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新しい常識?
鮨にテキーラ
驚きのペアリング!
あのお酒にこのメニュー
(2時間目)

March 20. 2023(Mon.)

ー1時間目の記事はこちら
ウイスキーに合う意外な”甘味”驚きのペアリング!あのお酒にこのメニュー(1時間目)

おいしいお酒をもっとおいしく楽しむために、お酒に合った食事や食材を選びたい。なおかつ自宅で嗜めるともっと良い! そんな望みを叶えてくれる素敵なマリアージュの情報を3回にわたってお届け。
2回目となる今回は、東京と沖縄でバーを営む伊藤裕香さんに、「鮨テキ」として話題の鮨とテキーラのマリアージュについてお聞きした。

撮影協力/Bar Chœur(愛知県名古屋市)
https://www.choeur.jp/

アガベスピリッツバー「Gatito」&「Elote」オーナー
伊藤 裕香
東京・アガベスピリッツバー「Gatito」と沖縄「Elote」オーナー。 日本テキーラ協会認定グランマエストロ・デ・テキーラ。日本メスカル協会認定メスカレロ。東京ウイスキー&スピリッツコンペティション公式審査員。鮨テキ協会会長。
https://www.instagram.com/gatito.tequila/
https://www.instagram.com/sushitequila/

2時間目
鮨にテキーラ
「鮨テキ」が、
いま来てる!

ガリの代わりにテキーラを!

「鮨にはテキーラ!」を合言葉に、鮨とテキーラのペアリング会(以下、鮨テキ会)が日本各地で開催されています。意外性のある組み合わせかもしれませんが、3年前に立ち上げられた鮨テキ協会の会員は現在300名を超えています。

テキーラは「アガベ(AGAVE:竜舌蘭)」という植物を原材料にした蒸留酒です。鮨に合うのはこの原材料の「アガベ」に理由があります。テキーラには、このアガベ由来の爽やかな風味と少しの辛味・清涼感があり、それが鮨をいただくときのガリやわさびの代わりとなるのです。魚介類の持つ生臭みを消して、脂をさっぱりと洗い流し、次の一貫をより美味しくいただくことができるというわけです。「糖質ゼロ」であることもポイントで、お腹が膨れにくく、主役の鮨を引き立てます。

テキーラには、1,700以上のブランドがあります。熟成期間によって、以下のようにクラスが分かれており、味わいの幅がとても広いのです。
・ブランコ(樽熟成0~2ヶ月未満のもの)
・レポサド(樽熟成が2ヶ月~1年未満)
・アネホ(樽熟成1年以上)
・エクストラアネホ(樽熟成3年以上)

そんな中で、鮨とのペアリングを楽しむ際には以下を意識してください。
①アガベ100%で作られたものを選ぶこと
②甘さや香りの主張の強すぎないものを選ぶこと
③前割りなどで度数を和らげること
本来はストレートでいただくのがおいしいお酒ですが、鮨の旨味を味わうためにもソーダや水などで割り、度数を和らげて楽しみましょう。

以上を踏まえ、ここは一つ「鮨テキ」にチャレンジしてはいかがでしょう。

カンパチとソーダ割り
−鮨テキのスタートは
白身とソーダ割りから−

「鮨テキ会」では、最初の一杯目は、テキーラベースのサワーやハイボールで喉を潤します。そこから、お店ごとの鮨ネタの順番に合わせてゆるやかな流れを決めていくのです。
例えば、さっぱりとした白身のネタには1年以上樽熟成し、テキーラを濾過して透明にした新しいタイプの「クリスタルアネホ」がオススメです。雑味の少ないクリアな味わいとスムースな口当たりが、洗練された白身の味わいを引き立ててくれます。

光物にはテキーラを
同量の冷水で割った
トワイスアップで
−香りを重ねて、
より深いマリアージュを−

コハダやイワシ、サンマといった光物には、樽熟成の無い透明なテキーラ「ブランコ」をオススメしています。
光物は鮨ネタの中でも香りが強く、大葉や生姜、葱と一緒に供されることが多いので、テキーラの中でも一番アガベの爽やかさが感じられ、薬味効果の強い「ブランコ」が合うでしょう。
通常、風味の強いネタの鮨を食べた後は、ガリで口の中をリセットしますが、鮨テキ会ではガリをほとんど食べなかったという声をいただいたことも。キレのあるテキーラ・ブランコの口内リセット力は素晴らしい!

中トロにテキーラの熱燗
−トロの脂が熱燗に溶けて
より美味しく−

中トロなどのしっかり脂ののったネタは、前割り(※)をしたのちに高めの温度に燗づけをした「レポサド」と好相性です。
オーク樽で短期間熟成されているため、お酒の温度を上げることで、樽由来の優しい香りが立ち上って心地よく、また口に入れた魚の脂が熱燗の熱でまろやかに溶けて幸福感をもたらします。
テキーラの熱燗は、お鮨のペアリングではなくともぜひ試してほしい、テキーラの新しい楽しみ方のひとつです。

※ テキーラと同量の水で割る。試飲してみて、もう少し優しい口当たりが良ければ水を足してください。

貝類やウニには
個性的なメスカルを
−テキーラより癖の強い
メスカルでペアリング−

貝類や魚卵系などの旨みの強いネタには、独特な香りがあり個性的な「メスカル」を合わせることで、お互いに存在感を高め合います。
メスカルとは、テキーラの母とも言われるメキシコ古来のアガベを原料とする蒸留酒で、テキーラよりもワイルドかつ複雑な味わいを持っています。使われるアガベの品種が多くてワインのように多様性があり、スモーキーさも特徴。強い味のネタを受け止めてくれる、懐の深さがあるのです。
メスカルの飲み方は、水割りやソーダ割りがオススメ。割ることで飲みやすくなりますが、存在感は損なわず、おいしくいただけます。


鮨に合わせるテキーラは前割りをして度数を和らげたものが良いと先に述べましたが、最後の一杯は食後酒として「アネホ」や「エクストラアネホ」といった熟成期間が長いものをストレートで楽しんでください。
ウイスキーやブランデーのような芳醇な樽の香りと熟成感が、「鮨テキ」の幸せなひと時をきれいに締めくくってくれるはずです。

ぜひ一度、騙されたと思ってお試しあれ!

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