
中部地域の注目パーソンにインタビュー!
大好きな「生き物」を軸に
学び、楽しんできた日々
しずおかの海PR大使
三浦愛さん
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December 03. 2025(Wed.)
日本一深い湾・駿河湾に面する歴史ある漁師町であり、漁業水揚げ額で全国トップクラスを誇る静岡県焼津市。昭和末期からは温泉地としても発展し、海の幸と温泉を楽しみたいと観光に訪れる人も多い。
しずおかの海PR大使などを務める、「釣りガール」・三浦愛(みうらあい)さんは、焼津市地域おこし協力隊の初代隊員として3年間、地元住民と協力して釣り体験教室を開催するなど、町おこしに取り組んできた。隊員活動を終えた現在も、培った経験や自分の好き・興味関心を軸に、地域の魅力を発信するため精力的に活動する。そんな三浦さんに現在までの道のりや経験してきたことなどを伺った。
第1回は、三浦さんが釣りに熱中するようになったきっかけから、30代を前に挑戦したイタリア留学について振り返ってもらった。
撮影協力/焼津PORTERS
https://yaizuporters.jp/


祖父との思い出が
釣り女子の原点
―三浦さんはいつ頃から釣りを始めたのですか?
物心つく頃には、釣り竿を握っていた記憶があります。もともと生き物全般が大好きで、そんな私を祖父が川釣りに連れて行ってくれたんです。祖父が暮らす地域は自然が豊かで、ふたりで川に行ってはクチボソなどの川魚を釣っていました。思春期に差しかかると、虫などが苦手になる女の子も多い中で、私はずっと変わらず「かわいいな」と感じていました。
―大学では海洋生物学を専攻したそうですね。
大学でも好きなことを学びたいと考えていました。埼玉出身ということもあり、海は育ってきた環境では馴染みがなくて、自分なりに生き物の勉強をする中で、身近になかったのが海の生物でした。だから学びたいなと考えて。水族館で、水の中で生きる生き物の姿を見て、面白いと感じていたのもきっかけになったと思います。進学した日本大学では、生物学の基礎から水産加工まで幅広く学び、学部生の後半から大学院にかけては、海洋性乳酸菌が与える養殖トラフグへの影響に関する研究に携わっていました。


物心つく頃から釣り竿を握り、川釣りを楽しんでいた。
海洋生物の研究者から
沖釣りの面白さを伝える人に
―勉学に励む中で、釣りも続けていたのですか?
続けていましたし、大学在学中から海で釣りをする機会がグッと増えました。進学を機にキャンパスのある神奈川県に引っ越したことで海が身近になって、周りにいる友人は当然ながらみんな海好き。だから、みんなで遊ぶとなると必然的に海に行くことになるんです(笑)。いろいろな地域の海に行って、釣りをして遊んでいましたね。川釣りと沖釣りでは使うギア(釣り道具)が異なるので、友人からいろいろ教わっていました。
特に、研究に携わるようになってからは顕微鏡とにらめっこの毎日でしたから、気持ちをリフレッシュするためにも、釣りは欠かせない趣味の一つでした。生物学の研究は結果が出るまでにすごく長い年月が必要です。研究はとても興味深かったのですが、一方で「ラボにこもっているより、フィールドに出てサンプルとなる魚を獲っているほうが向いているのでは」と漠然と感じるようにもなっていました。
―大学院を修了後してからの歩みもお聞かせください。
静岡県に本社を置く釣具店に就職して、静岡市清水区に移りました。人と接するのが好きだったので、接客業も向いていると思ったんです。大学時代に沖釣りをしていたと話したら、沖釣りギアの担当となりました。でも、正直なところ趣味の範囲で楽しんでいただけで、専門知識は全くなくて(笑)。仕事を通して知識を蓄えていけたのは、販売員としても、ひとりの釣り人としても、とても良い経験だったと思います。釣具店に4年ほど勤務した後、料理を学ぶためイタリアに留学しました。


次は「食べ方」を学びたい!
美食の国・イタリアへ
―イタリア留学のきっかけは何だったのでしょうか?
ひと言で表すなら、変化を求めたから。釣具店での仕事はとても楽しかったのですが、経験を重ねるとともに「このままで良いのかな?」という思いも、心の片隅に募るようになって。30代が目前だったこともあり、何か新しいことに挑戦したいという気持ちが大きくなっていったんです。魚という生き物について学んで、釣り方を学んで、じゃあ次は?と考えたときに、頭に浮かんだのが「食べ方」でした。イタリアは美食の国ですし、国土の三方を海に囲まれているので、魚の美味しい食べ方を学ぶにはうってつけだと思いました。
―留学中はどのように過ごされていたんですか?
留学期間は1年2カ月程度。はじめの2カ月間は学校に通ってイタリア語と料理の基礎を学び、その後学校連携の漁師町にあるレストランに移って、住み込みでの料理人修業がスタートしました。ですが、修業が始まってすぐに「日本人ならできるでしょ」と、なぜか私が前菜担当となってしまいました。さらには、私が修業したレストランは、地元の漁師さんがその日釣った魚を使って料理を提供するというスタイルで、見たこともない魚や、カジキマグロみたいな大型の魚が届く、なんてことも珍しくなかったんです。言うなれば毎日が出たとこ勝負の環境です。他の留学生は修業先でいろいろな料理のノウハウを学んでいるのに、私は魚のさばき方も、味付けのアレンジも、何から何まで見よう見まねで実践しながら覚えていく毎日。今思えば、良くも悪くもおおらか過ぎる環境でした(笑)。でもそのおかげで、度胸というか、多少のことならなんとかなると思えるようになりましたね。


プロフィール
- CLARI MARE(クラリマーレ) 代表AC
- 三浦愛(みうらあい)
- 浜松市在住。大学・大学院で海洋生物について学んだ後、釣具販売店勤務、イタリアへの料理留学を経て焼津市地域おこし協力隊の初代隊員に就任。現在は培った経験を生かし、講演・イベント活動や釣り教室の企画・運営などに携わる。また多くの資格を取得しており、小型船舶免許や潜水士といった海に関わるものだけでなく、調理師免許、国内旅行業務取扱管理者など地域観光に関わるものまで多様。近著に『サッと作れて本格派! 鮮魚料理のすすめ とれたて魚で簡単ごちそうレシピ』(つり人社)がある。
- https://clarimare.com/
- https://www.instagram.com/ai_miumiura/





