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中部地域の注目パーソンにインタビュー!

会社の危機を救った
キリマルラーメンと地元の愛情

小笠原製粉株式会社
代表取締役 小笠原充勇 (2/3)

August 07. 2025(Thu.)

動物のキリンのイラストのパッケージが目を引く、こだわりの国産素材を使った即席麺「キリマルラーメン」。西三河のご当地ラーメンとして親しまれる一方で、多くの地域や企業・施設、人気コンテンツなどとのコラボレーションも話題だ。
プロデュースしているのは、愛知県碧南(へきなん)市にある小笠原製粉株式会社。代表取締役の小笠原充勇(みつお)さんに、キリマルラーメンへの思いや、ご自身の目から見た会社とキリマルラーメンについて、お話を伺った。
第2回目は、製粉業廃業など、会社の大転換期に気付いたキリマルラーメンの存在の大きさについて語っていただいた。

29歳、初めての「会社生活」を
実家の家業でスタート

―入社してからは、どんな会社生活をスタートされたのですか?

就職経験がないどころか社会人としてのマナーも分かっていませんから。ただ息子だというだけの理由で入社した私は、さぞや生意気だったと思います。
「自分が変えてやるんだ」という勢いだけが強みでした。でも、何もできないので、やっている仕事は雑用ばかり。当然ですね(笑)。絶対に帰ってこない場所だと決めていたところに戻ってきたわけですから、自業自得だな、と思ったのも事実です。

―その頃の会社の状況については、どのように感じましたか?

私が入社した2007年は、とても厳しい状況でした。「キリンラーメン」は、すでに1998年に生産中止になっていて、製粉部門も右肩下がり。最初に参加した役員会では、「いつ廃業するのか」が議題になっており、ショックを受けました。何とか立て直しをしなければと思いましたが、経験も周囲を巻き込む力もない自分には、何もできませんでした。

「会社をなんとかしたい、でも力がない。その
ジレンマに苛まれていました」と小笠原さん。

地元からの声を受け
製麺部門が復活

―しかしそんな中、2010年にキリンラーメンが復活を遂げますね。

もともとキリンラーメンは、碧南市の家庭の食卓に即席麺を届けたいと、1965年に開発されました。即席麺自体がまだ珍しかった時代で人気の商品でした。ところが時代は変わり、平成になると大手の流通網や販売力にはかなわず、1998年に販売を終了したのです。
しかしその後、「どこにいったら買えるのか?」「復活して欲しい」との声が届くようになり、5年後の2003年に一度きりの限定販売をしたところ即日完売。「ぜひもう一度つくって欲しい」と熱い要望をいただき、2010年に製造ラインを復活させました。
そんな一筋の光が差し込んだものの、2018年には「キリンラーメン」から「キリマルラーメン」へ名称変更、2019年には製粉事業の廃業、そして2020年には新型コロナウイルスの流行と毎年のように大きな出来事があり、好転するまではいきませんでした。

「過去に在籍した方から、現在一緒に
頑張ってくれている仲間まで、
みなさんに感謝しています」と小笠原さん。

地元に愛されるキリマルラーメンに
会社も人も救われた

―そんな苦しい最中の2019年、小笠原さんが代表取締役に就任されます。会社が、また息を吹き返した一番の要因は何だったのでしょうか?

ひとつは、キリマルラーメンが大きなポテンシャルを秘めていたことが大きかったのだと思います。代表取締役に就く以前から、「ペンギンラーメン」や「アザラシラーメン」など、「キリン」以外のアニマルシリーズを出していて、広がりがある商品だと感じていました。近年では、「鳥好き用」「猫好き用」シリーズや地域、企業、人気コンテンツなどとコラボレーションした商品も多数生まれ、注目されることが多かったのです。

―そうして、キリマルラーメンがさまざまな展開を生んでいったわけですね。

それはたまたまではなく、今まで小笠原製粉を支えてくれた社員、協力会社、そして地元の方の愛が繋げてくれたのだと思います。決してきれいごとではなく、本当にそう思います。
一時期製造を止めていた時に、地元の方々が「キリマルラーメンは、碧南のソウルフード。だからつくり続けて欲しい」と言ってくださいました。それは上っ面の言葉ではなく、本心なのだと思いました。「キリマルラーメンは、世界中で売っていると思っていたのに、碧南のものだったんだ!」と嬉しい言葉をいただいたこともあります。名称変更の公募をおこなった際には、予想をはるかに超える1万通以上の応募がありました。キリマルラーメンは小笠原製粉のものではなく、碧南の麺として地域にしっかり根を下ろし、愛され続けていたのです。
そして、それをつくったのは祖父であり父であり、会社のスタッフであり、地域の人々です。お客さまがキリマルラーメンを好きでいてくれたこと、会社がどんなに厳しい状況でも工場を辞めずに頑張ってくれたスタッフ、困っていた時に手助けしてくれた同業の企業…。言い出したらキリがありませんね。

1965年の発売当時から現在まで、
パッケージの変遷が歴史を物語る。
鳥好き用シリーズは、2019年から発売開始。
2021年の発売後すぐに人気となった
猫好き用シリーズ。

プロフィール

小笠原製粉株式会社 代表取締役
小笠原充勇(おがさわら みつお)
1977年碧南市生まれ。家業は継がないと心に決めて、家を飛び出すようにして大学に進学。音楽の道に進むが、29歳になって家業に戻ることに。現在はキリマルラーメンの製造元である小笠原製粉株式会社の3代目を受け継ぐ。祖父や父がつくりあげた会社と商品を、地域の人々に見守られながらも自ら指揮をとってブランディングにも果敢に挑戦。地産地消をモットーに地域に貢献できる企業でありたいとの願いから、ひとつひとつの仕事に丁寧に向き合う。
小笠原製粉株式会社
製粉精米業の会社として、1907年に創業。1909年には三重県より手延べ麺職人を招き、兼業として製麺を開始。大正時代になると製粉部門を主力として現在の場所に新たな工場を建設・移転。1938年に精米業を廃止し、戦後は政府指定工場として小麦粉加工を拡充させる。現在は地元国産小麦による製品開発を進め、地域貢献企業を目指して事業展開している。

キリマルラーメン
https://kirimaru.jp/

キリマルラーメンInstagram
https://www.instagram.com/kirimaru_ramen//

MAP

〒447-0887愛知県碧南市汐田町3-33
電話番号:0566-41-0480
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