中部地域のさまざまなまちを文筆家・甲斐みのりさんが訪ねます
浅間温泉に新しい風を吹き込む
「手紙舎 文箱」
浅間温泉(長野県松本市)
September 17. 2024(Tue.)
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東京・調布の人気雑貨店が松本に出店した理由とは?浅間温泉(長野県松本市)
長野県松本市、市街から車で約20分ほどの温泉街「浅間温泉」は、豊かな自然を感じられる安曇野や上高地へ向かうのにも便利な場所。1,300年以上湧き続ける名湯は松本城主が通ったことでも知られており、竹久夢二、若山牧水、与謝野晶子などの文人墨客にも愛されてきました。
そんな歴史ある温泉街に、2022年7月にオープンした雑貨とカフェの店「手紙舎 文箱(ふばこ)」。
その店舗の魅力をご紹介するとともに、運営している手紙社の代表・北島勲さんに、今後のビジョンについて伺いました。
愛らしい雑貨に囲まれた
紙好き・カフェ好き至福の空間
東京・調布市を拠点に、カフェや雑貨店などの店舗や運営や、「東京蚤の市」や「紙博」などの人気イベントを各地で主催する手紙社。
2022年7月、長野県松本市・浅間温泉ではじめたのが、「手紙舎 文箱(ふばこ)」です。すぐ隣に浅間温泉郵便局があること、ポストカードや一筆箋などの紙もの雑貨を中心に取り扱うこと、なにより手紙社が運営する店であることから、書物や書状を入れる手箱にちなんだ「文箱」と名付けられました。
文箱が入る浅間温泉バス停前の2階建の物件は、30年前は銀行として使われていた建物。開店前のリノベーションを経て、白い壁を基調とした洗練された雰囲気に。
天井が高くのびやかな空間の1階は、紙ものや手紙道具を中心にたくさんの愛らしいものを集めた雑貨売り場と、喫茶スペースから構成されています。壁一面、手紙社が厳選したポストカードが並ぶ文箱ならではのコーナーも。それから、長野県の県鳥「らいちょう」はじめ、長野みやげにぴったりなデザインの雑貨も充実しています。
元銀行という物件ならではなのが、雑貨売り場の奥に秘密の小部屋のように存在する「金庫室」。重厚な扉が、かつてこの中に価値あるものが収められていたことを物語っています。今はそこに古書や古道具が並び、買い物も楽しめます。
銀行時代は一般の人は立ち入りできなかった2階には、100種類以上ある手紙社のオリジナルペーパーなどが並ぶ紙マルシェが。あまたあるデザインから自分の好みのデザインを探す、宝探しのような時間が待っています。
カフェスペースでは、コーヒーでほっとひと息ついたり、スタッフ手づくりのスイーツを味わったりしながら、雑貨売り場で選んだポストカードやレターセットで、手紙を書く人の姿も。
私自身、昔から旅先で手紙を書くひとときを大事にしてきたのですが、文箱には、紙もの好き、手紙好きの同士が自然と集まっているようで嬉しくなります。
それからなんと店舗では、手紙社オリジナルデザインの切手も販売しています。
お気に入りのカードに、好きなデザインの切手を貼ったら、すぐ隣の郵便局へ自ら足を運びましょう。浅間温泉オリジナルの風景印をスタンプしてもらえるので、旅の記念に、自分へも手紙を出したくなります。
本店はじめ手紙社の店舗の多くは都心から少し離れた調布市内に位置しています。しっかり時間をかけて地域に根付いてきた手紙社には、ご近所から愛されているのはもちろんのこと、遠方からわざわざ足を運ぶ人も。
連日賑わいを見せているものの、店内を満たす空気はいつもたおやか。せかせかした雰囲気とはかけ離れ、ゆったり時間を過ごすことができます。
松本の中心地から少し離れた浅間温泉に所在する文箱にも、調布と同じような和やかな気配が漂っています。
オープンから数えて2年と少し。私のように、旅の目的に文箱を選ぶ人も増えていますが、長野県やその周辺に暮らす人たちが、自分らしい時間を過ごせる拠り所として愛されています。
北島さんに、今後の文箱にどんなビジョンがあるか尋ねてみました。
「今は紙マルシェとして活用している2階にギャラリー機能も持たせたいし、仲間に出店してもらう可能性もあります。調布の醸造所でつくっているビールも置きたいし、どんどんパワーアップして展示もしていきたい。なにより浅間温泉でイベントを開催したい。東京からはもちろん、いろいろな土地から、松本や浅間温泉に来てほしい。まちを盛り上げていくにはもっとお店が必要なので、周辺に仲間のお店が増えたらいいなとも思っています」
もちろん難しいこともあるでしょうが、北島さんの言葉や表情からは、長く広い視野でまちや店を考えることの楽しさや、やりがいが溢れ出ていました。
手紙社
https://tegamisha.com//