むすぶひと、つなぐひと

中部地域の注目パーソンにインタビュー!

焼津と出会い
これまでの経験が点から線に

しずおかの海PR大使
三浦愛さん
(2/3)

December 04. 2025(Thu.)

日本一深い湾・駿河湾に面する歴史ある漁師町であり、漁業水揚げ額で全国トップクラスを誇る静岡県焼津市。昭和末期からは温泉地としても発展し、海の幸と温泉を楽しみたいと観光に訪れる人も多い。

しずおかの海PR大使などを務める、「釣りガール」・三浦愛(みうらあい)さんは、焼津市地域おこし協力隊の初代隊員として3年間、地元住民と協力して釣り体験教室を開催するなど、町おこしに取り組んできた。隊員活動を終えた現在も、培った経験や自分の好き・興味関心を軸に、地域の魅力を発信するため精力的に活動する。そんな三浦さんに現在までの道のりや経験してきたことなどを伺った。

第2回は、焼津市への移住のいきさつや、焼津市地域おこし協力隊としての活動の足跡をたどってもらった。


撮影協力/焼津PORTERS
https://yaizuporters.jp/ac

ー前回の記事はこちら
大好きな「生き物」を軸に学び、楽しんできた日々 焼津市地域プロジェクトマネージャー三浦愛さん(1/3)

焼津の第一印象は
「イタリアに似ている!?」

―イタリアから帰国後、どのようないきさつで焼津市地域おこし協力隊となったのですか?

偶然、SNSで焼津市の地域おこし協力隊の募集情報を目にしたんです。当時は地域おこし協力隊制度の活用が全国に広まりつつあった時期で、私も初めてこの制度を知りました。私に何ができるのかは未知数でしたけれど、少なくとも水産や料理の知識はあるし、できることはきっとある。そう考えて応募し、晴れて初代隊員となりました。

―移住に対して不安はありませんでしたか?

焼津には釣具店勤務時代に釣りをしに何度か訪れていたので、土地勘が全くないわけではありませんでした。それに、当たり前ですがまちの人とは日本語でコミュニケーションできるじゃないですか。イタリアから帰国したとき、コミュニケーションが容易に取れることにすごく感動したんです。言葉が通じる日本だったらどこでも大丈夫、何だってやっていけると思っていました。

―実際に移住してみて、焼津のまちにどんな印象を受けましたか?

ちょっとイタリアに近いと感じました。私が移住した当時、焼津の町並みは昔ながらの港町の雰囲気が色濃くて、物語に出てくるようなノルタルジックさが感じられました。それが私の中で、イタリアの漁師町と重なったんです。焼津に暮らす人たちの人柄も、イタリア人に通ずると感じましたね。焼津の人たちは基本的にはシャイなんですけれど、心の扉が開くとすごく陽気なんです。その雰囲気がイタリア人と似ているな、と。あと、話す口調はぶっきらぼうなのに言葉の端々に優しさが見え隠れするギャップも、焼津の人たちの魅力だと思います。

「漁船が並ぶ風景を見ると、イタリアの漁師町を思い出します」と三浦さん。

地元遊漁船とタッグを組み
実現した「釣り体験教室」

―地域おこし協力隊となってからは、具体的にどんなことに取り組んだのでしょうか?

1年目はとにかく焼津について学びながら、まちの人とのつながりづくりに集中しました。市役所の職員さんと一緒に地域のお店や企業にごあいさつに行っても、皆さん「地域おこし協力隊って何?」といった反応で「地域おこし協力隊員という肩書ではなく、私自身が『何者』かにならないといけない」と、姿勢を正す気持ちになったことをよく覚えています。正直なところ「私は本当に、何者かになれるんだろうか?」と、焦りを感じましたね。

―焦りが解消されるきっかけなどあったのでしょうか?

釣り体験教室を実現できたことが、大きな一歩になったと思います。私にできることと言えば、やっぱり釣り。でも沖釣りはハードルが高いというイメージが強いですし、ひとりで挑戦するにも勇気がいると思います。興味があるけど一歩踏み出せない人が気軽に参加できる教室があれば、釣りを楽しむ人がもっと増えると考えました。実現に向けて、まず私がお客として釣り船に乗って沖釣りを体験して、お世話になった船長と関係性を築いてから「お客さまは私が呼び込みます!責任を持って私が面倒見ます!」と口説き落として(笑)。釣具店に勤めていて沖釣り担当だったことも、船長さんの信頼を得る際の後押しになりましたね。参加者が安心できるように綿密に準備して、回数を重ねながらブラッシュアップしていきました。2年目は釣り体験教室に加えて女性向けの釣り大会などの企画運営、地元の焼津水産高校での特別授業、メディア出演など活動の幅が広がっていきました。

釣りに初挑戦する人向けに企画した釣り体験教室には県内外から多くの人が参加。

コロナ禍でも「できること」を模索して
焼津のまちを応援

―3年目はコロナ禍となり、厳しい状況になったかと思います。

順調だった釣り体験教室やイベントが全くできなくなったので、正直うろたえましたね。でも、何もしないわけにはいきません。そこで目をつけたのがSNSでした。私が掲げていた隊員活動の目標のひとつが「SNSフォロワー1万人達成」でした。釣り体験教室のスタート後しばらくして達成できたので、SNSの強みを生かせるのでは?と考えました。そこでスタートしたのが「#焼津エール飯」です。「エール飯」はもともとは大分県別府市で展開されていたテイクアウト情報の発信サービスで、地域の飲食店を応援する取り組みです。焼津市ではインスタグラムのアカウントを持っている店舗限定で情報を掲載しました。この取り組みが広がっていくと、インスタグラムのアカウントを持ちたいけれど、どうやったら開設できるのかわからないといった問い合わせが増えたので、店舗に足を運んでアカウント開設から簡単な使い方もレクチャーさせてもらい飲食店との交流が生まれました。

―SNSの使い方までフォローするなんて、とっても手厚いですね!

インスタグラムをやっていないというだけで除外するのは、ちょっと違う気がしたんです。それで、「アカウントを持っていないお店で興味がある方は連絡ください」といった文章を載せておいたら、多くの問い合わせをいただきました。当時、営業時間が短時間に制限されていたことも、お店の人たちが腰を上げるきっかけになったのかもしれません。振り返ると、焼津にはもともといろんな良いものがあって、そこに私のできることがエッセンスとして加わることで、新しい展開や活性につながっていったのではないかと思います。

ウェブサイトでは協力飲食店情報を掲載。
料理ジャンルで絞り込むこともできる。

プロフィール

CLARI MARE(クラリマーレ) 代表AC
三浦愛(みうらあい)
浜松市在住。大学・大学院で海洋生物について学んだ後、釣具販売店勤務、イタリアへの料理留学を経て焼津市地域おこし協力隊の初代隊員に就任。現在は培った経験を生かし、講演・イベント活動や釣り教室の企画・運営などに携わる。また多くの資格を取得しており、小型船舶免許や潜水士といった海に関わるものだけでなく、調理師免許、国内旅行業務取扱管理者など地域観光に関わるものまで多様。近著に『サッと作れて本格派! 鮮魚料理のすすめ とれたて魚で簡単ごちそうレシピ』(つり人社)がある。
https://clarimare.com/
https://www.instagram.com/ai_miumiura/
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