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中部地域の注目パーソンにインタビュー!

世界を魅了する
「メガバス」創始者
その原点とは
メガバス株式会社
代表取締役社長 伊東由樹
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June 17. 2024(Mon.)

静岡県浜松市に本社を置く「メガバス」は、ルアーフィッシングの本場アメリカでも一目置かれる世界的な釣具ブランドだ。日本のルアー生産の礎を築いた同社の創業者であり、カリスマアングラーとして世界のファンを魅了する伊東由樹(いとうゆき)さん。世界三大デザインアワードでの受賞歴を持つプロダクトデザイナーとしての顔も持ち、「メイド・イン・浜松」にこだわった商品を世界に発信し続けている。

第1回目の今回は、伊東さんの幼少期から創業までを振り返ってもらった。

実家は釣り宿を経営
魚に囲まれて育つ

浜名湖の玄関口。浜松市の南に位置する舞阪町弁天島(べんてんじま)は、古くから漁師町として栄えてきた地域だ。
この地で生まれた伊東由樹さんは、釣り宿を経営する家で育った。周りにいるのは、漁師や釣り人など、魚に関係する人たちばかり。物心ついた時から、伊東さんの身近には釣りがあり、自然の流れで“英才教育”を受けてきた。

「知り合いの漁師から投網の方法を教わったり、浜名湖の伝統漁法である『たきや漁』を経験したりしていました」と伊東さん。
たきや漁とは、夜に松明(たいまつ)を焚き、その明かりに集まる魚をヤス(突き棒)で突いて獲る昔ながらの漁法である。イワシや小ガレイを背掛け(※1)にして泳がせ、マダカ(スズキ)を釣る「弁天流し釣り」も少年時代に覚えたという。

実家の釣り宿には、ひっきりなしに常連客が出入りしていた。翌日の釣りに備えて前泊する客を迎え入れ、翌朝には遊漁船を出し、その釣果(ちょうか※2)を調理して、酒とともに夕食で提供する。
伊東さんが幼少期を過ごした1960年代後半は、ちょうど日本で遊漁が盛り上がり始めた頃と重なる。それまで一部の人の娯楽だった釣りが、レジャーとして大衆化し始めた時期だった。

※1 生き餌の背中に針をかける方法
※2 魚釣りの成果・釣れた魚の量

遠州灘と浜名湖の豊かな海産物に
恵まれた浜松市の弁天島。
画像提供/PIXTA

箪笥(たんす)の引き出しを切り取り
桐製のルアーを自作

同級生の実家は、ほとんどが漁業関係者だ。「船に乗りたくない」「網を繕ったりしたくない」と、家業の手伝いから逃げ回る友人が多いなか、「手伝いたい」と自ら申し出ていた伊東さんは、頼もしく見られたに違いない。隣の家の船に乗ったり、漁具を触らせてもらったりしながら、地域の漁師たちに可愛がられていた。

ただ、伊東さんの父は、釣りをすることに猛反対だった。釣り人を相手に商売しているにも関わらず、である。「まさに釣りを憎んでいるようでしたね」と話す伊東さん。

小遣いで購入した竿も、自分でつくり上げた竿も、父に見つかるとすぐさま折られた。
それでも伊東さんは、竿を天井裏に隠したり、分解して見つからないようにしたりして、隠れて釣りを楽しんだという。
「当時はやんちゃでしたから。素直に『止めます』とはならず、『次はどうやってつくろうか』と考える。まさにイタチごっこでしたね」
父に反対されるほど、伊東少年の釣りへの情熱はかき立てられていった。

ルアーを自作し始めたのもこの頃からだ。
父がつくった桐箪笥に目を付け、引き出しの奥をこっそりと切り取り、ルアーの材料にした。夏休みの工作として学校に提出すると、賞をもらった。
「伊東君がつくったルアーで魚を釣ろう」という担任の先生の粋な計らいで、同級生と一緒に釣りを楽しむこともあったという。周りの人たちは、伊東さんを応援してくれていたのだ。

「生まれた頃から魚に囲まれた環境でした」
と当時を語る伊東さん。

コンテストで作曲賞を受賞
本気で音楽の道を志す

伊東さんを夢中にさせたのは、釣りだけではなかった。小学校時代から、学級の歌をつくり、先生から褒められるほどの音楽好き。中学時代には、ヤマハ音楽振興会が主催するイベントに出場し、友人とピアノの弾き語りを披露してセミファイナルまで勝ち残った。学校の先生も「音楽室を使っていいよ」と後押ししてくれた。こうして伊東さんは、釣りを続けながら、徐々に音楽の世界にものめり込んでいった。
高校時代には、アマチュアバンドコンテスト「BAND EXPLOSION」に参加し、作曲賞を受賞。「この頃には、本気で音楽の道を目指してもいいかなと思うようになっていましたね」と伊東さんは語る。

高校を卒業したタイミングで、父親との喧嘩が引き金となり東京へ飛び出した伊東さん。光学機器メーカーに勤めながら、オーディションに参加したり、茨城県の霞ケ浦で自作の釣り道具を試したりする日々を過ごした。徐々に音楽活動が忙しくなり、いよいよCDリリースが決定。音楽に専念するため、お世話になった会社を辞めた。しかし、レコーディングの直後に所属事務所が倒産してしまった。

「もう会社には戻れない。そこで、東京都内の釣具店を回り、釣り竿の修理を請け負うことにしました。また自作した鉛製の釣り具の販売も始めました」
子どもの頃から釣り具を製作してきた伊東さんは、まるで水を得た魚のように仕事を増やしていった。「そろそろ屋号が必要になる」と考えた伊東さんは、当時のバンド名から「メガバス&ワークス」と命名した。のちのメガバス株式会社が誕生した瞬間だった。

伊東さんが音楽活動の傍らで製作していた
カスタムロッド「ARMS」。

プロフィール

メガバス株式会社 代表取締役社長
伊東由樹(いとうゆき)
1966年、静岡県浜松市生まれ。世界屈指のルアーフィッシング&アウトドアブランド「メガバス」グループ創業者。カリスマアングラーとして国内で活躍する傍ら、プロダクトデザイナーとして公益財団法人日本デザイン振興会の「グッドデザイン賞」や、世界三大デザインアワードとして知られる「iFデザイン賞」「レッドドット・デザイン賞」などを受賞。2013年からは「浜松市やらまいか大使」としても活躍している。
メガバス株式会社
静岡県浜松市に本社を構える釣り具のトップブランド。1990年の創業以来、革新的なデザインと高品質な製品で世界中のアングラーから高い評価を獲得。ルアー、ロッド、リール、ウェア、アウトドア用品など、幅広い釣り具を製造・販売し、特にそのルアーはデザイン性と機能性を兼ね備え、多くの釣り愛好家に愛用されている。また、環境保護にも力を入れており、豊かな自然と共存するための活動などにも積極的に取り組んでいる。

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〒431-3115静岡県浜松市中央区西ケ崎町1590-1
電話番号:053-431-0777
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