
知っているようで知らなかった悩みに、専門家がお答えします
銭湯ってどんな場所?
知っておきたい基本と魅力
(1時間目)
January 26. 2026(Mon.)
各家庭の浴室の普及やライフスタイルの変化などさまざまな要因を背景に、街場の銭湯(公衆浴場)は年々減少しています。そんな中、「『絶対に裏切らないご褒美』が待っているのが銭湯。大きい湯船に入る瞬間は、何度経験しても気持ちいい!」と話すのは、愛知県豊橋市の銭湯「人蔘湯(にんじんゆ)」の店長を務める奥村明加さん。銭湯の継業を専門とする「ゆとなみ社」の一員として、老舗銭湯の暖簾を守り続けています。1時間目の今回は、奥村さんに、銭湯を楽しむ方法や最低限知っておきたいマナーなどを教えてもらいました。


- 人蔘湯 店長
- 奥村明加(はるか)
- 愛知県豊橋市出身。後継者不在となった銭湯を事業として継業する集団「ゆとなみ社」の一員。北海道の牧場で働く夢を叶えるべく一度は豊橋を離れるものの、アルバイト店員として親しんだ豊橋の老舗銭湯「人蔘湯」を守りたいという想いのもと帰郷。2022年に2代目店長に就任し、元オーナーである女将と二人三脚で営みを続けている。
- https://yutonamisha.com/
- https://www.instagram.com/ninjinyu2021
銭湯の数が減るなか
次代へつなげる動きも


私が店長を務めている「人蔘湯」を含め、豊橋市内では最盛期に40軒以上の銭湯が営まれていたと聞いています。しかし、現在は人蔘湯のほかに1軒の計2軒を残すのみ(2025年12月現在)。これは豊橋市に限ったことではなく、全国的に銭湯の数は減少の一途を辿っているのが実情です。
人蔘湯も一度は廃業しましたが、私が所属する「ゆとなみ社」によって継業・再生され、現在も営みを続けています。このように、古くから町の社交場としての役割を果たしてきた銭湯を次世代に受け継ごうという動きも盛んになってきているように感じます。
娯楽ではなく
生活必需サービス




そもそも銭湯(一般公衆浴場)は、公衆衛生のための「生活必需サービス」としての側面が強い場所です。近年増えているスーパー銭湯とは異なり、料金を経営者側が自由に決めることができません。都道府県ごとに設定されていて、愛知県の場合は、大人の入浴料は530円(2025年12月現在)と定められています。そして、脱衣場と浴場のみといったシンプルな構成の場合が多いですね。
浴場にサウナ室を備える銭湯も多いですが、別料金の場合がほとんどです。これはサウナが「生活必需」の域を超えて、「娯楽」としての要素が強いためでしょう。
人蔘湯では男女ともにミストサウナがあります。こちらは入浴料内で利用できますが、男性の浴場にのみあるドライサウナは別料金でご利用いただけます。
人蔘湯ではサウナ室に入室できる印としてリストバンド形式の番号札をお渡ししています。銭湯によってはサウナ室用の簡易的な鍵を渡されたり、サウナ利用者専用のタオルを渡されたりとルールもさまざまです。
奥村さんが考える
銭湯の魅力とは?


現在まで営まれている銭湯の多くが昭和の雰囲気を色濃く残しており、レトロな雰囲気に惹かれて訪れる若者が近年多いようです。私自身も、時代を感じるタイル絵や動物を模した排水口など、銭湯独特のデザインがとても好きです。
私はもともと歯科衛生士として働いていたのですが、「牧場で働く」という夢があり、それを叶えるまでのアルバイトとして人蔘湯に携わることになりました。しかし、人蔘湯で働くようになってから、銭湯が大好きに。銭湯がまちのコミュニティの場として、かけがえのないものだと気づいたのです。一度は北海道へ渡りましたが、「私がいなくなることで、復活した人蔘湯がまた閉店してしまうのではないか」「地元の豊橋に銭湯文化を残すことを今は優先したほうがよいのではないか」と考えるようになり、再び豊橋に戻ってきました。そして現在は人蔘湯の2代目店長として日々頑張っています。
旅先に銭湯があれば、必ず立ち寄るようにしています。その土地の方言を交えた、お客さん同士の何気ない会話を耳にするのが私は好きです。男湯の会話まで女湯に聞こえてくるというのも、スーパー銭湯のような大きな施設ではなかなかない味わいかもしれません。
普段は服装などでその人らしさや立場がそれとなく分かるものですが、浴室内ではみんな裸ということもあり、フラットな関係を築きやすいのも銭湯ならではの魅力でしょう。




