中部地域の注目パーソンにインタビュー!
“型破り”の精神で
瀬戸の未来を創り出す
株式会社エム・エム・ヨシハシ
代表取締役 吉橋賢一
(4/4)
August 13. 2024(Tue.)
日本六古窯のひとつに数えられる愛知県瀬戸市。陶磁器産業が盛んな地には、大量生産になくてはならない“型屋”や“原型士”と呼ばれる職種が存在する。株式会社エム・エム・ヨシハシもそのひとつ。現在は型づくりにとどまらず、オリジナルブランドの展開や陶磁器の総合的なプロデュースをおこない注目されているのが代表の吉橋賢一さんだ。
最終回となる第4回目は、吉橋さんが構想している瀬戸の陶磁器コミュニティづくりについて伺った。
ー前回までの記事はこちら
1/4
型屋に生まれて、型から飛び出す 株式会社エム・エム・ヨシハシ 代表取締役 吉橋賢一(1/4)
2/4
型屋が持つディレクション力が大きな武器になる 株式会社エム・エム・ヨシハシ 代表取締役 吉橋賢一(2/4)
3/4
型屋だからできること アウトプットの挑戦 株式会社エム・エム・ヨシハシ 代表取締役 吉橋賢一(3/4)
次世代の職人を育成する
エム・エム・ヨシハシには、吉橋さん以外に2人のスタッフがいる。いずれも技術を持った職人として、吉橋さんとともにプロダクトを生み出している。
これからの未来を見据えて、型のことが理解できる職人を育成していきたい。それが、型職人の可能性を自ら切り拓いてきた吉橋さんの思いだ。型に関するノウハウはもちろん、プロダクトが生み出されるまでの工程をコントロールできるようになれば、陶磁器に関わるあらゆる事業展開ができるからである。
「芸大や陶磁器の学校で勉強をしている間は学校の設備を使えますが、仕事としてやるようになると、型をつくるための設備を持っている人はまずいない。だから学ぼうと思っても学ぶ場所がない。それならウチがそんな場所になればいい、と。例えば、陶芸作家が自分で型をつくることができるようになれば、作品のバリエーションや製作できる量が増える。つまり仕事の幅も広がります」
陶芸家も陶磁器メーカーも、そして型屋も、みんなが一緒になって、次代の職人を目指していこうと呼びかけているのだ。
悩みも夢も
みんなで語れる場所を
とはいっても、吉橋さんのように家業で型の仕事に携わるなどしていなければ、なかなか型職人というニッチな仕事に興味を持つ人は少ないだろう。
「それならば、陶磁器という大きな枠で、いろいろな話をする場所をつくることから始めようと考えました。型屋の仕事を知ってもらうこともできるし、型に限らず陶磁器のことが話せれば、そこで抱えている問題を解決することができるかもしれない」
会社の一部を使って、瀬戸の陶磁器関係者に提供するサロンのような場所ができないか計画中だ。
「陶器のことをちょっと相談したい」「聞きたいことがあるけどどこに聞いたらいいのかわからない」「瀬戸のまちづくりを盛り上げたい、アイデアを話したい」そんなことを吉橋さんに相談してくる仲間たちが、少しずつ増えてきていることも、場づくりの理由のひとつ。
「月に一度くらいは、フリーで誰でも入れるような飲み会というかおしゃべり会のようなものを開催していけたらいいなと考えています」
自らも人生の選択に悩み、一度は違う道を進み、再び瀬戸に戻ってきた立場として、吉橋さんが次代の人々に伝えられることはたくさんあるはずだ。近い将来、エム・エム・ヨシハシの工房の片隅から、未来の瀬戸を担う人材たちが、熱く語り合うシーンが生まれるに違いない。
また、職人仲間とともにイベントやオープンファクトリーを開催し、やきものはもちろん瀬戸のまちを盛り上げようという活動もおこなってきた。
陶磁器プロデューサーとしての実績を積み重ね、次の世代へのバトンの受け渡しについても思いをめぐらす今、瀬戸の未来を憂い、期待し、創造したいと強く願っている。
型屋が見た瀬戸
そして型破りが見る瀬戸へ
「守破離(しゅはり)」という言葉がある。
なにかの“道”に精進する場合、教えを乞う師や流派の教えを忠実に“守”る段階、そして他の流派や教えからも良い点を取り入れて既成概念を“破”る段階、そして最後は元の流派から“離”れて独自の道をいく段階。
吉橋さんはまさに「守破離」の人生そのものではないだろうか。型屋の技術を守り、型屋の常識を破り、型屋から離れる、という段階を歩んできた。そしてそれは、祖父・父から受け継いだ型屋としての技術がしっかりとあったからこそ、型破りができたのである。
目まぐるしく変わる時代の中、彼がこれから仲間たちと繰り広げるであろう陶磁器を中心にした瀬戸のまちづくりが、どんな“型破り”な展開を見せてくれるのか、期待せずにはいられない。
プロフィール
- 株式会社エム・エム・ヨシハシ 代表取締役/陶磁器プロデユーサー
- 吉橋賢一(よしはしけんいち)
- 愛知県瀬戸市生まれの瀬戸市育ち。陶磁器生産のための型屋の息子に生まれ、後継ぎとなる。立体のものをクリエイトするという意味で、デザインと陶磁器をつなぐアイデアに目覚めてからは、家業としていた型屋の枠を大きく超えて、陶磁器をプロデュースする事業展開に挑戦。やきもののまち・瀬戸の新たな魅力づくりを含めた、陶磁器構想を抱いている。
- 株式会社エム・エム・ヨシハシ
- 戦後の復興期に陶磁器の製型に携わっていた吉橋喜呂久氏が、1959年に合資会社吉橋製型所として独立。ノベルティを中心にした型製作事業を確立させる。1965年には喜呂久氏の息子である宏一氏が代表に就任。1986年に株式会社エム・エム・ヨシハシと改め、工業用石膏型の製造を開始する。
3代目となる吉橋賢一氏が後継となってからは、自社ブランドの開発・販売を成功させ、オンラインショップ「Yummy Life Design Store」を開設するなど活動を広げている。
MAP
電話番号:0561-41-0471
※商品をご覧になりたい場合は、事前にご連絡いただくか、オンラインショップ(https://store-andc.com/)をご利用ください。