むすぶひと、つなぐひと

中部地域の注目パーソンにインタビュー!

修業や海外での講師経験により
着実に実力をつける
和菓子職人
三納寛之さん
(2/4)

April 08. 2024(Mon.)

岐阜県在住のフリーランス和菓子職人がつくる和菓子が、インスタグラムで話題になっている。
実店舗を持たず、WEBで販売する上生菓子はあっという間に完売となってしまうことから、ファンからは“幻の和菓子”と呼ばれている。
“映える”和菓子で多くの人を魅了しているのは、和菓子職人の三納寛之(さんのうひろゆき)さん。

2回目の今回は、どのようにして技術と経験を積んできたのかを伺った。

ー前回の記事はこちら
気鋭のフリーランス和菓子職人の幼少時代とは 和菓子職人 三納寛之(さんのうひろゆき)さん(1/4)

和菓子職人としての
修行時代

和菓子屋の息子として生まれ育ち、和菓子職人になることが当たり前だと感じていた三納さんは、高校卒業後、父と相談して、実家以外の和菓子屋で修業することにした。
愛知県安城市にある店に、父親とともにお願いに行き、住み込み修行をはじめる。そこでは、掃除から、洗い物、お菓子づくりの下準備、あん炊き、最中にあんを詰めるなど、何から何まで経験させてもらったそうだ。
父親の和菓子店しか知らなかった三納さんにとっては、見るもの、体験することすべてが新鮮で驚くことばかり。たくさんのことを吸収し、6年間の修業を経て実家に戻ることになった。
ところが、たった半年で実家の和菓子屋を飛び出してしまう。これまでの修業で和菓子職人としての基礎を学び、どんな和菓子をつくりたいか、どんな仕事をしたいか、という未来予想図を自分の中に描いていた三納さんにとって、父親との意見の相違は耐えられないものだったのだ。
このままでは、なりたい自分になれない、と感じて、父親に自分の思いを伝え、和菓子職人として別の道を歩むことを決意するのである。

「父親とぶつかりあったことも、
今となっては思い出」と語る三納さん。

岐阜の和菓子屋で、
工場長として経験を積む

和菓子職人として独り立ちするにはまだ早いと感じた三納さん。岐阜県本巣市に3店舗を持つ和菓子屋に工場長として入社する。
この現場では、多くの社員をまとめ、機械を使って和菓子を正確に製造していく業務にあたった。ここでの10年に及ぶ経験は、自身を大きく成長させた。
3店舗分の和菓子を製造するわけだから、とにかくつくる量が多く、かつ、一度に正確につくらなければならない。実家や最初の修行先のような家族でコツコツと店を経営するスタイルとはまったく違う。
「その分、視野は広がりましたね。とても勉強になりました」
そして、はじめてコンテストに出品したのもこの頃だった。三納さんは技術を認められ、2012年に開催された全国菓子研究団体連合会の第3回技術コンテストでグランプリ受賞を果たす。

工場長時代に出品した和菓子が
グランプリを受賞。
グランプリ受賞が評された
コンテストのパンフレット。

海外セミナーでは講師として
日本の和菓子文化を伝える

コンテストでのグランプリ入賞がきっかけとなって、2016年には海外での和菓子セミナーの講師を経験することに。フランスとドイツで、子どもたちを相手に和菓子づくりの講座を開いた。
和菓子は季節感や地域性を表すものだが、日本文化を伝えることができるものでもある。海外の子どもたちが、和菓子を通じて日本を知ることができるなら!さらに和菓子の美味しさに気がついて、もっと深く興味を持ってもらえたら!そう思いながら海外の子どもたちに和菓子を教えた経験は、結果的には三納さんの未来に大きく影響を及ぼすことになった。
上生菓子と呼ばれる和菓子は茶席を中心に出されるもので、国内でも一般の消費者が頻繁に口にするものではない。そうした現状をもったいないと感じていた。日本でもっと一般の方にも親しんでもらうにはどうしたらいいのか?と考えることと、和菓子を知らない海外の人に向けて和菓子の魅力を伝えることは、とても似ている部分があったという。
こうしていろいろな経験をしていく中で、いよいよフリーランスへの道へと大きく舵をきっていくことになる。

2016年にはフランス・ドイツにて
子ども向けの和菓子セミナーを開催。

プロフィール

和菓子職人
三納寛之(さんのうひろゆき)
「和の菓 さんのう」主宰の和菓子職人。愛知県瀬戸市生まれ。和菓子屋での修行時代に数々のコンテスト受賞を経験し、2019年よりフリーランスの和菓子職人として活躍。WEBでの販売以外には、名古屋と岐阜で月に数度の直接販売をおこなっている。そのほか、メディアへの出演や、さまざまなコラボレーション企画など、幅広い活動を展開。現在は岐阜県瑞穂市の和菓子工房にて制作を続けている。インスタグラムで多数のフォロワーを持つ。
https://www.instagram.com/wagashi_sanchan/
和の菓 さんのう
三納寛之さんが経営する和菓子販売のWEBサイト。伝統の技術と現代にマッチする感性で、創作和菓子をつくり出している。販売されると同時に抽選になることがあるほど人気が高い。月に数回程度は、イベントやポップアップストアなどで直接販売することがあるので、インスタグラムやWEBは要チェック。
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