おとなの相談室

知っているようで知らなかった悩みに、専門家がお答えします

趣味で始めるレザークラフト
初心者におすすめのアイテム
(2時間目)

April 18. 2024(Thu.)

財布や名刺入れ、手帳など、普段から革製品を使っている人は多いのではないでしょうか。革製品を自作するのは難しいというイメージがあるかもしれませんが、基本をマスターすれば、小物であれば初心者でも手軽に楽しめるため、大人の趣味としておすすめです。レザークラフトについていろいろ教えていただいたのは、愛知県名古屋市にある皮革材料専門店「愛産商会(Craft Shop AISAN)」の渡邉翔太さん。2時間目の今回は、誰でもチャレンジしやすいコースターづくりを指南してもらいました。

ー1時間目の記事はこちら
趣味で始めるレザークラフト 革製品の魅力を深堀り(1時間目)

愛産商会(Craft Shop AISAN)
渡邉翔太
1950年創業の皮革材料専門店「愛産商会(Craft Shop AISAN)」。皮革材料全般の販売や各種加工、OEMのほか、革製品の自社ブランド「Scelta(シエルタ)」を展開。レザークラフトの基本技術が学べるワークショップも開催している。渡邉翔太さんは、もともとお客として通っていたことがきっかけで入社。「レザークラフトでものづくりをするとき、そしてお店で革製品を買う際には、素材がどこからやってくるのかということを正しく理解していただいて、サステナブルな活動の輪に加わって欲しい」という想いで店頭や催事に立ち、革製品の魅力を広く伝えている。
https://www.aisan-shoukai.co.jp/

2時間目

初心者でも1時間で完成!
コースターを作ってみよう

レザークラフト
キホンの道具

今回は、コースター作りを紹介します。手順はシンプルですが、基本の技法を網羅しています。1時間ほどで完成するので、初心者でも気軽にできますよ。
まずは、必要な道具から。

<今回使用する革>
 A:スエード革…豚革を起毛加工した素材。(裏側に使う)
 B:タンニンなめしの牛革…タンニンを用いて牛皮をなめした革。(表側に使う)

①ボンド&ヘラ…下穴を開けて縫う際にパーツ同士がずれないよう、革同士を接着する。
②コバ処理剤…コバ(断面)や床面(革の裏面)の繊維の毛羽立ちを抑えて手触りや見た目、耐久性を向上させる。
③ロウ引き糸…表面をロウでコーティングしたポリエステル製の糸で、太くて耐久性に優れている。
④手縫い針(2本)…裁縫用の針より太く、先端が丸い。
⑤カッター…革を裁断する。普段使いのカッターでOK。
⑥定規…革をカッターで裁断する際のガイドとして使う。
⑦菱目打ち&ゴム板…革に針を通すための下穴開け。ゴム板を敷いて使う。
⑧ヘリ落とし…革の面取りをする。
⑨ステッチングディバイダー…縫うラインを記す。
⑩丸ギリ…型紙に沿って革に印を付ける。
⑪ライター…縫い終わった糸のロウを溶かして止める。
⑫木槌…菱目打ちを打つ。
⑬スリッカー…溝で革の断面をこすって磨く。
⑭ローラー…革同士をしっかり圧着させる。

基本の道具をセットにしたキットも市販されています。
最低限揃えておきたい道具は、①ボンド&ヘラ、③ロウ引き糸、④手縫い針(2本)、⑤カッター、⑥定規、⑦菱目打ち&ゴム板、⑪ライター、⑫木槌(または金槌)の8つです。

革を裁断して
貼り合わせる



実際にコースターを作っていきましょう。
表側には、タンニンなめしの牛革、裏側には、すべりにくいスエード革を使います。

まずは、革をコースターのサイズに切ります。慣れないうちはパーツ同士をズレ無く貼り合わせることが難しいため、おおよそのサイズで革同士を貼り合わせておいてから耳を切り落としたほうが切り口が綺麗に揃いますよ。

STEP1…タンニンなめしの牛革とスエード革をボンドで貼り合わせます。
ヘラを使ってボンドを均一に薄く塗り、革を重ねた後ローラーで圧着します。

STEP2…タンニンなめしの牛革に型紙をあて、丸ギリで表面をひっかくように切る場所に印を付けます。

STEP3…印にそって定規を置き、カッターで革をカット。2枚の革を一度に切ることは難しいので、何度も刃をすべらせていきます。革の裁断にはある程度力が必要なため、椅子から立ち上がって作業することをおすすめします。

革を縫う前に
針穴と糸を準備




続いて、縫うための準備をしていきます。
レザークラフトの手縫いのキホンとなる「平縫い(ひらぬい)」では、1本の糸の両端に1本ずつ針を付けます。2本の糸を交差させることで、並縫いと比べて丈夫に仕上がるのです。

STEP4…表側に、縫う場所の目印となるラインを引きます。ステッチングディバイダーの先端のL字のガイドが革の断面を掴むことで、常に一定の間隔でラインを引くことができます。

STEP5…菱目打ちで、針を通す菱形の縫い穴を開けます。
菱目打ちの先端が裏の革から少し見えるくらいまで打ち込みましょう。2打目以降は直前に開けた最後の1穴に菱目打の端の1本を重ねて打つことで、菱目の間隔を崩すことなく穴を開けることができます。

STEP6…ロウ引き糸を縫い代の4倍程度の長さにカットします。

STEP7…裁縫するときと同じように、針の穴にロウ引き糸を通します。
その後、
①糸の末端から5~6cmの場所に針の先端を刺します。
②S字になるように、もう一度糸を針の先端で刺します。
③針の根本まで糸を引っ張ります。
この作業を糸の両側で行います。途中で針から糸が抜けないようにするため、糸を針の先端で刺すときには、撚り合わせてある糸の中心を刺すようにしましょう。

針を2本使った
「平縫い」で丈夫に

いよいよ縫っていきましょう。

STEP8…2枚の革を縫い合わせます。
①菱形に空いた穴の右上から針を通します。
②もう1本の針を同じ穴の左下から通します。この時に、一方の針で別の針の糸を刺すことがないように、①で通した糸は手前によけておきましょう。
③両方通したら、左右に軽く引っ張り糸のたるみを取るとステッチがきれいに。
④これを繰り返して縫っていきます。

STEP9…縫い終わったら同じ面に2本の糸を出し、2、3mm残して切ります。
縫い終わりは糸の先端をライターで熱して溶かし、最後にライターの尻で押し潰します。

こだわりたい場合は、仕上げに表側の革の断面がなめらかになるようにしていきます(コバ処理)。

STEP10…ヘリ落としを使って角を落とし、手触りをなめらかにします。
STEP11…革の断面にコバ処理剤を塗り、スリッカーの溝を使って革の断面を磨きます。
断面を磨くことで革の繊維が引き締まり、毛羽立ちが押さえられるのと同時にツヤが出ます。

上部へ戻る