝さんはそれを「ラブレター」と言い、1枚1枚丁寧に読んでいる。
「これが一番うれしいですね。電化製品を修理していた頃は、何かあればすぐクレームが届いていました。それが今ではお金を出して買ってくれた人から『ありがとうございます。大切に使わせていただきます』と感謝されるんですから」(勝さん)
届いた手紙は、妻の陽子さんが大切に保管しており、今ではファイルも7冊目に突入した。

お客さまとのつながりは、勝さんの生き甲斐だ。生地を送ってくれる人がいたり、イラストを描いてくれる人がいたり。X(旧Twitter)のアイコンも、SNSを通じてやり取りが始まったイラストレーターが描いてくれたものだ。投稿した写真を見て、裁縫のプロたちから作業のアドバイスを受けることもある。助言をもとにロータリーカッターや職業ミシンを導入し、当初に比べて作業効率は格段にアップしたという。

全国のファンから届いた
勝さんへの「ラブレター」の数々。

いつかタイの子どもたちに
仕事を依頼したい

G3sewingが軌道に乗り始めた2021年末から、タイの児童養護施設に寄付する活動も始めた。がま口バッグを購入者に1個送るごとに150円分を、家族が通う教会を通じて送金している。

この児童養護施設には、勝さんの孫たちがボランティアとして何度か訪れ、厳しい環境で元気に暮らす子どもたちに触れることで、逆に元気をもらって帰ってきていた。「タイの子どもたちの役に立てたら」。そんな思いで寄付を開始したという。

将来的には、タイの人たちに仕事を依頼することも視野に入れている。児童養護施設の子どもたちは、18歳になると施設を出なければならないが、自活できず行方不明になったり、犯罪に巻き込まれたりするケースも多いからだ。「仕事をコンスタントに発注できたら、自活の手助けになるはず」と娘の千里さん。実際に、タイの工場でがま口財布の製造が始動したという。2023年中には、ここでつくられた商品が発売される予定だ。軌道に乗るかどうかはまだ未知数だが、大きな一歩を踏み出した。「まだまだ頑張らないといかんね」と勝さんも意欲を見せている。

タイの児童養護施設にて。
手前左が孫の元希さん。

いつまでも大切に
守り継がれるブランドに

たくさんの人の後押しを受けて大きく花開いたG3sewing。ただ、勝さんは自らの人生を振り返りながら「これまでも上手くいき始めた商売はたくさんあったけれど、そこから長続きしなかった。G3sewingは大切に守り継がれるブランドにしていきたい」と口にする。

G3sewingのロゴマークは、3つの椿が寄り添っている。SNSで大反響を呼んだがま口バッグが椿柄だったこともあり、自然とG3sewingのシンボルとなった。がま口バッグの柄に使われている赤い椿は、「控えめな素晴らしさ」「謙虚な美徳」という花言葉を持つ。千里さんは「G3sewingとして活動するうえで、心掛けたいこととピッタリ一致した」と話す。

3つの椿が寄り添う絵柄は、勝さん、陽子さん、千里さんが3人で始めたことに由来する。これからも初心を忘れずに、家族、そして支えてくれる人たちみんなで力を合わせながら、G3sewingが生み出す幸せの輪を広げていくつもりだ。

G3sewingのロゴマークをプリントしたタグ。
「このブランドを大切に守っていきたい」
と話すG3sewingのみなさん。

プロフィール

G3sewing 工場長
斉藤 勝(さいとう まさる)
1937年生まれ。三重県四日市市在住。これまでに、電気工事士、ラジオ・テレビの受信機修理技術者、詩吟講師、調理師を経験。2019年秋、娘の畑中千里さんがミシンの修理を依頼したのをきっかけに、82歳でミシン洋裁を開始。聖書カバーを皮切りに、コースター、ポーチ、財布などを次々と製作。2020年夏、千里さんの長男・元希さんがTwitter(現X)のアカウントを作成して発信すると瞬く間に反響を呼び、看板商品のがま口バッグは発売すると即完売するほどの人気商品となっている。
G3sewing
三重県四日市市の一軒家で、がま口バッグ、トートバッグなどを製造・販売するソーイングチーム。斉藤勝さんの活躍が注目を集め、世界中から注文が殺到。「人生で、今が一番幸せ」と語るその姿が、元気に自分のやりたいことを叶える高齢者のモデルケースとして多くの人の共感を呼んでいる。2022年には、老後に生きがいを見つけて元気に過ごすヒントが詰まったエッセイ『あちこちガタが来てるけど 心は元気! 80代で見つけた 生きる幸せ』(KADOKAWA)が発行され話題に。

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三重県四日市市
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