
中部地域の注目パーソンにインタビュー!
未来へつなぎたい
銭湯がある「豊かさ」
「ゆとなみ社」代表
湊 三次郎さん
(3/3)
February 06. 2026(Fri.)
かつては、まちの風景として当たり前にあり、人々の暮らしに欠かせない存在であった銭湯。住宅の風呂の普及やライフスタイルの変化、後継者の不在などさまざまな要因が重なり、日本の銭湯は減少の一途を辿っている。そんな状況に待ったをかけるのが、静岡県浜松市出身で、「ゆとなみ社」の代表として京都を拠点に活動する湊 三次郎さん。
後継者が不在となった銭湯を事業として継承し、若い感性を取り入れ新たな集いの場を創出している。合言葉は「銭湯を日本から消さない」。そんな湊さんに「ゆとなみ社」の取り組みや今後の展開などについて話を伺った。
第3回は、数々の老舗銭湯の救世主となってきた「ゆとなみ社」および湊さんが秘める「使命」について語ってもらった。
取材・撮影地:源湯(京都府京都市)
https://yutonamisha.com/sento/minamotoyu/
https://www.instagram.com/minamoto_yu/
ー前回までの記事はこちら
「銭湯を日本から消さない」継業で紡ぐ古き良き銭湯文化「ゆとなみ社」代表 湊 三次郎さん(1/3)
地道なPRと遊び心で銭湯再生に挑む「ゆとなみ社」代表 湊 三次郎さん(2/3)


スタッフが自発的に
イベントを企画運営
―「ゆとなみ社」が運営する銭湯では、ライブイベントなど斬新なイベントが多く催されていますね。
イベントはスタッフが自発的に企画することが多いです。音楽ライブにしても、「スタッフ自身が好きなアーティストを呼ぶ」といったノリでおこなっています。アーティストにオファーしてみると、銭湯でライブをすることを特別に感じていただけることが多く、「役得だな」って思いますね。
最近は「風呂寄席」という企画もはじまりました。特に、若手の落語家さんは活動場所を求めている場合も多く、双方にとってメリットのあるイベントになっています。
―銭湯は「重労働」のイメージがどうしてもつきまといますが、「ゆとなみ社」で働くスタッフはみなさん生き生きとされていますね。
スタッフには「銭湯好き」という共通項がありますからね。なにより、一般的な銭湯によくある家族経営ではなく、企業として銭湯を運営していますので、毎日出勤する必要がありません。銭湯業界では当たり前ではなかった働き方をして、それでも営業できて売り上げが上がることを証明できたのは業界にとって良かったのだと思っています。
―スタッフのみなさんはどのような目標を持って勤務しているのですか?
銭湯の経営者を目指して独立前提で修業をしているスタッフもいますし、そこまでではないけど、ゆとなみ社で楽しく働きたいスタッフもいて、各人さまざまですね。


写真は愛知県豊橋市「人蔘湯」での様子。
自社でメンテナンス技術を磨き
老舗銭湯の救世主に
―新しい試みや目標はありますか?
これからは、「設備事業」に注力していきたいと考えています。銭湯を継承するためのフォーマットはだいぶ固まってきたように思うのですが、その銭湯を支える「土台」が重要です。つまり設備業者さんです。銭湯の運営ができても、その銭湯をメンテナンスしてくれる業者さんがどんどん減ってしまっている状況があるのです。
ゆとなみ社では水道工事の経験があるスタッフや一級建築士も迎え入れていて、自社ですべてメンテナンスをおこなうことが次第に現実的になってきています。
先にお話した愛知県豊橋市の「人蔘湯」もそうでしたが、設備の不具合が起こり、直すすべがなくそのまま閉業につながる事例が多くあります。ゆとなみ社が自社でスキルを持つことで、手を差し伸べられるケースが増えるかもしれません。


いつも引っ張りだこ。ここを自社で
しっかりと事業化したい」と湊さん。
「銭湯」とは
まちの豊かさの象徴
―あらめて「ゆとなみ社」が背負う使命とは?
起業した当初からあるのが「銭湯を日本から消さない」。それがまず一番で、その中に「営み」がしっかりとあることが大切です。日々の生活の中にささやかながら銭湯が存在している。それが地域の人たちの「豊かさ」につながると思っています。
―まちに銭湯がある意義は「豊かさ」にあると?
例えば、三重県伊賀市内の銭湯で最後の1軒となった「一乃湯」。そのまちの生活の一部である昔ながらの銭湯が商売を続けられていることが、地域の営みがなされていることを表していると思います。大手のチェーン店ばかりが並ぶ景色とは印象が違います。
逆に言うと、銭湯すら残らないなんて、それこそある意味貧しい社会だと思うのです。銭湯に限らず現代の日本は家族経営店や個人店が商売しづらくなっていて、それはすごく寂しいことです。なんとかそんな状況に抗って、銭湯を通じて「豊かさ」を地域に還元していきたいですね。
―湊さん個人としての夢や目標を教えてください。
そうですね…、一人の銭湯好きに戻りたい(笑)。いつかまた何も考えず銭湯を満喫したいですね。
―(笑)、なるほど。では、銭湯に行ったときに湊さんが一番テンションが上がる瞬間はいつでしょう?
う~ん。「帰り道」ですね。銭湯で過ごした余韻に浸りながら、風に吹かれて家路に着くときが一番幸せです。そして、そんなことを感じられることが「豊か」だと言えるのではないでしょうか。


銭湯を経営してみたいとの声や、地方の銭湯を
再生できないかと相談が寄せられるようになった。
プロフィール
- ゆとなみ社 代表
- 湊 三次郎(みなと さんじろう)
- 静岡県浜松市生まれ。京都の大学へ進学し銭湯サークルを立ち上げる。全国の銭湯をめぐり、店主らと交流を深める。訪れた銭湯の数は、通算で700軒以上。大学卒業後アパレル会社に就職した後、2015年に京都市の「サウナの梅湯」を継業。2021年に銭湯継業の専門集団「ゆとなみ社」を設立し、後継者不足などに悩む銭湯の再建を次々と果たす。


- ゆとなみ社
- 「銭湯を日本から消さない」をモットーに銭湯の継業をおこなう。「サウナの梅湯」「源湯」がある京都府をはじめ、大阪府・兵庫県・滋賀県の近畿圏で計8店舗、中部地域には、愛知県豊橋市の「人蔘湯」、三重県伊賀市の「一乃湯」があり、合計で10店舗の銭湯を運営(2025年12月現在)。社名は「私たちが湯を営む(経営)」「湯と人々の営み(生活)」から名付けられた。
(写真は「サウナの梅湯」)
Instagram
https://www.instagram.com/yutonamisha/





