
中部地域の注目パーソンにインタビュー!
夢をカタチにできた
森町へ恩返しを
「森のシロくま堂」店主
石川羽美さん
(3/3)
October 03. 2025(Fri.)
文具メーカーが多く集まり、全国的に見て文具店の数も多い静岡県。個性的な店もあり、「文具の聖地」とも言われている。
そんな静岡県にあって、全国の文具ファンを魅了する文具店が「森のシロくま堂」だ。「遠州の小京都」と呼ばれる周智郡森町(しゅうちぐん もりまち)に店を構える。
店頭を埋め尽くす数々の商品はすべて石川羽美(いしかわはねみ)さんが厳選したもの。オリジナル商品の企画・開発にも精力的に取り組む彼女は「アイデアがあふれて止まらない」と笑顔を見せる。そんな石川さんに「森のシロくま堂」オープンまでの道のりや、文具の魅力などについて話を伺った。
最終回は、石川さんが「森のシロくま堂」を通して目指したいことについて語っていただいた。


オリジナルキャラクター
シロクマの「しろみちゃん」は
店の看板娘!
―セレクト商品のほかに、オリジナル商品も企画・開発されているそうですね。
オリジナル商品は開店当初から開発していて、最近ではオリジナルキャラクター「しろみちゃん」の木製のクリップやメモスタンドなどが人気です。以前お客さまから「地元で『森のシロくま堂』のオリジナルボールペンを使っている人を見かけた」なんて話を聞いたことがあって、私もうれしい気持ちになりました。
―オリジナルキャラクターのしろみちゃんはどのように誕生したんですか?
インスタライブで案内役として登場していたシロクマのぬいぐるみを「しろみちゃん」と呼ぶようになったのが始まりです。コロナ禍の折、目まぐるしい忙しさで休み無しの日々が続いた際、一度気持ちを立て直そうときちんと休みを取るようにしました。ゆったり過ごす時間ができたことで「オリジナルの喜ばれる商品をつくりたい」という想いがあらためて芽生えてきました。そんな中で生まれたのが、しろみちゃん。イラストレーターさんにお願いして、可愛さをもつ2頭身のオリジナルシロクマキャラクターに仕立ててもらいました。
―しろみちゃんは商工会の冊子にも登場していますよね。
森町商工会の方の提案で、まちの企業やお店紹介に使っていただけることになりました。しろみちゃんを通して森町を知ってもらったり、森町を通してしろみちゃんや当店を知ってもらえたりしたら嬉しいですね。


多数のオリジナル商品が並ぶ。




森町だったから
私らしく夢を追えた
―地域の人たちとの関わりにも変化はありましたか?
オープンからずっとがむしゃらに進む毎日だったので、SNSを通して来店いただくお客さまとのつながりは感じていましたが、正直なところ、まちとつながっている感覚は薄かったのです。森町という地域社会とつながってる感覚というのでしょうか。そんな時に、以前から商品サンプルを試作してくれていた地域の木製品工房の方と、一緒に商品をつくろうとなりました。そうして生まれたのがお店のドアをモチーフにした「ミニチュアどあキーホルダー」です。商品化から1年で400個以上販売しています。
―あらためて、森町でお店を立ち上げた感想をお聞かせください。
集客のことを考えたら、ターミナル駅の近くにお店を構えるほうが来客数も見込めます。また実際に移転や2号店出店のお誘いを受けたこともありました。でも、私の中ではそれらの選択肢はありませんでした。この場所だったから、自分の目が届く範囲で、思い描いたお店を形にできたんだと思います。開店から6年が経ちましたが、森町は変わらず「私がいたい場所はここ」と思えるまちです。


木製の商品は地元企業が製作。
右が大人気のミニチュアどあキーホルダー。


イラストに織り交ぜた商品も。
写真はマスキングテープ。
自分にできることで
森町に恩返ししていく
―石川さんが感じる、文具の魅力は何ですか?
私にとって文具は楽しくて、癒やしとなる存在であり、没頭できるものだと思います。机の上で、自分の世界を表現できるというか。文具は、デジタルの時代に逆行するアイテムとも言えます。でも日本全国、さらには海を越えて、世界にファンがいるほど注目されています。文具には大きな力があって、きっと私がまだ気づいていないこともたくさんあるんだと感じます。
―今後はどんな目標がありますか?
目標ノートには「開店から3年後くらいには社会貢献」って書いてあったんですけれど、率直な感覚として当店の影響力はまだまだだと感じています。商工会館の方にも「地域に貢献できていなくて…」と相談したこともあります。そうしたら「このまちでお店をやってくれていること自体がありがたいんだから」とおっしゃっていただけました。その言葉で、今できる身の丈に合った商売を通して、貢献していけば良いんだと思えるようになりました。
―自分らしく動くことが、結果として地域貢献につながるのならうれしいですね。
本当にそうです。最近は、他地域のイベントに出店するようになりました。実店舗に来てほしいという思いもあって出店を控えていた時期もあったのですが、ここ2年ほどは「森町にあるセレクト文具店」と打ち出すことで、森町に来ていただく方が増えればという考えに変わっていきました。このまちで経験したことや、地域とのつながりを生かして、これからも自分らしさを大切にしながら、文具の魅力を発信し続けていきます。


「書ききれないほどの魅力がたくさん」と石川さん。


と石川さんは笑顔を浮かべる。
プロフィール
- 森のシロくま堂 店主
- 石川羽美(いしかわ はねみ)
- 静岡県袋井市生まれ。好きなものにとことん熱中する子ども時代を過ごす。高校卒業後、地元企業が展開する文具チェーン店に就職。持ち前の探究心を強みに文具の知識を身に着け、若手ながら仕入れ業務にも携わるように。広告代理店への転職を経て、セレクト文具店「森のシロくま堂」をオープン。培った経験を生かし、文具を愛する人の心をくすぐる商品を開発・販売する。


- 森のシロくま堂
- 文具や雑貨などを扱うセレクト文具店として、2019年にオープン。コンセプトは「女性のための秘密の文具部屋」。約5坪の店内にはところ狭しと商品が並ぶ。商品はすべて店主の石川さんがセレクトしたもので、クマのオリジナルキャラクター「しろみちゃん」がデザインされたグッズなど、オリジナル商品のラインナップも豊富。店頭には周辺の森町エリアを紹介する石川さんの手書きマップを置き、地域の魅力発信にも取り組む。
木曜定休。
Instagram
https://www.instagram.com/morino_shirokumado